めまいとは?さまざまな感覚
「めまい」は厳密な医学用語ではなく、次のようなさまざまな感覚を表す言葉としてよく使われます。
- 回転性めまい:実際には動いていないのに、自分や周りがぐるぐる回っているように感じる
- ふらつき・平衡障害:バランスを失いそう、足元が不安定に感じる
- 気が遠くなる感じ:気を失いそうになる
- 頭がぼうっとする:くらくらする、酔ったような感じ
回転性めまいでは、吐き気や嘔吐、歩きにくさを伴うことがあり、目が小刻みに揺れる「眼振(がんしん)」がみられることもあります。同じ人でも感覚の説明がそのときによって変わることがあり、言葉で表すのが難しい症状です。
めまいはどの年齢でも起こりますが、年齢とともに増えます。1か月以上続く場合は慢性のめまいとされ、高齢者に多くみられます。
めまいの主な原因
回転性めまいは、多くの場合、平衡感覚を保つ働きをもつ内耳、脳幹と小脳、それらをつなぐ神経の病気で起こります。
- 回転性めまいを伴う主な原因:良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎、内耳炎、前庭性片頭痛(片頭痛に関連するめまい)
- 回転性めまいを伴わない主な原因:前庭性片頭痛、薬(とくに高血圧の薬)、複数の要因が重なったもの
- 体全体の状態:低血糖、低血圧、重い貧血、心臓や肺の病気など、脳に届く酸素やブドウ糖が足りないとき
- こころの状態:パニック症、不安、抑うつのある人はめまいが起きやすい傾向があります
頻度は低いものの、聴神経の腫瘍、脳卒中や一過性脳虚血発作、多発性硬化症などが原因のこともあります。一方で、特定の原因が見つからず、治療しなくても症状が消えることもよくあります。立ち上がったときだけに起こる立ちくらみは、別の原因で起こります。
最も多い「良性発作性頭位めまい症」
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会によると、良性発作性頭位めまい症(BPPV)はめまいの病気の中で最も多く、寝返り、起き上がり、横になるときなど、特定の頭の位置や動きで回転性めまいが起こります。
- めまいは数秒から数十秒(通常は1分未満)でおさまる
- 難聴や耳鳴りは伴わない
- 吐き気や嘔吐を伴うことがある
- 数日から数週間のあいだに何度も起こり、その後自然になくなっていくことが多い
内耳には、体の傾きを感じる「耳石器」があります。そこにある耳石(カルシウムの小さな粒)の一部がはがれて、回転を感じる「半規管」の中に入り込み、頭の動きに合わせて移動するため、めまいが起こります。年齢とともに耳石ははがれやすくなり、頭のけが、耳の感染症、長く寝たきりになることなどもきっかけになります。
良性発作性頭位めまい症の治療:耳石を戻す
良性発作性頭位めまい症は、診断がつけば治しやすい病気です。
- 診断:目の動きを観察しながら頭を決まった位置に動かし、実際にめまいと眼振を起こして、はがれた耳石の場所を確かめます(ディックス・ホールパイク法)。
- 耳石置換法:頭をとんぼ返りのように順に動かして、半規管に入り込んだ耳石を症状の出ない場所へ戻します。代表的なものがエプリー法で、ほとんどの場合、1〜2回で症状が和らぎます。
- 薬:一般的には推奨されません。
- 再発時:症状が再発したときのために、自宅で行う方法を教わることもあります。
症状自体は危険ではありませんが、運転中や高い場所で発作が起きると転倒などの事故につながるおそれがあります。高齢者では平衡感覚に大きく影響し、転倒やけがの原因になることもあるため、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

危険なめまいのサイン
めまいがすると脳の病気を心配する人が多いのですが、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会によると、実際に脳の病気によるめまいは比較的少数です。ただし、次のようなサインがある場合は注意が必要です。
- 最近始まった、または激しい頭痛
- 首の痛み
- 歩くのが難しい
- 意識を失う(失神)
- 聞こえにくい、目が見えにくい、話しにくい、飲み込みにくい、腕や脚が動かしにくいなどの神経の症状
めまいのほかに、意識の障害、ことばの障害、手足の麻痺やしびれ、激しい頭痛などを伴う場合は、脳卒中の可能性があります。救急車を呼ぶなどの対応をしてください。小脳や脳幹の出血や梗塞では、めまいが起こることがあります。
めまいで受診するタイミング
- すぐに受診:危険なサインがある、症状が重い、1時間以上続く、嘔吐がある
- 早めに受診:それ以外のめまいは、できるだけ早く主治医の診察を受ける
- 様子を見てよい場合:1分未満の軽いめまいが1回だけで、ほかに症状がない場合は、再び起こるかどうか様子を見る
受診するときは、どのような感覚だったか、どのくらい続いたか、頭の位置を変えたときに起こったか、吐き気や耳鳴り・難聴があったか、新しく飲み始めた薬がないかなどを伝えると、原因を見つける手がかりになります。
聞こえにくさや耳鳴りを伴う場合は内耳の病気が疑われるため、耳鼻咽喉科での診察が役立ちます。
めまいの診察と検査
めまいの多くは、問診と診察で原因の見当がつきます。診察では、耳と目の診察、神経の診察がとくに重要です。
- 耳の診察と聴覚の検査:外耳道や鼓膜に異常がないか、聞こえが落ちていないかを確かめます。
- 眼振の観察:目の動きを観察します。眼振の向きや続く長さは、回転性めまいの原因を見分けるのに役立ちます。
- 神経の診察:歩き方、バランス、手足の協調運動などを調べます。
- 画像検査:危険な病気が疑われる場合は、MRI検査などを行います。
良性発作性頭位めまい症では、頭の位置を変える検査で、少し遅れてめまいと眼振が起こり、くり返すと弱まっていくのが特徴です。脳の病気によるめまいでは、すぐに症状が起こり、頭の位置を変えない限り続く傾向があります。

めまいの治療:薬と前庭リハビリテーション
- 原因の治療:可能な限りめまいの原因を治療します。薬が原因であれば、中止や減量、別の薬への変更を検討します。
- 症状を和らげる薬:吐き気や嘔吐を抑える薬、内耳の病気による回転性めまいを和らげる抗ヒスタミン薬などが使われます。ただし、眠気が出ることがあり、とくに高齢者では強く出ることがあります。
- 前庭リハビリテーション:バランスの理学療法で、慢性のめまいに対する最も重要な治療とされています。原因にかかわらず、ほとんどの人が改善します。
理学療法士は、次のような日常の工夫もすすめます。
- 上を向く、かがむなど、めまいを起こしやすい動作を避ける
- 普段使う物は手の届きやすい高さに置く
- 座った姿勢や寝た姿勢から起き上がるときは、ゆっくり動く
- 目、頭、体の動きを組み合わせた体操を覚え、筋力をつけて一人で歩ける状態を保つ
出典によって異なる点:エプリー法はどのくらい効くか
MSDマニュアル家庭版は、良性発作性頭位めまい症の多くの人で、エプリー法によって回転性めまいがすぐに軽くなるとしています。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、多くの場合、耳石置換法でめまいを改善できるとしています。
コクランのシステマティックレビュー(Hiltonら、2014年)は、エプリー法を評価したランダム化試験11件(745人)をまとめました。偽の手技や治療なしと比べて、めまいが完全に消えた人の割合は21%から56%に増え、エプリー法は安全で効果的な治療と結論づけられました。一方で、治療後の再発率は36%と高く、ほかの耳石置換法(セモン法など)とは同程度で、自宅で行うブラント・ダロフ体操よりは優れていました。
エプリー法は効果の確かな治療ですが、すべての人のめまいがすぐに消えるわけではなく、再発も多いことを知っておくとよいでしょう。再発した場合は、再び耳鼻咽喉科で相談してください。
めまいのポイント
- めまいには、回転性めまい、ふらつき、気が遠くなる感じなど、さまざまな感覚があります。
- ほとんどは重い病気によるものではなく、最も多いのは良性発作性頭位めまい症です。
- 良性発作性頭位めまい症は頭の位置を変えたときに短いめまいが起こり、エプリー法などで多くは改善します。
- 激しい頭痛、意識の変化、言葉の障害、手足の麻痺などを伴うめまいは、すぐに救急車を呼んでください。
- 症状が重い、1時間以上続く、嘔吐がある場合はすぐに、それ以外も早めに受診しましょう。
- 長引くめまいには前庭リハビリテーションが最も重要で、高齢者では転倒予防も大切です。
めまいについてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
めまいの原因で最も多いものは何ですか?
最も多いのは良性発作性頭位めまい症で、寝返りや起き上がりなど頭の位置を変えたときに、数秒から数十秒の回転性めまいが起こります。ほかにメニエール病、前庭神経炎、前庭性片頭痛、薬なども原因になります。
危険なめまいの見分け方は?
めまいとともに、激しい頭痛、首の痛み、意識の変化、言葉の障害、手足の麻痺やしびれ、ものが見えにくい、歩けないといった症状があれば、脳卒中などのおそれがあるためすぐに救急車を呼んでください。
めまいがしたら何科を受診すればよいですか?
聞こえにくさや耳鳴りを伴うめまいや、頭の位置で起こるめまいは、耳鼻咽喉科が担当します。脳の症状を伴う場合は、脳神経内科や脳神経外科が担当します。
良性発作性頭位めまい症は治りますか?
診断がつけば治しやすい病気で、耳石を元の位置に戻すエプリー法などで多くは改善します。ただし再発することも多く、研究では治療後の再発率は36%と報告されています。
めまいに効く薬はありますか?
吐き気を抑える薬や、内耳の病気による回転性めまいを和らげる薬が使われることがありますが、眠気が出ることがあります。良性発作性頭位めまい症では、薬は一般的に推奨されません。
長引くめまいにはどうすればよいですか?
前庭リハビリテーション(バランスの理学療法)が最も重要な治療とされ、原因にかかわらずほとんどの人が改善します。めまいを起こしやすい動作を避け、ゆっくり起き上がるなどの工夫も役立ちます。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · めまい
- MSDマニュアル家庭版 · 良性発作性頭位めまい症
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 · めまい・顔面神経麻痺
- Hilton MP, Pinder DK. The Epley (canalith repositioning) manoeuvre for benign paroxysmal positional vertigo. Cochrane Database Syst Rev. 2014
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

