産後うつ病とはどんな状態?
産後うつ病は、出産後の1年間に、極度の悲しみを感じたり、それまで楽しんでいた活動への興味を失ったりする状態が、2週間以上続くものです。
約7%の女性に起こるとされています。典型的には出産後3カ月の間に徐々に現れますが、もっと後になって現れることもあり、急に始まることもあります。治療しないと、数カ月から数年続くことがあります。
マタニティーブルーとの違い
- マタニティーブルー:出産後の気分の変動や悲しさで、多くの母親が経験します。たいてい2〜3日、長くても2週間以内に治まり、症状も比較的軽いものです。
- 産後うつ病:2週間以上続き、日常生活に支障が出ます。自分や子どもの世話をする力も妨げられます。
- 産後精神症:きわめてまれですが、産後うつ病より重く、幻覚や奇妙な行動、自殺や暴力的な考えがみられることがあります。
気分の落ち込みが2週間を過ぎても続くかどうかが、一つの目安になります。
産後うつ病になりやすい要因
- 妊娠前や妊娠中のうつ病、以前の出産での産後うつ病
- 月経周期に関連した気分の落ち込みの経験
- 家族にうつ病の人がいる
- 人間関係や経済的な問題、パートナーのいない子育てなどのストレス
- パートナーや家族からの支えが少ない
- 早産や子どもの病気など、妊娠に関連した問題
- 予定外の妊娠など、妊娠への複雑な気持ち
- 授乳の問題
出産後のホルモンの急激な低下や睡眠不足も、一因となる可能性があります。妊娠前からうつ病があった場合は、主治医や助産師に伝えておきましょう。
産後うつ病の症状
主な症状は、極度の悲しみ、抑えられずに頻繁に泣く、気分の変動、いらだちや怒りです。ほかに、次のような症状がみられることもあります。
- 極度の疲れ、眠れない・眠りすぎる
- 頭痛や体の痛み
- 不安やパニック発作、食欲の低下や過食
- 子どもへの関心の喪失、または過剰な心配
- 母親として不適格だという思いと、そう感じることへの罪悪感
- 子どもを傷つけてしまうのではという恐れ、自殺を考える
赤ちゃんと家族への影響
産後うつ病があると、母親が子どもとの絆を築きにくくなることがあります。その結果、子どもに後になって情緒面、社会面、認知面の問題が生じることがあります。
パートナーもうつ病になることがあり、どちらの親のうつ病も家族のストレスになります。また、産後うつ病になったことがある人では、約3〜4人に1人の割合で再発するとされています。こうした理由から、早く気づいて治療することが大切です。
受診の目安と診断
- 悲しい気持ちが2週間以上続く
- 日常の活動がつらく感じる
- 自分や子どもを傷つけたいという考えがある
こうした場合は、医師に相談してください。家族や友人が症状に気づいたら、母親と話して受診をすすめましょう。
産後の健診で、抑うつの有無を調べる質問票に答えることがあります。抑うつがみられる場合は、甲状腺の病気などほかの原因がないか、血液検査で確かめることもあります。
産後うつ病の治療
- 精神療法:カウンセリングなどの心理的な治療です。
- 薬:抗うつ薬を使います。米国では、産後うつ病専用の薬も承認されています。
- 産後精神症の場合:入院が必要になることがあり、可能なら子どもと一緒に過ごせる病棟が望ましいとされます。
精神療法と抗うつ薬を組み合わせた治療がすすめられています。授乳中の場合は、薬を使う前に授乳を続けられるか主治医に相談してください。多くの抗うつ薬では、授乳を続けることができます。

日常でできる予防と、周りの支え
- できるだけ休む(赤ちゃんが寝ているときに一緒に昼寝をする)
- 家事を完璧にしようとせず、赤ちゃんの世話と自分のケアを優先する
- パートナーや家族、友人に助けを求め、育児や家事を分担する
- 自分の気持ちを身近な人に話す、ほかの母親と経験を語り合う
- 毎日シャワーを浴びて着替え、散歩などでこまめに外出する
- 信頼できる人に子どもを預けて、一人やパートナーと過ごす時間をもつ
疲れや集中できないこと、母親としての不安は誰にでもあり、通常は治まっていくと知っておくことも助けになります。

出典によって異なる点:予防のための支援
MSDマニュアル家庭版は、休息や家事の分担、身近な人への相談など、母親自身が日常でできる工夫を予防として挙げています。
コクランのシステマティックレビュー(Dennisら、2013年)は、約1万7,000人の女性を含む28件の試験をまとめ、心理社会的・心理的な支援を受けた女性では、通常のケアに比べて産後うつ病になる人が少なかったと報告しました。特に、保健師や助産師による産後の個別の家庭訪問、同じ経験をもつ人による電話での支え、対人関係療法が有望とされ、専門職による支援も、同じ立場の人による支援も効果がありました。
つまり、母親一人の工夫に加えて、出産後に周りから継続的な支えを受けることが、予防につながると考えられます。
産後うつのポイント
- 産後うつ病は、出産後1年以内に極度の悲しみや興味の喪失が2週間以上続く状態です。
- 2週間以内に治まるマタニティーブルーとは区別します。
- 過去のうつ病、支えの少なさ、ストレスなどがなりやすさにつながります。
- 自分や子どもを傷つけたい考えがあれば、すぐに医師に相談してください。
- 精神療法と抗うつ薬を組み合わせた治療がすすめられ、授乳中も多くの薬が使えます。
- 休息、家事の分担、周りからの継続的な支えが予防に役立ちます。
産後うつについてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
マタニティーブルーと産後うつ病はどう違いますか?
マタニティーブルーは多くの母親が経験する軽い気分の変動で、2週間以内に治まります。産後うつ病は2週間以上続き、日常生活に支障が出ます。
産後うつ病はいつごろ起こりますか?
典型的には出産後3カ月の間に徐々に現れますが、出産後1年以内であれば、もっと後になって現れることもあります。
どんな人がなりやすいですか?
以前にうつ病や産後うつ病になったことがある人、家族にうつ病の人がいる人、支えが少ない人、ストレスが多い人などです。
授乳中でも治療できますか?
多くの抗うつ薬では授乳を続けられます。薬を使う前に、授乳を続けられるかを主治医に相談してください。
家族はどう支えればよいですか?
育児や家事を分担し、母親が休める時間をつくり、気持ちを聞きましょう。2週間以上つらそうなら、受診をすすめてください。
産後うつ病は予防できますか?
研究では、保健師や助産師の家庭訪問、同じ経験をもつ人の電話での支えなど、出産後の心理社会的な支援で発症が減りました。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 産後うつ病
- Dennis CL, Dowswell T. Psychosocial and psychological interventions for preventing postpartum depression. Cochrane Database Syst Rev. 2013
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

