心臓リハビリとは?
心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)は、心臓病の人が体力を回復して自信を取り戻し、快適な家庭生活や社会生活に戻るとともに、再発や再入院を防ぐことをめざす総合的なプログラムです。
心不全、心筋梗塞、狭心症、心臓手術のあとなどは、心臓の働きが落ちているうえ、安静にしていたことで運動能力や体の調節の働きも低下しています。退院してすぐに強い活動はできず、どこまで動いてよいかわからない不安もあります。心臓リハビリは、こうした状態に適切な運動療法で対応します。
心臓リハビリで行うこと
運動療法は、心臓リハビリを構成する要素の一つです。
- 運動療法:その人に合った安全な運動を行う
- 学習・指導:栄養面、生活面、精神心理面の教育として、生活指導、食事指導、服薬指導、禁煙指導などを行う
- 相談・カウンセリング:職場復帰や心配ごとの相談
心臓病の原因になる動脈硬化の進行を防ぐことも、目的の一つです。医師、理学療法士、看護師、薬剤師、臨床心理士、検査技師、作業療法士、健康運動指導士など多くの専門職がかかわり、一人ひとりの状態に合ったプログラムを提案して実施します。
対象となる病気
医療保険で受けられる心臓リハビリ(制度上は「心大血管疾患リハビリテーション」)の対象は、次の病気です。
- 心筋梗塞、狭心症
- 心臓手術のあと
- 大動脈解離、解離性大動脈瘤、大血管の手術のあと
- 慢性心不全
- 末梢動脈閉塞性疾患(足の血管が狭くなり、歩くと痛む病気)
- 経カテーテル大動脈弁置換術のあと
通常、開始から150日間は健康保険が使えます。医師が必要と認めた場合は、150日を超えて使えることもあります。
心臓リハビリの効果
日本心臓リハビリテーション学会によると、心筋梗塞や狭心症の人が心臓リハビリを行うと、行わない場合に比べて心血管病による死亡率が26%、入院のリスクが18%下がります。心不全の人では、すべての入院が25%、心不全による入院が39%減ることが示されています。
- 体力が上がり、息切れなどの症状が軽くなる
- 筋肉が増えて楽に動けるようになり、心臓の負担が減る
- 血管が広がりやすくなり、血圧や血液の流れがよくなる
- 動脈硬化が進みにくくなる
- インスリンの効きがよくなり、血糖値が改善する
- 自律神経が安定し、不整脈の予防になる
運動療法ができない場合
次にあてはまる人は、運動療法の対象になりません。運動によって重い不整脈や心不全の悪化が起こるおそれがあるため、治療で病状が安定してから行います。
- 不安定狭心症、高度の大動脈弁狭窄症、左室流出路狭窄がある
- 急性心筋梗塞、急性心筋炎、急性大動脈解離などを起こした直後
- 心不全の病状が不安定、または足のむくみが強い
- 高血圧、糖尿病、不整脈などが重い、または不安定
- 医師に運動を止められている
自分が運動療法をしても大丈夫か、主治医に確認しましょう。
運動の種類・強さ・時間・回数
- 種類:ウォーキング、ジョギング、自転車など、全身をリズミカルに動かす有酸素運動が勧められます。重量挙げや全力疾走のような短時間に強い力を出す運動は勧められません。適切な軽い強さの筋力トレーニングは役立ちますが、医療機関で指導を受けてから行います。
- 強さ:軽く汗ばむ程度、ややきついと感じる程度、おしゃべりしても息切れしない程度です。
- 時間:1回30〜60分が望ましく、朝夕20分ずつの合計40分でもかまいません。1日の歩数は7,000〜8,000歩をめざします。
- 回数:週3〜5日が勧められます。運動した翌日に疲れが残っている日や、朝から体調が悪い日は休みます。
起きてすぐ、空腹時、食後すぐは避け、食後1〜2時間たってから行います。夏は水分補給、冬は防寒に気をつけます。
心不全の人の運動療法
病状が安定している心不全の人が運動療法を続けると、息切れなどの症状が軽くなり、心不全による再入院が減ることがわかってきました。ただし、十分な注意が必要です。
- 新しく運動を始めるときは、心臓リハビリに参加し、心電図や血圧の反応を確かめてもらいながら慣れていく
- ゆっくり歩く5分などの軽い運動を2〜3セットから始め、翌日に息切れやむくみがなければ少しずつ時間を延ばす
- 前日の疲れが強く残る、体重が前日より1〜2kg増えた、足のむくみが出たときは、心不全悪化のサインなので運動を中止して受診する
退院後の続け方と自宅での運動療法
理想は、入院中に医療スタッフの見守りのもとで始め、退院後3か月ほどは外来の心臓リハビリに通うことです。週1回でも退院後3か月間通うと、生活の質が上がり、再入院が減ると報告されています。
- 自宅での運動の基本は、歩行などの有酸素運動を30〜60分、週3回以上
- スクワットなど自分の体重を使った足の運動を、ゆっくり5〜10回、2〜3セット
- 気分がよいときだけ運動し、天候に合わせ、息切れや足のむくみに注意する
- 通院できない場合も、月1回は外来で病状と運動内容のチェックを受ける
心臓リハビリは、できる限り一生続けることが勧められています。
出典によって異なる点:死亡はどのくらい減るのか
日本心臓リハビリテーション学会は、心筋梗塞や狭心症の人では心臓リハビリによって心血管病による死亡率が26%、入院のリスクが18%下がるとしています。
コクランの系統的レビュー(Dibbenら、2021年)は、冠動脈の病気がある23,430人を対象にした85件の試験をまとめました。運動を中心とした心臓リハビリは、心筋梗塞のリスクを下げ、すべての原因による入院を大きく減らし、12か月までの生活の質を改善しました。一方、すべての原因による死亡については、減少は小さい可能性があるか、追跡期間によってはほとんど差がないとしています。心血管病による死亡は、1〜3年の追跡で約23%、3年を超える追跡で約42%減りました。
つまり、心臓リハビリが入院や心血管病による死亡を減らす点は一致していますが、すべての原因による死亡への効果は小さい可能性があります。
心臓リハビリのポイント
- 心臓リハビリは、運動療法、生活・食事・禁煙指導、相談を含む総合的なプログラムです。
- 心筋梗塞、狭心症、心臓手術後、慢性心不全などが対象です。
- 心血管病による死亡や入院を減らし、生活の質を改善します。
- 運動は、ややきつい程度の有酸素運動を1回30〜60分、週3〜5日が目安です。
- 心不全の人は、軽い運動を短時間から始め、悪化のサインに注意します。
- 退院後も外来で続け、できる限り一生継続することが勧められます。
心臓リハビリについてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
心臓病があっても運動してよいのですか?
適切な運動であれば、心臓に悪い影響を与えないばかりか、症状の軽減や再入院の予防につながります。心臓リハビリで安全を確かめながら行うことが勧められます。
心臓リハビリでは何をしますか?
運動療法に加えて、生活指導、食事指導、服薬指導、禁煙指導、職場復帰や心配ごとの相談などを行います。
どのくらいの強さで運動すればよいですか?
軽く汗ばむ程度、ややきついと感じる程度、おしゃべりしても息切れしない程度が目安です。
週に何回運動すればよいですか?
週3〜5日が勧められています。外来の心臓リハビリに週3回通えない場合でも、せめて週1回は参加することが勧められます。
心臓リハビリはいつまで続けますか?
できる限り一生続けることが勧められます。健康保険が使えるのは通常150日までのため、その後は自宅での運動療法などで続けます。
自宅ではどんな運動をすればよいですか?
歩行などの有酸素運動を30〜60分、週3回以上と、スクワットなど自分の体重を使った足の運動をゆっくり行うのが基本です。
出典
- 日本心臓リハビリテーション学会 · 心臓リハビリとはどのようなものですか?
- 日本心臓リハビリテーション学会 · 心臓リハビリテーションの効果はどのようなものでしょうか?
- 日本心臓リハビリテーション学会 · 心臓リハビリと運動療法はどう違うのでしょうか?
- 日本心臓リハビリテーション学会 · 心臓リハビリの対象となる病気は何でしょうか?
- 日本心臓リハビリテーション学会 · 心臓リハビリはいつまで継続すればよいのでしょうか?
- 日本心臓リハビリテーション学会 · よくあるご質問(心臓病の運動療法について)
- 日本心臓リハビリテーション学会 · 心臓病を持つ人が運動をしても大丈夫でしょうか?
- 日本心臓リハビリテーション学会 · 心臓病を持つ人が運動療法をしてはいけないのはどのような場合ですか?
- 日本心臓リハビリテーション学会 · どのような運動をすればよいのでしょうか?
- 日本心臓リハビリテーション学会 · 心不全と診断されている人は、運動療法をどのようにすればよいでしょうか?
- 日本心臓リハビリテーション学会 · 退院後、心臓リハビリに週3回通院する時間がない場合はどうすれば良いでしょうか?
- 日本心臓リハビリテーション学会 · 自宅での運動療法(在宅運動療法)のやり方について教えてください
- Dibben G, et al. Exercise-based cardiac rehabilitation for coronary heart disease. Cochrane Database Syst Rev. 2021
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
