自傷行為(非自殺性自傷)とは?
非自殺性自傷は、死ぬつもりなく、自分自身を意図的に傷つける行為です。
- 体の表面をひっかく、切る(リストカットなど)
- タバコやヘアアイロンでやけどをさせる
- 刺す、自分をたたく、消しゴムで皮膚をこする
1回に何度も傷つけることが多く、隠しやすく手の届きやすい前腕や太ももの前などに、くり返し傷をつけるのが典型的です。そのため、広い範囲に傷跡が残ることがあります。自傷について考えることに頭がいっぱいになることもよくあります。
なぜ自分を傷つけてしまうのか
自傷行為の動機ははっきりわかっていませんが、次のような役割をもっている可能性があります。
- 緊張感や否定的な気持ちを和らげる方法
- 人間関係の問題を解決しようとする方法
- 自分の欠点だと感じることに対して、自分に罰を与える方法
- 助けを求める手段
体の痛みが心の痛みを和らげることがあるため、自傷が緊張を和らげる手段になっている場合があります。多くの若者では、自傷は自殺の意図を示すものではなく、自分を責め、罰を与えるべきだと感じていることがあります。
ほかの心の不調との関係
自傷行為のある若者の一部には、次のような心の不調がみられることがありますが、みられない場合もあります。
- 気分の不調(うつ病など)や不安症
- 自尊心の低下
- 摂食症
- 心的外傷後ストレス症
- パーソナリティ症
- 物質使用症
自傷行為を軽く扱ってはいけない理由
自傷行為が自殺の意図によるものでなくても、自傷をする若者、特にいくつもの方法で自傷をしたことがある人は、ほかの心の病気をもっていることが多く、自殺のリスクが高いとされています。
そのため、「注意を引きたいだけ」と軽く扱わず、本人のつらさを受け止めて、専門家につなぐことが大切です。
家族や周りの人ができること
- 責めずに話を聴く:自傷は、つらい気持ちに対処しようとする手段であることが多いことを理解します。
- 専門家につなぐ:意図的に自分を傷つける子どもや若者は、心の健康の専門家による評価を受けるべきです。
- 家族も支えを受ける:治療では、家族の支援を組み合わせることが一般的です。
- 相談窓口を知っておく:本人も家族も、電話やSNSで相談できます。
専門家による評価
医師や心の健康の専門家は、まず自殺のリスクがあるかどうかを確かめ、自傷の原因になっている根本的な苦しさを見つけようとします。自尊心の低下や、不安、気分、食習慣、物質使用、心的外傷などの問題がないかも確認します。
自殺の意図がなく、主に否定的な気持ちを和らげる、人間関係の問題を解決する、よい気持ちを感じるといった目的で、過去1年に少なくとも5回、自分の体を傷つけた場合に、非自殺性自傷と診断されます。
自傷行為の治療
治療は通常、個人での精神療法(ときに集団療法)で行い、認知行動療法などの技法と家族の支援を組み合わせます。根本にある感情の問題に向き合い、より健康的な対処の方法を身につけることが目的です。
- 自分の感情をよりよく認識する
- 否定的な感情を人生の一部として受け入れる
- ストレスへのより適切な対応を身につける
- 自分を傷つけたい衝動に抵抗する
薬が有効なことはまれです。ほかの心の病気があればその治療も行い、経過をみるための診察を続けます。
日本の相談窓口
厚生労働省のウェブサイト「まもろうよ こころ」では、悩みを抱えたときの相談窓口が紹介されています。
- 電話:「死にたい」「消えたい」といった気持ちを受け止める「#いのちSOS」(毎日24時間)、「よりそいホットライン」、各地の「いのちの電話」、こころの健康相談統一ダイヤルなどがあります。
- SNS・チャット:電話で相談しにくい人のために、LINEやチャットで相談できる窓口があります。
- 子ども向け:18歳までの子どもが相談できる「チャイルドライン」(0120-99-7777)などがあります。
受付時間は窓口によって異なります。最新の情報は「まもろうよ こころ」で確認してください。
出典によって異なる点:どの治療が自傷をくり返しにくくするか
MSDマニュアル家庭版は、認知行動療法などの技法と家族の支援を組み合わせた個人療法を治療の中心としていますが、どの方法が自傷のくり返しを減らすかは比べていません。
子どもと若者の自傷に対する治療を調べたコクランのシステマティックレビュー(Wittら、2021年)は、17件の試験(2,280人)をまとめました。若者向けの弁証法的行動療法(DBT-A)では、治療後に自傷をくり返した人の割合が30%と、通常の治療など(43%)より少なかったと報告しています。一方、個人の認知行動療法や家族療法などについては、くり返しを減らすという明確な根拠は示されませんでした。研究の数が少なく、さらなる検証が必要としています。
つまり、効果が確かめられつつある治療法もあり、専門家と相談しながら本人に合った支援を選ぶことが大切です。
自傷行為のポイント
- 自傷行為(非自殺性自傷)は、死ぬつもりなく自分を意図的に傷つける行為です。
- つらい気持ちを和らげる、自分を罰する、助けを求めるといった役割をもつことがあります。
- 自殺の意図がなくても自殺のリスクは高く、軽く扱ってはいけません。
- 責めずに話を聴き、心の健康の専門家につなぐことが大切です。
- 認知行動療法などの精神療法と家族の支援が治療の中心です。
- 日本では電話やSNSで相談できる窓口があり、「まもろうよ こころ」で確認できます。
自傷行為についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
自傷行為をする人は死にたいと思っているのですか?
多くの若者では、自傷は自殺の意図を示すものではありません。ただし、自傷をする人は自殺のリスクが高いため、軽く扱わず専門家につなぐことが大切です。
なぜ自分を傷つけてしまうのですか?
緊張や否定的な気持ちを和らげる、自分に罰を与える、助けを求めるといった役割をもっていることがあります。
家族が気づいたらどうすればよいですか?
責めずに話を聴き、心の健康の専門家による評価を受けられるようにします。家族も支援を受けながら関わることが大切です。
どんな治療がありますか?
認知行動療法などの技法と家族の支援を組み合わせた精神療法が中心です。薬が有効なことはまれです。
日本ではどこに相談できますか?
「#いのちSOS」や「よりそいホットライン」などの電話窓口、SNS相談、子ども向けの「チャイルドライン」があります。厚生労働省「まもろうよ こころ」で確認できます。
自傷はやめられますか?
精神療法で、感情を認識する方法やストレスへの対処法、衝動に抵抗する方法を身につけることで、より健康的な対処ができるようになることを目指します。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 小児と青年における非自殺性自傷
- MSDマニュアル家庭版 · 自殺行動
- 厚生労働省 · まもろうよ こころ
- Witt KG, et al. Interventions for self-harm in children and adolescents. Cochrane Database Syst Rev. 2021
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
