チック症とは?
チックとは、目的のない同じような動きが素早く不規則にくり返される現象(運動チック)や、意図しない音や言葉が突然くり返し出る現象(音声チック)です。
チックが起こる前には、その動作をしたいという強い衝動が生じます。この衝動は、くしゃみが出そうなときや、かゆいところをかきたくなるときの感覚に似ていて、チックが起こる体の部分で緊張が高まります。チックをすると、一時的に落ち着きます。
チックの多くは軽く、親も医師も病気と気づかないことがよくあります。女の子より男の子に3倍多くみられます。
チックの種類:運動チックと音声チック
- 単純性運動チック:まばたき、顔をしかめる、急に首をふる、肩をすくめるなど
- 単純性音声チック:せき払い、鼻を鳴らす、においをかぐ、ぶつぶつ言うなど
- 複雑性チック:単純なチックの組み合わせや、より長く続く動き。他の人の動きをまねる、自分や他の人の言葉をくり返すなど
単純性チックはとても短い時間で終わり、初めはただの癖のように見えることもあります。複雑性チックの中には、社会的に不適切な言葉を発するもの(汚言)もありますが、トゥレット症候群の人の大半は、そのような言葉をやみくもに叫ぶことはありません。
チック症の分類とトゥレット症候群
- 暫定的チック症:運動チックか音声チックがあり、続いている期間が1年以内のもの
- 持続性(慢性)チック症:運動チックか音声チックのどちらか一方だけが1年以上続くもの
- トゥレット症候群:運動チックと音声チックの両方が1年以上続くもの
典型的には暫定的チック症から始まり、ときに持続性チック症やトゥレット症候群に進みます。トゥレット症候群は最も重いタイプで、子ども1,000人あたり3〜8人にみられます。
チックが始まる年齢と経過
チックは18歳までに始まり、典型的には4〜6歳で始まります。症状は10〜12歳ごろに最も強くなり、思春期に入ると減っていきます。大半のチックはやがてなくなりますが、約1%の子どもでは大人になってもチックが残ります。
チックの種類、程度、頻度は、時間とともに変わっていきます。突然、劇的に始まることもあります。
- 悪化しやすいとき:ストレスや疲れがあるとき。テレビを見ているときなど、リラックスしているときに悪化することもよくあります。
- 我慢できるか:数秒から数分なら我慢できることもありますが、意識的な努力が必要で、最終的には衝動を抑えられなくなります。
- 指摘すると:とくに子どもでは、チックを指摘すると悪化することがあります。
チック症の原因と、一緒にみられやすい病気
チック症の原因はわかっていませんが、家族内でよくみられることから、遺伝的な要因が関わっていると考えられています。別の病気や、一部の薬物の使用でチックが起こることもあります。
- 注意欠如多動症(ADHD)
- 強迫症
- 学習症
- 不安症
重いチック症やトゥレット症候群のある子どもでは、こうした病気を1つ以上伴う可能性が高くなります。これらの病気は、チックそのもの以上に、子どもの発達や生活に影響することがよくあります。重いチックのある人の多くは日常生活に困難を感じ、人前で強い不安を覚えます。
チック症の診断
診断は、症状と、それが続いている期間に基づいて行います。トゥレット症候群をほかのチック症と区別するために、定期的に医師の評価を受ける必要がある場合もあります。医師は、チックと一緒に起こることの多いADHDや強迫症などの有無も確認します。
チック症が早めに診断されると、チックが本人のわざとの行為ではないこと、罰を与えても止まらずかえって悪化させる可能性があることを、親が理解する助けになります。
家族や学校での接し方
- 安心させる:軽い場合は、心配いらないと安心させることが最善の対応になることが多くあります。
- 気に留めない:チックが自然になくなるまで、できるだけ気にしないようにします。
- 叱らない:罰を与えてもチックは止まらず、悪化させることがあります。
- 周りの理解:学校の先生や友だちに説明し、理解を得ることも大切です。
家族が病気に理解を示し、学校でも理解が得られている場合は、治療を行わないことがほとんどです。チックがあって学校生活に困難を感じている子どもは、学習症がないか評価を受け、必要に応じて支援を受けることがすすめられます。
チック症の治療:CBITと薬物療法
- CBIT(チックに対する包括的な行動介入):年長の子どものチックを管理するのに役立つ行動療法です。習慣逆転法などの認知行動療法、チックについての教育、リラクゼーションを組み合わせます。
- 習慣逆転法:チックの代わりになる新しい動作を教えます。たとえば肩をすくめるチックなら、衝動がなくなるまで両腕を外に伸ばすように練習します。
- チックが起こる状況を知る:チックが起きたり悪化したりする状況を、子どもと親が見つけられるように指導します。
- 薬物療法:チックが続いて活動の妨げや自己像の低下につながっている場合に限り、すすめられます。チックを許容できる程度に抑える最低限の量を使い、チックが減ったら量も減らします。
ADHDの治療に使われる中枢刺激薬はチックを悪化させることがあるため、ADHDを伴う場合は治療の調整が必要になることがあります。
出典によって異なる点:行動療法はどのくらい効くか
MSDマニュアル家庭版は、CBITが一部の年長の子どものチックを管理するのに役立つとし、軽い場合は安心させることが最善の対応になることが多いとしています。
Piacentiniらのランダム化試験(2010年)は、生活に支障のあるトゥレット症候群または慢性チック症の9〜17歳の126人を対象に、10週間で8回のCBITと、支持的な療法と教育を比べました。チックの重さを示す点数(50点満点)は、CBITのグループで約24.7点から約17.1点に下がったのに対し、比較のグループでは約24.6点から約21.1点の低下にとどまり、CBITの方が大きく改善しました。
行動療法は、薬を使わずにチックを軽くする方法として有望です。ただし、対象は9歳以上の子どもで、小さな子どもや軽いチックでは、まず安心させて見守ることが基本になります。
チック症のポイント
- チックは、素早い動きや音・言葉が、意図せずくり返し起こるもので、子どもによくみられます。
- 男の子に3倍多く、典型的には4〜6歳で始まり、10〜12歳ごろに最も強くなります。
- 大半はやがてなくなりますが、約1%は大人になっても残ります。
- 運動チックと音声チックの両方が1年以上続くものをトゥレット症候群といいます。
- わざとではないため、叱らず、安心させて見守ることが基本です。
- 生活の妨げになる場合は、CBITなどの行動療法や、必要に応じて薬が使われます。
チック症についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
チックとはどんな症状ですか?
まばたき、顔をしかめる、首をふる、肩をすくめるといった素早い動き(運動チック)や、せき払い、鼻を鳴らすなどの音(音声チック)が、意図せずくり返し起こる症状です。
チックは何歳ごろに始まりますか?
18歳までに始まり、典型的には4〜6歳で始まります。10〜12歳ごろに最も強くなり、思春期に入ると減っていきます。
子どものチックは治りますか?
大半のチックはやがて自然になくなります。ただし、約1%の子どもでは大人になってもチックが残ります。
チックをやめるように注意してもよいですか?
チックはわざとしているものではなく、叱ったり罰を与えたりしても止まらず、かえって悪化することがあります。指摘せず、安心させて見守ることが大切です。
トゥレット症候群とチック症の違いは?
トゥレット症候群は、運動チックと音声チックの両方が1年以上続く、最も重いタイプのチック症です。
チックの治療法はありますか?
軽い場合は見守ることが基本です。生活の妨げになる場合は、CBIT(チックに対する包括的な行動介入)などの行動療法や、必要に応じて薬が使われます。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 小児と青年におけるトゥレット症候群とその他のチック症
- Piacentini J, et al. Behavior therapy for children with Tourette disorder: a randomized controlled trial. JAMA. 2010
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
