変形性膝関節症とは?
関節の骨の表面は、なめらかな軟骨で覆われています。軟骨は関節の摩擦を減らし、長年の使用やけがから関節を守っています。
変形性関節症は、この軟骨とまわりの組織が傷んで、痛み、こわばり、動きにくさが起こる慢性の病気です。関節の病気の中で最も多く、しばしば40〜50代で始まり、80歳までにはほぼすべての人に何らかの変化がみられます。
日本整形外科学会によると、膝に起こる変形性膝関節症は、男女比が1対4と女性に多く、高齢になるほど多くなります。主な症状は、膝の痛みと、膝に水がたまることです。
変形性膝関節症の原因
- 軟骨の老化:最も多い原因で、関節の軟骨が年齢とともに弾力を失い、使いすぎですり減って、関節が変形します。
- 肥満:膝にかかる負担が大きくなります。
- 体質(遺伝):なりやすさには遺伝的な素因も関わります。
- けがや病気の後:骨折、靱帯や半月板の損傷、化膿性関節炎などの感染の後遺症として起こることもあります。
- 膝を曲げる仕事:変形性膝関節症の主な危険因子として、膝を曲げることの多い職業が挙げられています。
軟骨が傷むと、関節の縁で骨が過剰に増えて、とげのような出っ張り(骨棘)ができます。軟骨の表面がざらざらになると、関節を滑らかに動かせなくなります。
変形性膝関節症の症状と進み方
- 初期:立ち上がりや歩き始めなど、動作を始めるときだけ痛み、休めば痛みがとれます。
- 中期:正座や階段の上り下りが難しくなります。
- 末期:じっとしていても痛みがとれず、変形が目立ち、膝がまっすぐ伸びなくなって歩くのが難しくなります。
朝起きたときや、しばらく動かずにいた後に膝がこわばることがありますが、通常は30分以内に、とくに膝を動かすと治まります。軟骨の表面がでこぼこになると、膝を動かしたときにギシギシといった音がすることもあります。
膝のまわりの靱帯が伸びて関節が不安定になったり、膝を動かす筋肉が弱くなったりすることもあります。O脚の変形がみられることも多くあります。
変形性膝関節症の診断
日本整形外科学会によると、問診と診察で、膝の内側を押したときの痛み、関節の動く範囲、腫れやO脚変形の有無などを調べ、X線検査で診断します。必要に応じてMRI検査なども行います。
- X線検査:骨の出っ張りや、関節のすき間が狭くなっていることがわかります。ただし、最初に変化が起こる軟骨そのものは写らないため、早期の発見にはあまり役立ちません。
- MRI検査:軟骨の早い段階の変化を見つけられますが、診断に必要になることはまれです。
- 関節液の検査:膝が腫れている場合に、関節に針を刺して関節液を調べ、感染や痛風などほかの病気と区別することがあります。
血液検査で変形性関節症を診断することはできませんが、ほかの病気を除くために役立つことがあります。
治療の中心:運動療法
変形性膝関節症の治療の主な目標は、痛みを和らげ、関節の柔軟性を保ち、膝と体全体の働きをできるだけよい状態に保つことです。これらは主に運動とリハビリテーションによって達成されます。
- 太ももの前の筋肉を鍛える:日本整形外科学会は、大腿四頭筋を鍛えることを予防と治療の柱に挙げています。
- 関節の動く範囲を保つ:関節可動域を改善する訓練を行います。ストレッチは毎日行うとよいとされています。
- 衝撃の少ない有酸素運動:ウォーキング、水泳、自転車エルゴメーターなどが適しています。
- 温水での運動:温かい水の中でやさしく関節を動かすと、こわばりや筋肉のけいれんが和らぎます。
運動は、痛む関節を数分間休ませること(日中の4〜6時間ごと)とバランスをとる必要がありますが、関節を動かさないでいると、痛みが軽くなるよりむしろ悪くなる可能性が高いとされています。自分に合った運動の内容は、整形外科や理学療法士と相談しましょう。

日常生活の工夫
日本整形外科学会は、日常生活での注意点として次のようなことを挙げています。
- 正座を避ける
- 肥満があれば減量する
- 膝を冷房などで冷やさず、温めて血行をよくする
- 洋式トイレを使う
このほか、柔らかすぎる椅子やマットレス、車のシートは症状を悪化させることがあるため、背もたれがまっすぐで座面が高めの椅子や、硬めのマットレスがすすめられます。トイレの便座を高くする補高便座は、立ち上がりを楽にします。足底板(中敷き)やサポートのしっかりした靴、杖なども、歩くときの痛みの軽減に役立つことがあります。
なお、横になるときに膝の下にクッションを置くと、股関節や膝の筋肉が硬くなることがあるため、やめておくべきとされています。
痛み止めと注射
薬は運動や理学療法を補うために使われ、変形性関節症の経過そのものを変えるわけではありません。
- NSAID:痛みと炎症を和らげます。膝の皮膚に塗るゲルやクリームもあります。飲み薬には重い副作用が起こりうるため、使い方は医師と相談します。
- アセトアミノフェン:NSAIDを使えない人などに役立つことがありますが、関節の痛みへの効果はNSAIDほどではありません。
- 強い鎮痛薬:オピオイドなどは避けるべきとされています。
- 関節内注射:ステロイドの注射で一時的に痛みが和らぐ人や、ヒアルロン酸の注射で痛みがある程度和らぐ人がいます。ヒアルロン酸に関節炎の進行を遅らせる効果はありません。
- サプリメント:グルコサミンやコンドロイチンの痛みへの効果ははっきりしていません。
手術による治療
運動や薬などの治療でも痛みや動きが改善しない場合は、手術が検討されます。日本整形外科学会は、次のような手術を挙げています。
- 関節鏡(内視鏡)手術
- 高位脛骨骨切り術:すねの骨を切って向きを変え、O脚などの変形を矯正して、膝にかかる負担を変えます。
- 人工膝関節置換術:傷んだ関節の表面を人工の関節に置き換えます。
人工関節への置き換えは、ほとんどの場合、動きと機能が改善し、痛みも大きく軽くなるとされています。どの手術が適しているかは、年齢、変形の程度、活動の量などによって異なるため、整形外科医とよく相談しましょう。
出典によって異なる点:運動はどのくらい効くか、ほかの治療の位置づけ
MSDマニュアル家庭版は、運動が変形性膝関節症の症状、動きやすさ、生活の質を改善できるとしたうえで、薬は運動を補うものと位置づけています。また、経皮的電気神経刺激(TENS)は変形性膝関節症には推奨されないとしています。日本整形外科学会は、痛み止めやヒアルロン酸注射に加え、運動器リハビリテーション、温める物理療法、足底板や膝装具を治療として挙げています。
コクランのシステマティックレビュー(Fransenら、2015年)は、変形性膝関節症に対する陸上での運動療法の54件の研究をまとめました。運動は治療直後の膝の痛みを0〜100の尺度で約12ポイント減らし(質の高い根拠)、体の機能も改善しました(中程度の質の根拠)。その効果は、運動の指導が終わった後も2〜6か月続き、効果の大きさは非ステロイド性抗炎症薬と同程度でした。
運動療法は、薬と同じくらいの痛みの改善が期待でき、副作用の心配も少ない治療です。続けることが大切なので、無理のない内容から始めましょう。
変形性膝関節症のポイント
- 変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減って関節が変形し、痛みや腫れが起こる病気で、女性に多くみられます。
- 軟骨の老化、肥満、体質のほか、けがや感染の後遺症として起こることもあります。
- 初めは動き始めだけ痛み、進むと正座や階段が難しくなり、末期には安静時も痛みます。
- 治療の中心は大腿四頭筋を鍛える運動や有酸素運動で、研究でも痛みの改善が示されています。
- 正座を避ける、減量する、膝を温める、洋式トイレを使うなどの生活の工夫が役立ちます。
- 痛み止めや注射で改善しない場合は、骨切り術や人工膝関節置換術などの手術が検討されます。
変形性膝関節症についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
変形性膝関節症の初期症状は?
立ち上がりや歩き始めなど、動作を始めるときだけ膝が痛み、休めば痛みがとれるのが初期の特徴です。膝に水がたまって腫れることもあります。
変形性膝関節症の原因は何ですか?
最も多いのは関節軟骨の老化で、肥満や体質も関わります。骨折、靱帯や半月板の損傷、感染の後遺症として起こることもあります。
膝が痛いときは安静にした方がよいですか?
痛む関節を短時間休ませることは大切ですが、関節を動かさないでいると痛みがむしろ悪くなる可能性が高いとされています。無理のない範囲で運動を続けることが治療の中心です。
どんな運動がよいですか?
太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える運動、関節の動く範囲を保つ運動、ウォーキングや水泳などの衝撃の少ない有酸素運動が適しています。内容は整形外科や理学療法士と相談しましょう。
ヒアルロン酸注射は効きますか?
一部の人では痛みがある程度和らぐことがありますが、関節炎の進行を遅らせる効果はないとされています。
手術が必要になるのはどんなときですか?
運動、薬、注射などの治療でも痛みや動きが改善しない場合に、関節鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術などが検討されます。
出典
- 日本整形外科学会 · 症状・病気をしらべる「変形性膝関節症」
- MSDマニュアル家庭版 · 変形性関節症
- Fransen M, et al. Exercise for osteoarthritis of the knee. Cochrane Database Syst Rev. 2015
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

