インスリンの働き
インスリンは、膵臓のランゲルハンス島(膵島)にあるβ細胞から分泌されるホルモンです。
食後に血糖値が上がると、膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンが細胞の受容体に結合すると、細胞は血液中のブドウ糖を取り込み、エネルギー源として使います。余ったブドウ糖は、インスリンの働きでグリコーゲンなどとして蓄えられます。このようにして血糖値が下がります。血糖値を下げる働きをするホルモンは、インスリンだけです。
インスリン抵抗性とは?
インスリン抵抗性とは、インスリンの働きが妨げられ、インスリンが効きにくくなった状態です。インスリンの効きやすさは「インスリン感受性」とも呼ばれ、インスリン抵抗性があるときは、この感受性が低くなっています。
インスリンの働きが低下して血糖値が高くなる病気が糖尿病です。高血糖の状態が続くと、糖尿病網膜症、腎症、神経障害といった合併症を引き起こします。
内臓脂肪との関係
脂肪組織からは、アディポサイトカインなど、インスリンの働きを妨げる物質が分泌されます。
有酸素運動をすると、内臓の脂肪細胞が小さくなって肥満が改善し、こうした物質の分泌が少なくなります。その結果、筋肉や肝臓が糖を処理する力がよくなります。
2型糖尿病との関係
「令和元年国民健康・栄養調査」では、糖尿病が強く疑われる人の割合は男性19.7%、女性10.8%でした。男女あわせて約1,900万人にのぼると推計されています。
現在急増している糖尿病は2型糖尿病で、全体の約9割を占めます。主な原因は、食べすぎ、運動不足、ストレスなどの生活習慣です。2型糖尿病で代謝の障害が中等度以下の場合(血糖値250〜300mg/dL程度以下、HbA1c 9.0%未満)は、まず食事療法と運動療法を行います。詳しくは糖尿病のガイドもご覧ください。
運動でインスリン抵抗性が改善する仕組み
運動をすると、使われた筋肉が糖や遊離脂肪酸をよく利用するようになります。その結果、次のような効果が得られます。
- 血糖コントロールの改善
- インスリン感受性の増加(インスリンが効きやすくなる)
- 脂質代謝の改善
- 血圧の低下、心肺機能の改善
有酸素運動とレジスタンス運動は、どちらか一方だけよりも、組み合わせるほうが効果的だと報告されています。
運動の目安
- 有酸素運動:速歩、ジョギング、水泳など大きな筋肉を使う全身運動を、中くらいの強さ(「ややきつい」程度)で週150分以上、週3回以上、1回20分以上行います。
- 間隔:運動による糖代謝の改善は12〜72時間続くため、運動しない日が2日以上続かないようにします。
- 歩く場合:1回15〜30分を1日2回、1日約10,000歩が適当とされています。
- レジスタンス運動:腹筋、ダンベル、腕立て伏せ、スクワットなどを、連続しない日に週2〜3回行います。
- タイミング:いつでもかまいませんが、特に食後1時間ごろに行うと食後の血糖の状態が改善します。
運動を始めるときの注意点
- まずメディカルチェックを受け、運動してよいかを確認します。
- 運動の前後に5分ほど準備運動と整理運動を行います。
- 空腹時血糖が250mg/dL以上、または尿ケトン体が陽性の人は、運動で状態が悪くなることがあるため注意します。
- インスリンや飲み薬(特にスルホニル尿素薬)で治療中の人は低血糖になりやすいため、運動量が多いときは補食をとるなどの注意が必要です。
- 水中運動はひざへの負担が少なく、肥満がある人にも安全で効果的です。高齢の人には、片足立ちなどのバランス運動も役立ちます。
食事で気をつけること
- 年齢、目標体重、活動量にあわせて、適切な量のエネルギーをとる
- 主食・主菜・副菜を組み合わせ、栄養のバランスを整える
- 玄米、大麦、野菜、豆類、きのこ、海藻など食物繊維の多い食品をとる
- 白米やうどんを、血糖値が上がりにくい(GIの低い)玄米やそばに置き換える
- 肉や乳製品に多い飽和脂肪酸をとりすぎず、魚に多いn-3系脂肪酸をとる
- 1日3食を規則正しくとり、まとめ食いを避け、ゆっくり食べる

出典によって異なる点:特別な食事は必要か
e-ヘルスネットの「糖尿病の食事」は、糖尿病の食事は適量でバランスのよい「健康的な食事」であり、特別な食事が必要なわけではないとしています。肥満がある場合など一部で制限が必要なことはあっても、「より良く食べる」意識を大切にするよう勧めています。
e-ヘルスネットの「糖尿病を改善するための運動」は、運動については頻度、強さ、時間、タイミングまで具体的な数字を示し、運動しない日が2日以上続かないようにするなど、細かな目安を示しています。
つまり、食事は特別なものではなくバランスが基本である一方、運動は目安を意識して続けることが、インスリンの効きをよくするうえで大切だと考えられます。
インスリン抵抗性のポイント
- インスリン抵抗性は、インスリンが効きにくくなった状態です。
- 脂肪組織から出る物質が、インスリンの働きを妨げます。
- 運動で筋肉が糖を使うようになり、インスリン感受性がよくなります。
- 有酸素運動を週150分以上、レジスタンス運動を週2〜3回が目安です。
- 食事は、適量でバランスのよい健康的な食事が基本です。
- 薬で治療中の人は、運動による低血糖に注意します。
インスリン抵抗性についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
インスリン抵抗性とは何ですか?
インスリンの働きが妨げられ、インスリンが効きにくくなった状態です。インスリン感受性が低い状態ともいえます。
インスリンはどんな働きをしますか?
細胞に血液中のブドウ糖を取り込ませ、血糖値を下げます。血糖値を下げるホルモンはインスリンだけです。
内臓脂肪と関係がありますか?
脂肪組織からはインスリンの働きを妨げる物質が分泌されます。有酸素運動で内臓の脂肪細胞が小さくなると、その分泌が少なくなります。
どのくらい運動すればよいですか?
中くらいの強さの有酸素運動を週150分以上、週3回以上行い、連続しない日に週2〜3回のレジスタンス運動を組み合わせるのが目安です。
食後に運動するとよいのですか?
いつ行ってもかまいませんが、特に食後1時間ごろに行うと、食後の血糖の状態が改善します。
特別な食事が必要ですか?
特別な食事が必要なわけではありません。適量でバランスのよい健康的な食事が基本です。
出典
- 厚生労働省 e-ヘルスネット · インスリン抵抗性(キーワード)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット · インスリン
- 厚生労働省 e-ヘルスネット · 糖尿病を改善するための運動
- 厚生労働省 e-ヘルスネット · 糖尿病の食事
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

