突発性難聴とは?
突発性難聴は、中等度から高度の難聴が、約72時間のうちに急に起こるものです。朝、目が覚めたときに気づくこともあります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、突然起こった原因不明の難聴を「突発性難聴」と定義しています。
薬が原因の場合を除き、ふつうは片方の耳だけに起こります。毎年およそ5,000〜1万人に1人が突発性難聴を発症するとされています。
内耳やそこから脳へ音を伝える神経の障害によって起こる「感音難聴」の一つで、少しずつ進む加齢による難聴とは異なり、急に聞こえが悪くなるのが特徴です。
突発性難聴の症状
突然の聞こえの低下に加えて、次のような症状を伴うことがあります。
- 耳鳴り
- 耳がふさがった感じ(耳閉感)
- めまい、ぐるぐる回るような感覚(回転性めまい)
- 片側の耳で電話の声が聞き取りにくい、音の方向がわかりにくい
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、難聴やめまい以外に、ろれつが回らない、顔の感覚が鈍い、飲み込みにくいなどの脳神経の症状を伴う場合は、脳梗塞などほかの病気を考える必要があるとしています。
片耳の難聴は、もう一方の耳で聞こえているために気づきにくいことがあります。「なんとなく聞こえにくい」「耳がつまった感じが続く」という場合も、早めに確かめてもらいましょう。

突発性難聴の原因
ほとんどの人では、突発性難聴の原因はわかりません。原因として考えられているのは次のようなものです。
- ウイルス感染症(とくに単純ヘルペスウイルス)
- 免疫のしくみが内耳やその神経を攻撃する自己免疫反応
- 内耳や神経に血液を送る細い血管の詰まり(循環障害)
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、原因はいまだ不明で、循環障害、ウイルス感染、自己免疫などが入り混じっていると推定されるとしています。
原因がはっきりしている急な難聴と、似た病気
急な難聴には、原因がはっきりしているものもあります。
- 頭のけが:側頭骨の骨折や強い脳しんとうで内耳が傷つくことがあります。
- 激しい気圧の変化:ダイビングや、まれに重い物を持ち上げるときのいきみで、中耳と内耳のあいだに穴(外リンパ瘻)があくことがあります。
- 耳に害のある薬:一部の抗菌薬など、耳を傷める副作用のある薬で、ときに1日以内に難聴が起こります。
- 感染症:細菌性髄膜炎、ライム病、おたふくかぜ(ムンプス)、単純ヘルペスウイルスによる脳の感染症など。
また、まれに、聴神経の腫瘍(前庭神経鞘腫)、多発性硬化症、メニエール病、小脳へ向かう動脈が詰まる小さな脳卒中などで、急な難聴が最初の症状として現れることがあります。そのため、診断ではこうした病気を一つひとつ除外していくことが大切です。
すぐに受診すべき理由
突然の難聴は、それ自体が危険なサインです。原因によってはすぐに治療しなければならないものがあるため、突発性難聴が疑われる人は、すぐに医師の診察を受ける必要があります。
- 突然、片方または両方の耳の聞こえが悪くなった
- 朝起きたら耳がつまった感じがして、聞こえにくい
- 難聴とともに、ろれつが回らない、顔の感覚が鈍い、飲み込みにくい、手足に力が入らない(すぐに救急へ)
- 頭を強く打った後や、ダイビングの後に聞こえが悪くなった
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、発症早期に治療を始めた方が聴力の回復がよいと報告されていることから、早く耳鼻咽喉科を受診して検査を受け、治療につなげることが大切だとしています。
突発性難聴の検査と診断
医師は、難聴が片耳か両耳か、頭のけがやダイビング、感染症などの出来事がなかったか、耳鳴りや耳だれ、めまいなどの症状がないかを尋ね、耳と聴力、神経の状態を中心に診察します。
- 聴力検査:聞こえの程度と、どの高さの音が聞こえにくいかを調べます。
- MRI検査:急性の感染症や薬が原因と明らかな場合を除き、造影剤を使ったMRI検査やCT検査を行うのが一般的です。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、脳梗塞や聴神経腫瘍との区別のために、脳や内耳のMRI検査を行うことがすすめられているとしています。
- そのほかの検査:疑われる原因に応じて、鼓膜の動きを調べる検査、平衡感覚の検査、血液検査などを行います。
急性低音障害型感音難聴、外リンパ瘻、ムンプス難聴、音響外傷、メニエール病、聴神経腫瘍などとの区別をつけ、ほかの病気を除外したうえで診断します。

突発性難聴の治療
原因がわかっている場合は、その原因に対する治療を行います。原因がわからない場合は、ほとんどの医師がステロイド(副腎皮質ステロイド)の投与を試みます。
- ステロイド:飲み薬や点滴で使うのが一般的です。鼓膜の奥にステロイドを注入する方法(鼓室内投与)が行われることもあります。
- 抗ウイルス薬:単純ヘルペスに効く薬が一緒に処方されることもありますが、効果を示す有力な根拠はありません。
- そのほか:日本では、血管を広げる薬、代謝を改善する薬、ビタミン剤、高気圧酸素療法、星状神経節ブロックなども行われています。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、いずれの治療についても有効性は必ずしも確立していないとしています。治療を受けるかどうかや方法は、聴力の程度や体の状態も含めて、医師とよく相談して決めましょう。
回復の見通しと、日常生活で気をつけること
原因がわからない突発性難聴では、約半数の人が正常な聴力を取り戻し、残りの人でも聴力の一部が回復します。改善がみられる場合は、通常10〜14日以内に改善します。耳に害のある薬による難聴の回復は、薬の種類と量によって大きく異なります。
- 治療を始めたら、決められた期間は自己判断でやめずに続ける
- 治療の途中や後に、聴力検査で回復の程度を確かめてもらう
- 聞こえにくさ、耳鳴り、めまいが強まったり、新しい症状が出たりしたら、早めに主治医に伝える
頭のけがや気圧の変化、耳に害のある薬など原因がはっきりしている場合は、その原因への対処が回復の見通しを左右します。耳に害のある薬を使っている人は、自己判断でやめずに、聞こえの変化を処方した医師に伝えてください。
出典によって異なる点:ステロイドはどのくらい効くのか
MSDマニュアル家庭版は、原因がわからない突発性難聴ではほとんどの医師がステロイドの投与を試みると説明しています。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、ステロイドなどの内服や点滴が行われるとしつつ、いずれの治療も有効性は必ずしも確立していないとしています。
コクランのシステマティックレビュー(Weiら、2013年)は、ステロイドを偽薬や無治療と比べたランダム化比較試験を探しましたが、基準を満たしたのは3件(267人)だけで、いずれも偏りのリスクが高いものでした。1件では飲み薬のステロイドで61%、比較した群で32%の人の聴力が改善しましたが、ほかの2件ではステロイドの効果はみられませんでした。
レビューは、研究の結果が食い違い、どの研究も参加者が少ないため、ステロイドの価値はまだはっきりしないと結論づけています。広く行われている治療であっても、効果の大きさについては確かな結論が出ていない、という点が異なります。
突発性難聴のポイント
- 突発性難聴は、約72時間のうちに急に起こる難聴で、多くは片耳に起こり、朝起きて気づくこともあります。
- 耳鳴り、耳のつまった感じ、めまいを伴うことがあり、ほとんどの人では原因がわかりません。
- 頭のけが、気圧の変化、薬、感染症、聴神経の腫瘍や脳卒中などで急な難聴が起こることもあるため、検査で区別します。
- 突然の難聴はそれ自体が受診のサインで、早く治療を始めた方が回復がよいと報告されています。
- 原因がわからない場合はステロイドなどで治療しますが、その効果を示す研究の結果は食い違っています。
- 約半数の人は聴力が元に戻り、改善する場合は多くが10〜14日以内に改善します。
突発性難聴についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
突発性難聴の原因は何ですか?
ほとんどの人では原因がわかりません。ウイルス感染症、自己免疫反応、内耳の血管の詰まりなどが考えられていて、これらが入り混じっていると推定されています。
突発性難聴はどのくらいで治りますか?
原因がわからない突発性難聴では、約半数の人が正常な聴力を取り戻し、残りの人も一部回復します。改善する場合は、通常10〜14日以内に改善します。
何日以内に受診すればよいですか?
突然の難聴に気づいたら、様子を見ずにすぐに耳鼻咽喉科を受診してください。発症早期に治療を始めた方が聴力の回復がよいと報告されています。
耳鳴りやめまいも一緒に起こりますか?
突発性難聴では、耳鳴り、耳のつまった感じ、めまいを伴うことがあります。ろれつが回らない、顔の感覚が鈍いなどの症状を伴う場合は、脳梗塞などのおそれがあるため、すぐに救急を受診してください。
どんな治療をしますか?
原因がわからない場合は、ステロイドの飲み薬や点滴が一般的で、鼓膜の奥への注入が行われることもあります。日本ではほかに血管を広げる薬やビタミン剤、高気圧酸素療法なども行われますが、いずれも有効性は必ずしも確立していません。
両耳に起こることはありますか?
突発性難聴はふつう片方の耳だけに起こります。耳に害のある薬が原因の場合などは、両耳に起こることがあります。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 突発性難聴
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 · 耳の病気(突発性難聴)
- Wei BPC, Stathopoulos D, O'Leary S. Steroids for idiopathic sudden sensorineural hearing loss. Cochrane Database Syst Rev. 2013
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

