アキレス腱炎(アキレス腱障害)とは?
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉とかかとをつなぐ丈夫な帯状の組織です。アキレス腱炎(アキレス腱障害)は、このアキレス腱に炎症が起きた状態です。
ランナーにとても多くみられます。走るとき、ふくらはぎの筋肉は、足の裏全体が地面についた状態からつま先立ちへ引き上げる動きに使われ、アキレス腱にはくり返し負荷がかかります。
アキレス腱炎の原因
- 走ることによるくり返しの負荷:運動後に十分な回復期間をとらないと、炎症が起こることがあります。
- 一部の抗菌薬:フルオロキノロン系という種類の抗菌薬は、特に60歳以上の人で、アキレス腱障害や腱断裂のリスクを高めます。
抗菌薬を飲んでいてかかとの後ろに痛みが出た場合は、処方した医師に相談しましょう。
アキレス腱炎の症状
最初の症状は、ふくらはぎの下のほうとかかとの後ろの痛みです。
痛みは運動を始めたときに強く、運動を続けていると軽くなることがよくあります。活動にともなって悪化するのも特徴です。
運動を続けるうちに痛みが和らぐため、そのまま走り続けてしまいがちですが、運動後の回復が不十分だと炎症がくり返されます。
アキレス腱炎の診断
アキレス腱炎は、通常、症状と診察の結果にもとづいて診断されます。
必要に応じて、超音波検査やMRI検査などの画像検査が行われることもあります。
アキレス腱炎の治療
- 冷やす:氷で冷やして、痛みと炎症を和らげます。
- 痛み止め:非ステロイド性抗炎症薬を使います。
- 休む:痛みが続く間は、走ったり自転車をこいだりするのを控えることが大切です。
- 靴と中敷き:靴底が柔軟なランニングシューズを選んだり、かかとを高くする中敷きを入れたりして、腱にかかる張力を減らし、かかとを安定させます。
アキレス腱とふくらはぎのストレッチ
痛みがなくなったら、ストレッチと筋力強化運動をすぐに始めることができます。たとえば、次のようなストレッチがあります。
- ふくらはぎ(腓腹筋)のストレッチ:壁に両手をついて立ち、痛くない側の脚を前に出します。後ろの脚は膝を伸ばし、かかとを床につけたまま、前の膝を曲げて体を前に倒し、後ろの脚のふくらはぎを伸ばします。
- ふくらはぎの奥(ヒラメ筋)のストレッチ:同じ姿勢から、かかとを床につけたまま両膝をゆっくり曲げ、後ろの脚のふくらはぎの下のほうを伸ばします。
- 座って行う足首のストレッチ:椅子に座り、痛む側の膝を曲げて足の甲を床につけ、つま先を後ろに向けます。座る位置をゆっくり前にずらし、足の甲から足首にかけて伸びを感じるまで足を押し下げます。
いずれも30秒保ち、4回を1セットとして1日3回行うのが一例です。
かかと上げなどの筋力強化運動
- かかと上げ:台の上に両足で立ち、かかとを台の端から出して、支えにつかまります。つま先立ちになってから、台の端より低い位置までかかとをゆっくり下ろし、元に戻します。
- つま先歩き:かかとを上げてつま先立ちになり、膝を伸ばしたまま歩きます。1分を1セットとして、1日1回3セット行います。
- かかと歩き:つま先を上げてかかとで立ち、膝を伸ばしたまま歩きます。同じく1分を1セットとして、1日1回3セット行います。
疲れを感じたら中止します。抵抗をかける運動や中敷きなどの装具は、将来のけがを防ぐのに役立つことがあります。

走るのを再開するときとアキレス腱断裂
走るのを再開するときは少しずつ行い、走る前に腱のストレッチをし、再開してしばらくは走ったあとに冷やします。
ランニングやテニスで急に方向を変えたときなどに、アキレス腱が完全に切れることがあります(アキレス腱断裂)。足首を後ろから蹴られたように感じたり、ブチッという音が聞こえたりし、ふくらはぎが激しく痛んで歩きにくくなります。腫れやあざが出ることもあり、副子で固定したり、手術をしたりする必要があることもあります。
出典によって異なる点:どんな筋力運動がよいか
MSDマニュアル家庭版は、痛みがなくなったらストレッチと筋力強化運動を始めるとし、かかと上げやつま先歩きなどの運動を紹介していますが、運動の種類ごとの効果は比べていません。
アキレス腱とひざの腱の障害に対する運動プログラムを比べたシステマティックレビュー(Malliarasら、2013年)は、かかとをゆっくり下ろす動き(伸ばしながら力を出す運動)だけを行う方法が広く使われているものの、ほかの運動プログラムより優れているという根拠は、アキレス腱では限られているとしました。かかとを上げる動きと下ろす動きを組み合わせた運動も同程度の根拠があり、こうした運動を代わりに、または一緒に行うことを検討すべきだとしています。ただし、質の高い研究はまだ少ないとしています。
つまり、かかと上げは「下ろす動き」だけにこだわらず、上げる動きも含めて無理なく続けることが大切です。
アキレス腱炎のポイント
- アキレス腱炎は、ふくらはぎとかかとをつなぐアキレス腱の炎症で、ランナーに多くみられます。
- 運動の始めに強く、続けると軽くなる、かかとの後ろの痛みが特徴です。
- 冷やすことと痛み止めで痛みを和らげ、痛みがある間は走るのを控えます。
- 痛みが引いたら、ふくらはぎのストレッチとかかと上げなどの筋力強化運動を行います。
- 走るのは少しずつ再開し、靴や中敷きで腱の負担を減らします。
- ブチッという音や激しい痛みがあれば、アキレス腱断裂を疑って受診します。
アキレス腱炎についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
アキレス腱炎の原因は何ですか?
走ることによるくり返しの負荷と、運動後の回復不足が主な原因です。フルオロキノロン系の抗菌薬も、特に60歳以上でリスクを高めます。
走り始めだけ痛むのはなぜですか?
アキレス腱炎の痛みは、運動の開始時に強く、続けていると軽くなることがよくあります。
痛いときに走ってもよいですか?
痛みが続く間は、走ったり自転車をこいだりするのを控えることが大切です。
どんなストレッチがよいですか?
壁に手をついて行うふくらはぎ(腓腹筋とヒラメ筋)のストレッチがあります。痛みがなくなってから始めます。
かかと上げ運動は効果がありますか?
筋力強化運動は治療の一部です。研究では、かかとを下ろす動きだけでなく、上げる動きと組み合わせた運動も同程度に役立つとされています。
アキレス腱が切れたときのサインは?
足首を後ろから蹴られたような感じやブチッという音がして、ふくらはぎが激しく痛み、歩きにくくなります。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · アキレス腱障害
- Malliaras P, et al. Achilles and patellar tendinopathy loading programmes: a systematic review. Sports Med. 2013
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

