外反母趾とは?
外反母趾(がいはんぼし)は、足の親指(母趾)の先が人差し指(第2趾)の方向へ曲がり、親指のつけ根の関節が足の内側へ大きく張り出してくる変形です。日本整形外科学会は、親指が「くの字」に曲がり、つけ根の内側の突き出した部分が痛むのが特徴的な症状だと説明しています。
この張り出した部分は「バニオン(腱膜瘤)」とも呼ばれます。関節の上に液体の入った袋(滑液包)ができて、炎症を起こし痛むこともあります。
もともとは靴を履く歴史の長い欧米の人に多い病気でしたが、日本でも近年急速に増えているとされています。
外反母趾の原因
日本整形外科学会によると、外反母趾の一番の原因は靴です。幅が狭く、つま先の細い靴を履くと、親指のつけ根から先が締めつけられて変形していきます。ヒールの高い靴は、つけ根にかかる力を大きくし、変形をさらに強めます。
- 靴:幅が狭い、つま先が細い、ヒールが高い
- 足の形:親指が人差し指より長い、生まれつき扁平足ぎみ(10代で起こる外反母趾に多い特徴)
- 年齢に伴う変化:最も多い中年期の外反母趾では、履物に加えて、肥満や筋力の低下が関わります
- そのほか:遺伝的な素因、歩くときに足が内側へ倒れ込みすぎること(過回内)、けが
健康な足には、かかとからつま先へ向かう縦のアーチと、指のつけ根を横切る横のアーチがあります。外反母趾ではこれらのアーチが崩れて扁平足になり、親指につながる骨(中足骨)が扇のように内側へ開く一方、その先の指は靴によって外側へ押されて変形が進みます。
外反母趾の症状
最初の症状は、きつい靴や幅の狭い靴を履いたときに、親指のつけ根の関節が痛むことです。進むにつれて、次のような変化が現れます。
- 親指のつけ根の出っぱりがだんだん大きくなる
- 出っぱった部分が靴に当たって痛む、赤く腫れて熱をもつ(滑液包炎)
- 関節全体が腫れて痛む
- 親指の関節が動きにくくなる
- ひどくなると、靴を履いていなくても痛む
関節の軟骨がすり減る変形性関節症が加わって、骨のとげ(骨棘)ができ、足の動く範囲が狭くなることもあります。
受診の目安
日本整形外科学会は、痛みの程度を、出っぱりを指で押すと痛む、靴を履いたときに痛む、靴を脱いでも痛む、という段階に分けて考えています。靴を脱いでもいつも痛むようになると、手術が必要になるとしています。
- 靴を脱いでも親指のつけ根が痛む
- 痛みのために、靴を履いて歩くのがつらい
- 靴を替えたりパッドを使ったりしても痛みが続く
- 親指のつけ根が急に赤く腫れ、熱をもって強く痛む
最後のような急な腫れと痛みは、痛風の発作や関節の感染が原因のこともあるため、早めに受診してください。
外反母趾の診断
変形は見た目で明らかなことが多く、診断は症状と診察で比較的簡単につきます。診察では、出っぱりの大きさ、痛む場所、関節の動きを確かめます。
- X線検査:診断そのものには必須ではありませんが、関節がどの程度傷んでいるか、変形がどのくらい進んでいるかを確かめるために行われます。
- 関節液の検査:関節が赤く腫れて痛む場合は、針で関節液を少し採り、感染による関節炎や痛風でないかを調べることがあります。
- そのほかの検査:いくつもの関節が腫れて痛む場合は、全身の関節に炎症を起こす病気がないかを調べます。

外反母趾の治し方①:靴の選び方とパッド・装具
外反母趾による軽い痛みは、つま先部分の幅が広い靴に替えるだけで大きく楽になることがあります。日本整形外科学会は、親指のつけ根はしっかりフィットし、その先はゆったりした履物を選ぶようすすめています。
- 靴:つま先にゆとりがあり、幅が広いもの。ヒールの高い靴は避けます。
- パッド:出っぱった部分を靴の圧迫から守る外反母趾用のパッドを使います。
- 足指の間の装具(スペーサー):親指と人差し指のあいだにはさみ、指の並びを整えます。
- インソール(足底装具):靴の中に入れて、痛む関節にかかる圧力を分散させます。
痛みや腫れが強いときは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を飲んだり、関節にステロイドを注射したりすることがあります。滑液包に液体がたまって腫れている場合は、針で抜くこともあります。
外反母趾の治し方②:足指の体操
日本整形外科学会は、予防と治療の方法として、次のような体操を毎日続けることを紹介しています。
- グー・チョキ・パー体操:足の指をすべて握る「グー」、親指と他の指を分ける「チョキ」、すべての指を大きく開く「パー」をくり返し、足の指を開く力をつけます。
- 輪ゴム体操:両足の親指に輪ゴムをかけ、かかとをつけたまま足先を外側へ開きます。
ただし、変形が進むと、指についている筋肉そのものが変形を強める方向に働くようになり、体操や装具だけでは元に戻りにくくなります。体操は痛みのない範囲で行い、痛みが強まる場合は中止して医師に相談してください。

外反母趾の手術
靴の工夫やパッド、装具で痛みがよくならない場合や、幅の広い靴や装具を使い続けるのが難しい場合には、手術が検討されます。日本整形外科学会は、痛みが強く、靴を履いて歩くのがつらくなったときに手術を行うとしています。
手術の方法はいくつもありますが、最も一般的なのは、親指につながる骨(中足骨)を切って向きを直す「骨切り術」で、変形の程度に合わせて方法を選びます。同学会の説明では、手術は腰椎麻酔か局所麻酔で1時間以内に終わり、翌日から歩くことができますが、これまでの靴が履けるようになるまでには2か月ほどかかります。
関節のまわりの硬くなった組織を切り離して骨の並びを整える手術が必要になることもあります。
出典によって異なる点:手術以外の治療はどこまで効くか
日本整形外科学会は、足に合った履物を選ぶこと、足指を開く体操、輪ゴム体操、指の間にはさむ装具を、予防と治療の方法として紹介しています。MSDマニュアル家庭版も、つま先の広い靴、パッド、スペーサー、装具が痛みの軽減に役立つことが多いとしています。
一方、外反母趾の治療を比べた臨床試験をまとめたコクランのシステマティックレビュー(Ferrariら、2004年)では、試験の質は全体に低く、規模も小さいものでした。手術以外の治療(装具など)と治療なしを比べた3件の試験(332人)では、結果に差があるという根拠は見つかりませんでした。質のよい1件の試験(140人)では、骨切り術(シェブロン骨切り術)を受けた人の方が、装具を使った人や治療を受けなかった人よりも、すべての評価項目で改善していました。
靴や装具、体操は痛みを和らげる方法として広くすすめられていますが、変形そのものを治す効果は研究では確かめられていない、という違いがあります。
外反母趾のポイント
- 外反母趾は、足の親指が人差し指のほうへ曲がり、つけ根の内側が出っぱって痛む変形です。
- 一番の原因は幅が狭くつま先の細い靴で、ヒールの高い靴は変形を強めます。肥満や筋力の低下、足の形も関わります。
- 最初はきつい靴を履いたときに痛み、進むと靴を脱いでも痛むようになります。
- 親指のつけ根はフィットし、つま先にゆとりのある靴を選び、パッドや装具で圧迫を減らします。
- 足指を開く体操が紹介されていますが、変形が進むと体操や装具だけでは元に戻りにくくなります。
- 靴を脱いでも痛む、歩くのがつらい場合は、骨切り術などの手術が検討されます。
外反母趾についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
外反母趾の原因は何ですか?
一番の原因は、幅が狭くつま先の細い靴です。ヒールの高い靴は親指のつけ根にかかる力を大きくします。親指が長い、扁平足ぎみといった足の形や、中年期の肥満や筋力の低下も関わります。
外反母趾は自分で治せますか?
つま先にゆとりのある靴に替える、パッドや指の間の装具を使う、足指を開く体操を続けるといった方法で痛みを和らげることができます。ただし、変形が進むと体操や装具だけでは元に戻りにくく、研究でも手術以外の治療で変形が治るという根拠は示されていません。
どんな靴を選べばよいですか?
親指のつけ根はしっかりフィットし、その先はゆったりした靴がすすめられています。幅の狭い靴、つま先の細い靴、ヒールの高い靴は避けましょう。
外反母趾の体操はどうやるのですか?
足の指をすべて握る、分ける、大きく開く「グー・チョキ・パー」をくり返す体操や、両足の親指に輪ゴムをかけて足先を外側へ開く体操があります。痛みが強まる場合は中止してください。
手術はどんなときに必要ですか?
痛みが強く、靴を履いて歩くのがつらい場合や、靴を脱いでも痛む場合です。最も一般的なのは中足骨を切って向きを直す骨切り術で、これまでの靴が履けるまでに2か月ほどかかるとされています。
急に赤く腫れて痛むのはなぜですか?
出っぱりの上にできた滑液包の炎症のほか、痛風の発作や関節の感染のこともあります。急に赤く腫れて熱をもつ場合は、早めに受診してください。
出典
- 日本整形外科学会 · 症状・病気をしらべる「外反母趾」
- MSDマニュアル家庭版 · バニオン(腱膜瘤)
- Ferrari J, Higgins JPT, Prior TD. Interventions for treating hallux valgus (abductovalgus) and bunions. Cochrane Database Syst Rev. 2004
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

