境界性パーソナリティ障害とは?
パーソナリティ障害は、考え方、受け止め方、反応のしかた、人との関わり方のパターンが長く広く続き、本人に大きな苦痛をもたらしたり、日常生活に支障をきたしたりする心の病気です。
境界性パーソナリティ障害は、人間関係、自己像、気分が不安定で、衝動的な行動がみられるのが特徴です。米国では約3〜6%の人にみられると考えられ、男性より女性に多く診断されます。不安症、心的外傷後ストレス症、物質使用症などを合わせもつこともよくあります。
見捨てられることへの強い恐れ
- ひとりになることに耐えるのが難しく、見捨てられることを強く恐れます。
- 大切な人が約束に数分遅れたり、予定をキャンセルしたりするだけで、パニックになったり激しく怒ったりすることがあります。
- しばしば、自分の内面が空っぽのように感じます(慢性的な空虚感)。
- 怒りをコントロールするのが難しく、怒りを爆発させた後に、恥ずかしさや罪悪感を覚えることがよくあります。
人間関係・自己像・気分の不安定さ
- 人間関係:関係の初めは相手を理想化しますが、相手が十分に気づかってくれないと感じると急に幻滅し、相手をけなしたり怒ったりします。
- 自己像:目標、価値観、意見、職業、友人などを突然変えることがあります。
- 気分:気分の変化は通常数時間で、数日以上続くことはまれです。拒絶や批判のサインにとても敏感なことが関係している可能性があります。
衝動的な行動と自傷
衝動的に行動し、賭け事、安全でない性行為、むちゃ食い、浪費、危険な運転などに走ることがあります。
- 自殺企図、自殺のほのめかし、自分を傷つける行為(自傷)などがよくみられます。
- その多くは死ぬことを意図したものではありませんが、自殺のリスクは一般の人より約40倍高く、約8〜10%が自殺で亡くなります。
- 強いストレスを受けると、一時的に疑い深い考えや、現実感がなくなるような解離の症状が出ることがあります。
境界性パーソナリティ障害の原因
- 遺伝的な要因:生活上のストレスにうまく反応できない遺伝的な傾向がある人もいます。家族内で受け継がれる傾向もあります。
- 幼少期のつらい体験:多くの人が、子どもの頃に身体的・性的な虐待を受けたり、養育者と離れたり、親を亡くしたりしています。
- 愛着の不安定さ:養育者への愛着が不安定であることが、症状に関わっています。
境界性パーソナリティ障害の診断
診断は、米国精神医学会の診断基準(DSM-5-TR)にもとづいて行われます。次のうち5つ以上にあてはまり、成人期の早い時期までに始まっていることが必要です。
- 見捨てられることを避けようと必死に努力する
- 相手の理想化とけなしの間を揺れ動く、不安定で激しい人間関係
- 自己像や自己感覚が頻繁に変わる
- 自分を傷つけるおそれのある2つ以上の領域での衝動的な行動
- 自殺に関連する行動や自傷をくり返す
- 気分が急に変わる
- 慢性的な空虚感
- 不適切で強い怒り、または怒りのコントロールの問題
- ストレスによる一時的な疑い深さや、重い解離症状
治療の中心は精神療法
- 弁証法的行動療法:週1回の個人セッションとグループセッションを組み合わせ、治療者が電話でも対応して、ストレスへのより適切な対処法を身につけるのを支えます。
- STEPPS:週1回のグループセッションを20週間行い、感情のコントロールや自分自身の世話のしかたなどを学びます。
- メンタライゼーションに基づく治療:自分と他者の心の状態を考え、理解する力を育て、感情を調節できるよう支えます。
- 転移焦点化精神療法・スキーマ療法・支持的精神療法:自分と他者についての、より安定した現実的な感覚を育てることなどを目指します。
薬物療法と経過
薬は、特定の症状を和らげるために必要に応じて控えめに使われます。抑うつや不安には抗うつ薬(SSRI、ただし効果は小さい)、気分の変動や衝動性には気分安定薬、怒りやストレスに関連する考えのゆがみには新しい抗精神病薬が使われることがあります。
大半の人では、時間とともに症状が大きく軽くなり、消えることもよくあります。ただし、改善しても、安定した人間関係や仕事を保てるようになるとは限らないため、日常生活をよりよく送れるよう支援を続けることが大切です。
出典によって異なる点:精神療法はどこまで効くか
MSDマニュアル家庭版は、特定の精神療法が自殺に関連する行動を減らし、抑うつを和らげ、日常生活を支えるとしています。
コクランのシステマティックレビュー(Storebøら、2020年)は、75件のランダム化比較試験(4,507人)をまとめました。精神療法は通常の治療と比べて、境界性パーソナリティ障害の症状の重さを臨床的に意味のある程度に減らしました(確実性は中程度)。自傷、自殺に関連する行動、社会生活の機能も改善しましたが、これらの根拠の確実性は低く、改善の大きさも臨床的に意味があるとされる水準には届いていませんでした。研究の多くは弁証法的行動療法とメンタライゼーションに基づく治療でした。
精神療法が症状の改善に役立つことは比較的はっきりしていますが、自傷や自殺に関連する行動への効果については、さらに研究が必要と考えられます。
境界性パーソナリティ障害のポイント
- 見捨てられ不安、不安定な人間関係・自己像・気分、衝動的な行動が特徴です。
- 米国では約3〜6%にみられ、女性に多く診断されます。
- 遺伝的な要因や幼少期のつらい体験が関わっている可能性があります。
- DSM-5-TRの9項目のうち5つ以上で診断されます。
- 治療の中心は弁証法的行動療法などの精神療法で、薬は補助的に使われます。
- 大半の人で、時間とともに症状が大きく軽くなります。
境界性パーソナリティ障害についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
境界性パーソナリティ障害の特徴は何ですか?
見捨てられることへの強い恐れ、不安定で激しい人間関係、自己像や気分の急な変化、衝動的な行動、自傷などが特徴です。
境界性パーソナリティ障害の原因は何ですか?
遺伝的な要因と環境要因が関わっている可能性があります。幼少期の虐待や養育者との離別などのつらい体験、愛着の不安定さも関係しています。
境界性パーソナリティ障害は治りますか?
大半の人で、時間とともに症状が大きく軽くなり、消えることもよくあります。精神療法がその助けになります。
どんな治療がありますか?
中心は精神療法で、弁証法的行動療法、STEPPS、メンタライゼーションに基づく治療などがあります。薬は特定の症状を和らげるために控えめに使われます。
薬だけで治療できますか?
主な治療は精神療法です。薬は抑うつ、不安、気分の変動などの特定の症状に対して補助的に使われ、抗うつ薬の効果は小さいとされています。
家族はどう関わればよいですか?
本人が自殺をほのめかしたり自傷したりする場合は、ひとりで抱え込まず医療機関に相談してください。治療では、本人が他者と共感をもって関われるよう支援します。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · ボーダーラインパーソナリティ症
- Storebø OJ, et al. Psychological therapies for people with borderline personality disorder. Cochrane Database Syst Rev. 2020
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
