不安障害(不安症)とは?ふつうの不安との違い
不安は、危険やストレスに対する本来は正常な反応です。危険が迫ると、体は「戦うか逃げるか」の態勢に切り替わり、心臓や筋肉への血流が増えて、身を守る行動をとりやすくなります。ほどよい不安は、試験や仕事の前に集中力を高める助けにもなります。
ところが、不安がある一線を越えると、かえって力を発揮できなくなります。次のような場合、不安は病気(不安症)と考えられます。
- その場の状況にそぐわない場面で不安が起こる
- 不安がたびたび起こる
- 日常生活に差しさわりが出るほど強く、長く続く
不安症は、ほかのどの心の病気よりも多くみられ、米国では成人の約3人に1人が一生のうちにいずれかの不安症を経験するとされています。強い不安が何年も続くと、本人にとってそれが「当たり前」に感じられてしまい、病気として気づかれないまま治療されないことも少なくありません。
不安障害の種類
不安症にはいくつもの種類があり、それぞれ別の病気ですが、いずれも不安や恐怖による苦痛と生活への支障が特徴です。
- 全般不安症:仕事、家庭、お金、健康など、さまざまなことについて過剰な心配が6か月以上続きます。
- パニック症:突然の強い恐怖とともに動悸や息苦しさなどが起こるパニック発作をくり返します。
- 社交不安症:人前で話す、注目されるといった場面で強い不安を感じます。
- 広場恐怖症:すぐに逃げられない場所や助けが得られない場所を強く恐れます。
- 限局性恐怖症:動物、高い所、血や注射など、特定の対象や状況を強く恐れます。
- 分離不安症・場面緘黙:主に子どもの時期に始まります。
- 物質・薬による不安症、ほかの病気による不安症
多くは大人になってから始まります。また、心的外傷後ストレス症や適応反応症のように、つらい出来事や大きなストレスをきっかけに強い不安が現れる病気もあります。
不安障害の原因
不安症の原因はすべてが解明されているわけではありませんが、次のような要素が関わっていると考えられています。
- 環境:心に傷を残すような出来事の経験、強いストレス、大切な人間関係の破綻、災害など
- 遺伝的な要因:家族に不安症の人がいる
- 体の病気:甲状腺機能亢進症、心不全など
- 薬や物質:カフェイン、ステロイド薬、違法薬物など
不安症は家族の中でみられやすい傾向があります。その一部は遺伝によるものと考えられますが、不安の強い人と一緒に暮らすうちに不安の感じ方を身につける面もあると考えられています。ただし、はっきりしたきっかけがないまま発症する人も多くいます。
体の病気や薬が原因の不安
不安は、体の病気や、薬の使用・中止によって起こることもあります。不安の背景になりうる主な病気は次のとおりです。
- 心不全や不整脈などの心臓の病気
- 甲状腺機能亢進症、副腎の働きが過剰になる病気、ホルモンを出す腫瘍(褐色細胞腫)など
- ぜんそく、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、睡眠時無呼吸症候群などの呼吸器の病気
- 発熱
不安を引き起こしやすい物質としては、アルコール、カフェイン、中枢刺激薬、コカイン、一部の人では大麻、ステロイド薬などの処方薬、一部の市販の風邪薬や鼻づまりの薬、カフェインやガラナを含むダイエット製品などがあります。お酒をやめたときや、鎮静作用のある薬を中止したときにも、不安、不眠、落ち着かなさが現れることがあります。
重い病気を抱えたときに不安になるのは自然なことですが、不安による苦痛が大きい、生活に支障が出ているという場合は、治療が必要な不安症になっている可能性があります。
不安障害の症状
不安は、パニック発作のように突然起こることもあれば、数分から数日かけて少しずつ強まることもあります。続く時間も数秒から数年までさまざまです。不安症では、心の症状だけでなく、次のような体の症状も多くみられます。
- 動悸、脈が速くなる
- 息切れ、息が詰まる感じ
- めまい、気が遠くなる感じ、汗、ほてりや寒気
- 筋肉のこわばり、胸の痛みや圧迫感
- 吐き気、嘔吐、下痢
不安があると、特定の物や場面を避けるなど、ふだんの行動が大きく変わることがよくあります。不安症のある人は、ない人に比べてうつ病になる可能性が少なくとも2倍高く、不安をお酒や薬物で紛らわそうとして依存につながることもあります。
いつ、どんな場面で不安が起きたか、どんな症状が出たかを日記に記録しておくと、受診したときに医師に伝えやすくなり、治療の役にも立ちます。

不安障害の診断と受診の目安
不安にどこまで耐えられるかは人によって大きく異なるため、どこからが病気かの線引きは簡単ではありません。医師は一般に、次のような点を確認します。
- 不安によって強い苦痛が生じている
- 不安のために日常生活に支障が出ている
- 不安が長く続いている、またはくり返し起こる
同時に、うつ病や睡眠の病気など、不安を起こすほかの病気がないかも調べます。家族に似た症状の人がいないかを尋ね、診察や血液検査で、不安の原因になる体の病気がないかを確かめます。
不安のために仕事や学校、家事、人づきあいがつらくなっている、特定の場所や場面を避けるようになった、不安を紛らわすためにお酒や薬に頼っている、といった場合は、早めに医療機関に相談しましょう。
不安障害の治療①:心理療法とリラクゼーション
不安症は種類によって治療が異なるため、正確な診断が大切です。体の病気や薬が原因の場合は、まずその原因を取り除きます。そのうえで不安が残る場合や、不安症と診断された場合は、心理療法、薬、またはその組み合わせで治療します。
- 認知行動療法:不安を強める考え方のくせに気づき、それを整え、行動を少しずつ変えていく方法です。全般不安症にも効果が示されています。
- そのほかの心理療法:マインドフルネスストレス低減法、催眠療法、支持的精神療法などが用いられます。
- リラクゼーション:リラクゼーション、ヨガ、瞑想、運動、バイオフィードバック法なども、ある程度の効果が期待できます。
不安症の人の中には、お酒や大麻、抗不安薬などで自分なりに不安を抑えようとしている人も少なくありません。こうした方法は危険なうえ、効果が切れると不安がぶり返し、さらに頼るという悪循環につながりやすいため、正直に医師に相談することが大切です。

不安障害の治療②:薬
不安症の治療には、主に次のような薬が使われます。
- 抗うつ薬(SSRI、SNRIなど):うつ病と同じように不安症にもよく効きます。効果が出るまでに通常は数週間かかります。
- ベンゾジアゼピン系の抗不安薬:速く効き、1時間以内に効果が出ることもありますが、眠気、もの忘れ、ふらつきなどの副作用があり、依存につながる可能性があります。眠気を起こすほかの薬と一緒に使ってはいけません。
- そのほかの抗不安薬:眠気や依存を起こしにくいものの、効果が出るまでに数週間かかる薬もあります。
抗うつ薬の効果が出るまでのあいだ、最初の時期だけベンゾジアゼピン系の薬を一緒に使うこともあります。カバやセイヨウカノコソウなどのハーブ製品にも抗不安作用がある可能性がありますが、効果と安全性はまだ十分に確かめられていません。薬の選び方や量、やめ方は、必ず医師と相談して決めてください。
出典によって異なる点:どの心理療法がよいのか
MSDマニュアル家庭版は、不安症の多くの人で、薬、心理療法、またはその組み合わせによって苦痛と生活の支障がかなり軽くなるとし、心理療法として認知行動療法、マインドフルネスストレス低減法、催眠療法、支持的精神療法などを挙げています。
コクランのシステマティックレビュー(Hunotら、2007年)は、全般不安症に対する心理療法の研究25件(1,305人)をまとめました。認知行動療法の考え方にもとづく心理療法は、通常の診療や順番待ちと比べて治療後の改善が多く、不安、心配、抑うつの症状も減らしていました。一方で、認知行動療法と支持的な心理療法を比べた6件の研究では、治療後の改善に統計的な差はみられませんでした。また、長期的な効果を調べた研究はありませんでした。
このレビューは、認知行動療法が短期的な治療として有効であることは示せたものの、ほかの心理療法と比べてどれが優れているかを結論づけるには研究が少ないとしています。
不安障害のポイント
- 不安そのものは正常な反応ですが、場面にそぐわない、たびたび起こる、生活に支障が出るほど強く長い場合は不安症と考えられます。
- 不安症は最もよくみられる心の病気の一つで、全般不安症、パニック症、社交不安症、恐怖症などの種類があります。
- 環境、遺伝、体の病気、薬やカフェインなどの物質が関わります。
- 動悸、息切れ、めまい、汗、筋肉のこわばり、胃腸の不調など、体の症状もよく現れます。
- 治療は心理療法(とくに認知行動療法)、薬、またはその組み合わせで、多くの人で症状がかなり軽くなります。
- お酒や薬で不安を紛らわすと悪循環になりやすいため、早めに医療機関に相談しましょう。
不安障害についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
不安障害とふつうの不安はどう違いますか?
不安そのものは危険に備える正常な反応です。場面にそぐわないところで起こる、たびたび起こる、生活に支障が出るほど強く長く続く、といった場合は不安症(不安障害)と考えられます。
不安障害にはどんな種類がありますか?
全般不安症、パニック症、社交不安症、広場恐怖症、限局性恐怖症、分離不安症、場面緘黙などがあります。体の病気や薬・物質が原因で起こる不安症もあります。
不安障害の体の症状にはどんなものがありますか?
動悸、息切れや息が詰まる感じ、めまい、汗、ほてりや寒気、筋肉のこわばり、胸の圧迫感、吐き気や下痢などがあります。
カフェインで不安は強くなりますか?
カフェインは不安を引き起こしやすい物質の一つに挙げられています。ほかにアルコール、一部の市販薬、ステロイド薬、カフェインやガラナを含むダイエット製品なども不安の原因になることがあります。
不安障害は治りますか?
心理療法、薬、またはその組み合わせによって、多くの人で苦痛と生活の支障がかなり軽くなります。研究では、認知行動療法が全般不安症の短期的な治療として有効であることが示されています。
抗不安薬はずっと飲んでも大丈夫ですか?
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は速く効く一方で、眠気やもの忘れなどの副作用があり、依存につながる可能性があります。使い方ややめ方は、必ず医師と相談してください。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 不安症の概要
- MSDマニュアル家庭版 · 全般不安症
- Hunot V, et al. Psychological therapies for generalised anxiety disorder. Cochrane Database Syst Rev. 2007
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

