強迫性障害(強迫症)とは?
強迫性障害は、望まないのにくり返し頭に浮かぶ考えやイメージ、衝動(強迫観念)と、それによる不安を和らげるためにやめられない行動(強迫行為)がみられる病気です。現在の診断名では「強迫症」と呼ばれます。
強迫的な考えや行動の多くは、「害が起きるのではないか」「危険があるのではないか」という心配と結びついています。人口の約1〜3%が発症し、女性にわずかに多くみられます。平均すると19〜20歳ごろに始まります。
強迫性障害は、現実との接触が失われる病気(精神症)とは異なります。また、几帳面で完璧主義な性格(強迫性パーソナリティ症)とも別のものです。
よくみられる強迫観念
強迫観念は、ほかのことを考えたりしているときにも割り込んできて、強い苦痛や不安を引き起こします。本人もそれを不快に感じ、無視したり抑えたりしようとします。
- 汚れへの不安:ドアノブに触れると病気になるのではないかと心配する
- やり忘れへの不安:玄関の鍵をかけ忘れたのではないかと心配する
- 配置や対称へのこだわり:物がきちんと、均等に並んでいないと気になる
- 考えてはいけないことへの不安:攻撃的な考えや性的な考えが浮かんでしまう
- 危害への不安:自分や他人を傷つけてしまうのではないかと心配する
よくみられる強迫行為
強迫行為(儀式とも呼ばれます)は、強迫観念による不安を防いだり減らしたりするために、くり返さずにはいられない行動です。強迫性障害の人の大半には、強迫観念と強迫行為の両方がみられます。
- 洗浄:汚れを落とすために手洗いや掃除をくり返す
- 確認:鍵がかかっているか何度も確かめる
- 数える:ある行動を決まった回数だけくり返す
- 整える:食器や机の上の物を決まった並べ方にする
頭の中で数を数えるなど、ほかの人からは見えない儀式もあります。強迫行為は、毎日何時間もシャワーを浴びる、家を出る前にコンロを30回確認するなど、明らかに過剰なものになります。大半の人は自分の行動が過剰だと気づいているため、人目につかないように儀式を行うことも少なくありません。
生活への影響と、一緒に起こりやすい病気
強迫観念と強迫行為に多くの時間をとられ、人間関係が悪くなったり、学校や仕事の成績が落ちたりして、日常生活を送るのが難しくなることがあります。
- 不安症:強迫性障害の人の約51〜76%が、生涯のうちに不安症の診断を受けます。
- うつ病:約41%がうつ病の診断を受けます。
- チック症:チック症の経験がある人や、併せてもつ人が多くみられます。
- 死にたい気持ち:最大50%の人で、いずれかの時点で死にたい気持ちが生じ、約15%が自殺を試みたことがあるとされています。うつ病があるとリスクが高まります。
つらさを一人で抱え込まず、早めに専門家に相談することが大切です。
強迫性障害の診断
強迫性障害は、医師が症状をもとに、診断基準にしたがって診断します。強迫観念や強迫行為が、次のいずれかにあてはまることが必要です。
- 時間がかかる:合計で1日に少なくとも1時間以上を費やしている
- 強い苦痛や支障:大きな苦痛を引き起こしているか、日常生活に支障をきたしている
診断では、強迫観念のもとにある考え(たとえば「灰皿に触るとがんになる」)が事実と違うことを、本人がどの程度わかっているか(病識の程度)や、チック症があるかどうかも確かめます。ときに、ほかの体の病気がないかを調べるための診察や検査が行われることもあります。
治療①:曝露反応妨害法(認知行動療法)
認知行動療法は、強迫性障害の治療に効果があることが多く、その中でも「曝露反応妨害法」がしばしば効果的です。
- 曝露:強迫観念や不快感の引き金になる状況に、くり返し、少しずつ向き合います。
- 反応妨害:そのあいだ、手洗いや確認などの強迫行為をしないで過ごします。
- 慣れていく:くり返すうちに不快感や不安はしだいに薄れ、儀式をしなくても大丈夫だということが体験としてわかっていきます。
いったんこの方法を身につけると、正式な治療が終わった後も自分で続けられることが多く、改善の効果はたいてい何年も続きます。役に立たない考え方のくせを見つけて変えていく認知療法が、あわせて行われることもあります。

治療②:薬物療法
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):しばしば効果的で、通常は最初に試されます。うつ病の治療に使われる量より多い量が必要になることがあります。
- クロミプラミン:セロトニンに作用する古いタイプの抗うつ薬で、効果がありますが、副作用が多いためSSRIの後に試されます。
- そのほか:これらが効かない場合は、別の種類の薬が使われることがあります。
認知行動療法か薬のどちらかから始めることが多く、効果が不十分な場合は両方を組み合わせます。多くの専門家は、症状が重いほど、曝露反応妨害法と薬を組み合わせるのが最もよい治療と考えています。一方、無意識のパターンに焦点を当てる精神分析的な心理療法は、一般に強迫性障害には効果がないとされています。
子どもと思春期の強迫性障害
強迫性障害は子どもにも起こり、14歳未満で始まる例が約25%以上を占めます。症状は少しずつ進むのが典型的で、多くの子どもは初めのうち症状を隠すことができます。
- 鍵をかけたか、アラームを解除したかを何度も確かめに行く
- 手を洗いすぎて、手が荒れてひび割れる
- 階段などを数える、食べものを決まった回数だけかむ
- 学校の課題を何度も直す、特定のものに触ろうとしない
- 何度も安心させてもらいたがる(多いときには1日に100回以上)
子どもの治療でも、不安を引き起こす状況に向き合いながら強迫行為をしないで過ごす行動療法が最も効果的で、その治療には親や養育者が加わることが重要とされています。必要に応じてSSRIを併用し、多くの子どもで日常生活への支障がなくなります。約40%は成人期の初めまでに自然に治まります。
出典によって異なる点:心理療法の効果はどのくらい確かか
MSDマニュアル家庭版は、曝露反応妨害法を含む認知行動療法がしばしば効果的とし、多くの専門家は症状が重いほど薬との組み合わせが最もよいと考えている、としています。
コクランのシステマティックレビュー(Gavaら、2007年)は、成人の強迫性障害に対する心理療法と通常の治療を比べたランダム化試験8件をまとめました。どの種類の認知行動療法を受けた人も、通常の治療を受けた人より治療後の症状が大きく少なく、認知行動療法の種類による効果の差ははっきりしませんでした。一方で、より大規模で質が高く、長期間追跡した研究や、治療どうしを比べる研究が必要だとしています。
認知行動療法の効果は研究でも支持されていますが、どの方法が誰に最も合うかや、長期的な効果については、さらに研究が進められています。
強迫性障害のポイント
- 強迫性障害(強迫症)は、望まない考え(強迫観念)と、それを打ち消すためにやめられない行動(強迫行為)が特徴の病気です。
- 人口の約1〜3%にみられ、平均して19〜20歳ごろに始まります。
- 手洗い、確認、数える、整えるなどの強迫行為に、1日1時間以上を費やすことがあります。
- 不安症やうつ病を伴うことが多く、死にたい気持ちが生じることもあります。
- 曝露反応妨害法を中心とした認知行動療法がしばしば効果的で、改善は何年も続きます。
- SSRIなどの薬も効果があり、症状が重い場合は心理療法と組み合わせます。
強迫性障害についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
強迫性障害とはどんな病気ですか?
望まない考えやイメージがくり返し頭に浮かび(強迫観念)、それによる不安を打ち消すために、手洗いや確認などの行動をやめられなくなる(強迫行為)病気です。人口の約1〜3%にみられます。
几帳面な性格とはどう違いますか?
強迫性障害では、強迫観念や強迫行為に1日1時間以上を費やしたり、強い苦痛や生活への支障があったりします。几帳面で完璧主義な性格(強迫性パーソナリティ症)とは別のものです。
曝露反応妨害法とは何ですか?
不安の引き金になる状況に少しずつ向き合いながら、強迫行為をしないで過ごす練習をする認知行動療法の一つです。くり返すうちに不安が薄れ、儀式をしなくても大丈夫だとわかっていきます。
強迫性障害は薬で治りますか?
SSRIなどの特定の抗うつ薬がしばしば効果的です。認知行動療法か薬のどちらかから始め、効果が不十分なら組み合わせます。症状が重いほど、組み合わせが効果的と考えられています。
強迫性障害は治りますか?
曝露反応妨害法を身につけると、治療終了後も自分で続けられることが多く、改善はたいてい何年も続きます。早めに専門家に相談することが大切です。
子どもも強迫性障害になりますか?
なります。14歳未満で始まる例が約25%以上を占め、何度も確かめる、手を洗いすぎる、何度も安心させてもらいたがるなどの行動がみられます。治療には親や養育者が加わることが大切です。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 強迫症
- MSDマニュアル家庭版 · 小児と青年における強迫症および関連症群
- Gava I, et al. Psychological treatments versus treatment as usual for obsessive compulsive disorder (OCD). Cochrane Database Syst Rev. 2007
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

