強直性脊椎炎とは?
強直性脊椎炎は脊椎関節炎の一つで、背骨の炎症や、大きな関節、手足の指の炎症が起こり、こわばりと痛みが出る病気です。
男性は女性の3倍多く、20〜40歳で発症することが最も多い病気です。軽〜中等度の炎症が再び強くなる時期と、ほとんど症状のない時期をくり返すことがあります。
強直性脊椎炎の原因と遺伝
原因はわかっていませんが、家族の中で起こりやすく、遺伝子が関わっていると考えられています。親やきょうだいに強直性脊椎炎がある人では、そうでない人の10〜20倍多くみられます。
HLA-B27という遺伝子は多くの患者にみられますが、この遺伝子があるからといって、強直性脊椎炎になるわけではありません。一卵性双生児でも二人ともかかるのは50%にすぎず、遺伝以外の環境の要因も関わっていると考えられています。
強直性脊椎炎の腰痛の特徴
- 痛みは夜や朝に強くなることが多い
- 体を動かすと楽になる朝のこわばりがとてもよくみられる
- 腰痛と筋肉のけいれんは、前かがみになると和らぐことが多い
- 炎症による腰痛は、通常40歳以下でゆっくり始まる
前かがみで楽になるため、治療を受けないと前かがみの姿勢が続き、それが悪化して固まってしまうことがあります。背骨がまっすぐなまま硬くなってしまう人もいます。
腰以外に出る症状
- 大きな関節:股関節、膝、肩の痛みから始まることもあります。
- 胸:肋骨と背骨をつなぐ関節に炎症が起こると、深呼吸で胸が広がりにくくなります。
- 目:約25%の人に全身の症状がみられ、痛みを伴う目の炎症(ぶどう膜炎)をくり返すことがよくあります。速やかに治療すれば、通常、視力は損なわれません。
- 腱と指:アキレス腱炎、足底腱膜症、手足の指がソーセージのように腫れる指炎が起こることもあります。
- そのほか:食欲低下、体重減少、強い疲れ、貧血、まれに心臓弁や肺の問題、神経の圧迫によるしびれや力の低下
強直性脊椎炎の診断
症状のパターン、家族歴、背骨・骨盤・関節のX線検査をもとに診断します。X線では、背骨と骨盤の間の関節(仙腸関節)の炎症や、背骨のこわばりの原因になる骨の橋渡しがみられることが通常ですが、X線で見えなくてもMRIで見つかることがあります。
- 血液検査:炎症の程度(赤沈、C反応性タンパク)を調べ、ときにHLA-B27の有無を確認します。
- 診断基準:たとえば、3カ月以上の腰痛があり、45歳未満で始まった人には、画像の基準と診察・血液検査の基準を組み合わせた基準が使われることがあります。
薬による治療
治療では、背中と関節の痛みを和らげる、関節の動く範囲を保つ、ほかの臓器の損傷を防ぐ、背骨の変形を防ぐ・直すことを重視します。
- 非ステロイド性抗炎症薬:痛みと炎症を減らし、姿勢を保つための大切な運動ができるようにします。
- 生物学的製剤など:腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬、IL-17阻害薬は、背中の痛みと炎症を効果的に減らします。これらで効果が不十分な場合は、JAK阻害薬が使われることもあります。
- そのほか:目の炎症には点眼薬、背骨以外の関節にはステロイドの注射が役立つことがあります。
姿勢を保つ毎日の運動と生活の注意
長期的な治療の目標は、よい姿勢を保ち、背筋を強くすることです。毎日の運動で、腰が曲がったり前かがみになったりする傾向に対抗する筋肉を鍛えます。
- うつ伏せで肘をつく姿勢:本を読みながらなど、毎日ある程度の時間この姿勢をとると、背中が伸びて柔らかさを保つのに役立ちます。
- ストレッチと深呼吸:姿勢に影響が出ないよう保つための大切な運動です。
- 禁煙:胸の動きが制限されて肺の働きが落ちることがあるため、肺の働きをさらに損なう喫煙は避けます。
手術と経過の見通し
激しい痛みや筋肉のけいれんには、筋肉をゆるめる薬や強い鎮痛薬を短期間だけ使うことがあります。股関節が傷ついたり、曲がったまま固まったりした場合は、人工関節に置き換える手術で痛みを減らし、機能を取り戻せることがあります。
ほとんどの人は、体にいくらかの障害が出ても、普通の生産的な生活を送ることができます。一方、進行が速く重い変形が起こる人もいます。背骨や股関節のこわばりが極めて強い人や、ぶどう膜炎、心臓や肺の病気がある人では、経過がよくない傾向があります。
出典によって異なる点:どんな運動療法がよいか
MSDマニュアル家庭版は、毎日の運動で前かがみに対抗する筋肉を鍛えることを勧めていますが、運動の方法による違いは示していません。
コクランのシステマティックレビュー(Dagfinrudら、2008年)は、11件の試験(763人)をまとめ、自宅での個別の運動プログラムや指導のもとでの運動は、何もしないより背骨の動きと身体機能を改善するとしました。また、理学療法士の指導による集団での運動は、自宅での運動より背骨の動きと全体的な評価がやや良く、温泉施設での運動療法のあとに集団の理学療法を続けた場合は、集団の理学療法だけより痛みや身体機能がさらに改善しました。
つまり、自宅での運動でも効果は期待できますが、専門家の指導のもとで、仲間と一緒に続ける運動がより役立つ可能性があります。
強直性脊椎炎のポイント
- 強直性脊椎炎は、背骨や大きな関節に炎症が起こる病気で、20〜40歳の男性に多くみられます。
- 夜や朝に強く、動くと楽になる腰痛と朝のこわばりが特徴です。
- 目の炎症(ぶどう膜炎)、指炎、アキレス腱炎などを伴うことがあります。
- X線やMRI、血液検査、診断基準をもとに診断します。
- 消炎鎮痛薬や生物学的製剤で炎症を抑え、毎日の運動で姿勢を保ちます。
- 指導のもとでの運動療法は、自宅での運動よりさらに役立つ可能性があります。
強直性脊椎炎についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
普通の腰痛とどう違いますか?
強直性脊椎炎の腰痛は、夜や朝に強く、動くと楽になる朝のこわばりを伴い、通常40歳以下でゆっくり始まります。
HLA-B27があると必ず発症しますか?
いいえ。HLA-B27は発症の可能性を高めますが、この遺伝子があっても強直性脊椎炎にならない人も多くいます。
遺伝しますか?
家族の中で起こりやすく、親やきょうだいに強直性脊椎炎がある人では10〜20倍多くみられます。
腰以外にどんな症状がありますか?
股関節・膝・肩の痛み、目の炎症(ぶどう膜炎)、指の腫れ、アキレス腱炎、深呼吸しにくさなどがみられることがあります。
どんな薬を使いますか?
非ステロイド性抗炎症薬で痛みと炎症を減らし、必要に応じてTNF阻害薬やIL-17阻害薬などの生物学的製剤を使います。
運動はしたほうがよいですか?
はい。毎日の運動で前かがみに対抗する筋肉を鍛えることが長期的な目標です。研究では、指導のもとでの運動がより役立つ可能性が示されています。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 強直性脊椎炎
- Dagfinrud H, et al. Physiotherapy interventions for ankylosing spondylitis. Cochrane Database Syst Rev. 2008
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
