前十字靭帯(ACL)の役割
膝は、いくつかの靱帯によって正しい位置に保たれています。膝の両側にある側副靱帯は、膝が左右に動きすぎないように防いでいます。
膝関節の中にある2本の十字靱帯は、膝が前後に動きすぎないように防いでいます。前十字靭帯(ACL)が前、後十字靭帯(PCL)が後ろにあり、X字形に交差しています。太ももの骨とすねの骨の間には、クッションの役割をする半月板があります。前十字靭帯は、内側側副靱帯とともに、膝の中でよく傷つく構造です。
前十字靭帯はどうやって傷つく?
- 横からの衝撃:同じ側の足にしっかり体重をかけて立っているときに、膝に横から衝撃が加わると、内側側副靱帯と前十字靭帯の片方または両方が断裂することがあります。膝をひねっていると、さらに起こりやすくなります。
- 内側から押される:脚が内側から押されて膝に外向きの力がかかると、外側側副靱帯と前十字靭帯が傷つくことがあります。
- 膝が無理に伸ばされる:前十字靭帯と後十字靭帯が傷つきます。
膝のけがの多くは、足が地面についた状態で膝を曲げたりひねったりすることで起こります。
前十字靭帯損傷の症状
- けがのときに、膝からバチッとはじけるような音が聞こえる、または感じる(多くは靱帯、特に前十字靭帯の断裂のサイン)
- 膝の痛み、腫れ、こわばり、ときにあざ
- かくっと膝くずれしそうな不安定さ
- 膝のまわりの筋肉のけいれん
症状の出方と重さは、損傷の程度によって異なります。重い場合は、補助なしで歩けないこともあります。
重症度による違い
- 軽度:最初の数時間で腫れますが、24時間以上は続きません。痛みは通常、軽〜中等度です。
- 中等度:痛みは中等度から重度で、特に膝を動かしたり曲げたりすると強くなります。
- 重度:痛みは中等度から重度で、補助なしで歩けない人もいます。
膝の捻挫の衝撃で、骨折や膝の腱のけがが同時に起こることもあります。半月板も傷ついていると、膝が曲がらなくなる(ロッキング)ことがあります。
前十字靭帯損傷の診断
医師は、典型的な症状があり、捻挫が起きそうなけがをしている場合に膝の捻挫を疑います。特定の方法で脚を動かして靱帯の断裂がないかを確かめる負荷試験を含めた丁寧な診察で、通常は膝の損傷を特定できます。
ただし、最初の診察のときは痛みが強かったり、腫れや筋肉のけいれんがあったりして試験ができないことが多く、数日後に症状が和らいでから行います。
X線検査とMRI検査
- X線検査:痛みや腫れが強い場合、負荷試験の前に骨折がないかを調べます。膝の特定の部分が強く痛む、膝を曲げられない、痛くて体重をかけられない、55歳以上といった場合は、骨折の可能性が高まります。
- MRI検査:最初に行うことは通常ありません。重い損傷が疑われる場合や、PRICEを数週間続けても症状が治まらない場合に行うことがあります。
初期の治療:PRICEと固定
膝に大量の液体がたまっている場合は、液体を抜いて痛みと筋肉のけいれんを和らげることがあります。
- PRICE:軽〜中等度のけがの多くは、保護・安静・冷却・圧迫・挙上で治療できます。
- 固定:弾性包帯や、膝が曲がらないようにする副子・膝関節固定具を使うことがあります。固定具は主に骨折や大きな靱帯の断裂に使います。重い場合は6週間以上装着します。
- 松葉杖:必要に応じて使います。
リハビリと手術
関節の動く範囲を保つための理学療法は、早い時期から始めます。
靱帯や半月板の重いけがには、整形外科医が手術で修復しなければならないものがあります。手術は通常、小さな切開部から細い管状の器具を入れる関節鏡手術で行います。手術をするかどうかは、損傷の程度や活動の内容などを考えて、医師と相談して決めます。
軽度から中等度のけがでは、通常、膝を強くする運動が勧められます。重いけがで手術を受けた場合は、手術が終わってから筋力をつける運動を始めます。

出典によって異なる点:手術か、リハビリ中心か
MSDマニュアル家庭版は、重い靱帯の損傷には手術による修復が必要なものがあるとしていますが、手術と手術をしない治療の結果の比較には触れていません。
コクランのシステマティックレビュー(Monkら、2016年)は、急性の前十字靭帯損傷のある若く活動的な成人141人を対象とした1件の試験を検討しました。前十字靭帯の再建手術とリハビリを行ったグループと、体系的なリハビリだけを行い、必要なら後から再建手術を受けられるグループとで、2年後と5年後の膝の症状の評価に差はみられませんでした。ただし、根拠の質は低く、リハビリのグループでは膝の不安定さが問題になることがあったとしています。
つまり、すべての人にすぐの手術が必要とは限らず、リハビリを中心に始めて、膝の不安定さが続く場合に手術を検討するという選択肢もあります。
前十字靭帯損傷のポイント
- 前十字靭帯は、膝が前後に動きすぎないように支える靱帯です。
- 膝をひねったり、横から衝撃を受けたり、無理に伸ばされたりして傷つきます。
- バチッという音、腫れ、膝くずれしそうな不安定さが典型的な症状です。
- 負荷試験を含む診察で診断し、必要に応じてX線やMRIで調べます。
- 初期はPRICEと固定で治療し、早い時期からリハビリを始めます。
- 研究では、手術とリハビリ中心の治療で長期の結果に差がなかったと報告されています。
前十字靭帯損傷についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
前十字靭帯はどんな働きをしていますか?
膝関節の中にあり、後十字靭帯とX字形に交差して、膝が前後に動きすぎないように防いでいます。
けがをしたときのバチッという音は何ですか?
多くの場合、靱帯、特に前十字靭帯の断裂を示すサインです。
どんな検査をしますか?
負荷試験を含めた診察が中心です。骨折が疑われる場合はX線検査、重い損傷が疑われる場合などにMRI検査を行います。
すぐに手術が必要ですか?
重い損傷では手術で修復することがあります。研究では、リハビリ中心で始めて必要なら後から手術する方法でも、長期の結果に差がなかったと報告されています。
リハビリはいつから始めますか?
関節の動く範囲を保つための理学療法は、早い時期から始めます。
膝くずれが続く場合はどうすればよいですか?
膝の不安定さが続く場合は、手術を含めた治療について整形外科医と相談しましょう。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 膝のねんざおよび関連する損傷
- Monk AP, et al. Surgical versus conservative interventions for treating anterior cruciate ligament injuries. Cochrane Database Syst Rev. 2016
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

