自己愛性パーソナリティ障害とは?
パーソナリティ障害(パーソナリティ症)は、考え方、物事のとらえ方、反応のしかた、人との関わり方のパターンが長く広い範囲で続き、本人に大きな苦痛をもたらしたり、日常生活に支障をきたしたりする心の病気です。
自己愛性パーソナリティ障害はその一つで、自分の価値を過大に評価すること(誇大性)が特徴です。また、自尊心に問題を抱えていて、優越感や自尊心を高めるために、特別な人物や優れた機関と関わろうとしたり、他者を低く評価したりします。そして、賞賛されることを強く望みます。
約2%の人に起こると推定されていて、男性により多くみられます。
特徴①:誇大性と、特別であるという空想
- 能力や業績の誇張:自分の能力を過大に評価し、業績を誇張します。自分が他者より優れている、独特である、特別であると考えています。
- 他者の過小評価:自分を過大評価する一方で、他者の価値や業績を低く見ることがよくあります。
- 大きな成功の空想:圧倒的な知能や美しさで賞賛されること、名声や影響力をもつこと、素晴らしい恋愛をすることといった空想にとらわれています。
- 特別な人との付き合い:普通の人ではなく、自分と同じように特別で才能のある人とだけ関わるべきだと考え、そうした付き合いを自尊心を支えるために利用します。
特徴②:賞賛への欲求と、壊れやすい自尊心
自己愛性パーソナリティ障害の人は、過剰なほどの賞賛を受けないと満足できません。その自尊心は他者からよく思われることに依存しているため、通常はとても壊れやすいものです。
- 他者が自分をどう考えているかをよく気にしている
- 自分がどれだけうまくやれているかを常に確かめている
- 他者による批判や、恥や敗北を感じる失敗にとても敏感である
批判されたり失敗したりすると、怒りや軽蔑で反応したり、激しく反撃したりすることがあります。反対に、自尊心を守るために引きこもったり、表向きは状況を受け入れたりすることもあります。失敗するかもしれない状況を避けることもあります。
人との関係に表れやすい特徴
- 特権意識:自分は特別な扱いを受けて当然だと考えます。
- 他者の利用:目標を達成するために他者を利用することがあります。
- 共感の乏しさ:他者の気持ちや必要としていることを理解したり、思いやったりすることが苦手です。
- 嫉妬:他者に嫉妬し、また他者が自分に嫉妬していると信じています。
- 傲慢さ:傲慢で横柄な態度をとることがあります。
これらは、診断基準にも含まれている特徴です。
自己愛性パーソナリティ障害の原因
遺伝的な要因と環境の要因の両方が、発症に関わっている可能性があります。
- 養育の影響:ある仮説では、養育者が子どもと、安定した自己感覚の発達につながらない形で関わっていた可能性が示唆されています。
- 賞賛と結びついた自己像:特別な才能や能力をもっていて、自己像や自己感覚を他者からの賞賛や尊敬と結びつけることに慣れている人もいます。
ただし、原因ははっきりとは解明されておらず、一つの要因だけで説明できるものではありません。
一緒にみられやすい病気
自己愛性パーソナリティ障害の人には、ほかの病気がしばしばみられます。
- うつ病
- 神経性やせ症
- 物質使用症
- ほかのパーソナリティ障害(演技性、境界性、反社会性、猜疑性など)
とくに物質使用症では、コカインの使用が多いとされています。
自己愛性パーソナリティ障害の診断
パーソナリティ障害の診断は、通常、米国精神医学会の診断基準(DSM-5-TR)に基づいて、医師が評価して行います。自己愛性パーソナリティ障害と診断するには、誇大性、賞賛の必要性、共感の欠如が続いていて、次のうち少なくとも5つがあてはまる必要があります。
- 自分の重要性や才能について、根拠のない誇大な感覚をもっている
- 途方もない成功、権力、才能、美しさ、理想的な恋愛の空想にとらわれている
- 自分は特別で、最も優れた人とだけ付き合うべきだと信じている
- 過剰な賞賛を求める
- 特権意識をもっている
- 目標のために他者を利用する
- 共感が乏しい
- 他者に嫉妬し、他者が自分に嫉妬していると信じている
- 傲慢で横柄である
また、症状が成人期の早い時期までに始まっている必要があります。
自己愛性パーソナリティ障害の治療
- 精神力動的精神療法:根底にある葛藤に焦点を当てる精神療法で、有効な場合があります。
- メンタライゼーションに基づく治療:自分の心の状態(何を感じていて、その理由は何か)や、他者の心の状態について考え、理解することを支援します。
- 転移焦点化精神療法:患者と治療者のあいだのやりとりに重点を置く精神療法です。
- 認知行動療法:賞賛を求める気持ちを手がかりに、治療者が行動の変化を後押しできる場合があります。
メンタライゼーションに基づく治療や転移焦点化精神療法は、もともと境界性パーソナリティ障害のために開発されたもので、それを応用して使われています。これらは、自分や他者を感情的にどう体験しているかという問題に焦点を当てます。

出典によって異なる点:どのくらいの人にみられるか
MSDマニュアル家庭版は、有病率の推定値にはばらつきがあるとしたうえで、約2%の人に起こると研究から示唆されているとしています。
Stinsonらの研究(2008年)は、米国の成人34,653人に対面調査を行い、生涯のうちに自己愛性パーソナリティ障害の基準を満たす人は6.2%で、男性(7.7%)の方が女性(4.8%)より多いと報告しました。また、物質使用、気分、不安の病気やほかのパーソナリティ障害が一緒にみられることが多く、この障害は以前考えられていたほど安定したものではない可能性があるとしています。
数字の違いは、調査の方法や対象、「生涯のうちに一度でも」と数えるかどうかなどによるものと考えられます。どちらの出典でも、男性に多く、ほかの心の病気を伴いやすい点は共通しています。
自己愛性パーソナリティ障害のポイント
- 自己愛性パーソナリティ障害は、誇大性、賞賛への欲求、共感の乏しさが長く続く心の病気です。
- 自分を過大に評価する一方で、その自尊心は他者の評価に依存し、とても壊れやすいものです。
- 批判や失敗に敏感で、怒りや反撃、または引きこもりで反応することがあります。
- うつ病、物質使用症、ほかのパーソナリティ障害などを伴いやすい病気です。
- 診断は、DSM-5-TRの基準に基づいて医師が行います。
- 根底にある葛藤に焦点を当てた精神療法などが役立つことがあります。
自己愛性パーソナリティ障害についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
自己愛性パーソナリティ障害の主な特徴は?
自分の能力や業績を過大に評価する誇大性、過剰な賞賛を求める気持ち、特権意識、他者への共感の乏しさなどが特徴です。
自信過剰な人はみんな自己愛性パーソナリティ障害ですか?
いいえ。診断には、特徴的なパターンが成人期の早い時期から長く広い範囲で続き、本人の苦痛や生活の支障につながっていることが必要で、医師が基準に基づいて評価します。
批判されるとなぜ強く反応するのですか?
自尊心が他者からの評価に依存していて、とても壊れやすいためです。批判や失敗に敏感で、怒りや反撃で反応したり、引きこもったりすることがあります。
原因は何ですか?
遺伝的な要因と環境の要因の両方が関わっている可能性があります。養育者との関わり方が、安定した自己感覚の発達に影響したという仮説もあります。
どのくらいの人にみられますか?
推定にはばらつきがあり、約2%とするものから、米国の調査で生涯に6.2%とするものまであります。いずれも男性に多いとされています。
治療法はありますか?
根底にある葛藤に焦点を当てる精神力動的精神療法、メンタライゼーションに基づく治療、転移焦点化精神療法、認知行動療法などが役立つ場合があります。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 自己愛性パーソナリティ症
- Stinson FS, et al. Prevalence, correlates, disability, and comorbidity of DSM-IV narcissistic personality disorder. J Clin Psychiatry. 2008
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
