糖尿病とは?血糖とインスリンの仕組み
私たちが食べたご飯やパン、めん類、砂糖などの炭水化物は、消化されて最終的にブドウ糖(グルコース)になり、血液にのって全身の細胞に届けられ、体を動かすエネルギーになります。「血糖」とは、この血液中のブドウ糖のことです。体は脂肪やたんぱく質からもブドウ糖をつくることができます。
ブドウ糖を血液から細胞の中へ運び込む役目をしているのが、胃の裏側にある膵臓から出るホルモン、インスリンです。血糖が上がると膵臓がインスリンを出し、細胞に入ったブドウ糖はすぐ使われるか、グリコーゲンや脂肪として蓄えられます。
健康な人では、血糖値は食後に上がっても約2時間で食前の値に戻り、おおむね70〜110mg/dLの狭い範囲に保たれています。インスリンが十分につくられない、あるいは細胞がインスリンに反応しにくくなる(インスリン抵抗性)と、血液中のブドウ糖は増えすぎる一方で細胞の中は不足し、これが糖尿病のさまざまな症状や合併症につながります。
糖尿病の種類:1型・2型と予備群
- 前糖尿病(予備群):血糖値が正常より高いものの、糖尿病には至っていない状態です。空腹時血糖が100〜125mg/dL、またはブドウ糖負荷試験の2時間値が140〜199mg/dLが目安です。将来の糖尿病や心臓病のリスクが高く、食事と運動で体重を5〜10%減らすと、糖尿病になるリスクが大きく下がります。
- 1型糖尿病:自分の免疫が膵臓のインスリンをつくる細胞を攻撃し、その大部分が壊れてしまうタイプです。インスリンがほとんど、またはまったくつくられなくなります。多くは30歳前に発症しますが、それ以降に始まることもあります。小児期や思春期のウイルス感染症や栄養の要因などが引き金になり、遺伝的な素因が影響を受けやすさに関わると考えられています。
- 2型糖尿病:インスリンはつくられているものの、体がその働きに抵抗するため、必要な量をまかなえなくなるタイプです。進むにつれて膵臓のインスリンをつくる力も弱まっていきます。通常は30歳以上で発症し、年齢とともに増えますが、近年は子どもや若者でも珍しくなくなっています。
このほか、ステロイド薬の使用やクッシング症候群、妊娠(妊娠糖尿病)、成長ホルモンが過剰になる先端巨大症、膵炎など膵臓を傷つける病気が原因で起こる糖尿病もあります。
2型糖尿病の原因と危険因子
2型糖尿病の最大の危険因子は肥満です。2型糖尿病のある人の80〜90%が過体重または肥満で、体に脂肪が多いとインスリンが効きにくくなり、血糖を正常に保つためにより多くのインスリンが必要になります。
家族に糖尿病の人がいると発症しやすく、アジア系を含む特定の人種的・民族的背景をもつ人でもリスクが高いことがわかっています。次のような人は、症状がなくても定期的に検査を受けることがすすめられています。
- 35歳以上の人
- 過体重・肥満の人、体を動かす習慣が少ない人
- 家族に糖尿病の人がいる人、前糖尿病と言われた人
- 妊娠中に糖尿病になった人、4,000gを超える赤ちゃんを出産した人
- 高血圧、コレステロールなど脂質の異常、心臓や血管の病気、脂肪性肝疾患、多嚢胞性卵巣症候群がある人
- HIV感染症がある人
これらに当てはまる場合は、少なくとも3年に1回は検査を受け、結果が境界域なら少なくとも年1回に増やすことがすすめられています。
糖尿病の初期症状
糖尿病は、とくに早い段階では症状がないことが少なくありません。血糖値がかなり高くなると、1型でも2型でも似た症状が現れます。
- のどが渇く・尿が増える:血糖値が約160〜180mg/dLを超えると、ブドウ糖が尿に出てきます。腎臓はそれを薄めるために水分を余分に出すので、尿の量と回数が増え、その分強いのどの渇きを感じます。
- 空腹感が強い・体重が減る:尿と一緒に多くのカロリーが失われるため、減量していないのにやせることがあり、その埋め合わせとして強い空腹を感じます。
- そのほか:目のかすみ、眠気、吐き気、運動したときの疲れやすさ
1型糖尿病は、しばしば急に、はっきりした症状で始まります。2型糖尿病では、診断されるまで何年も、ときに何十年も症状がないか、あってもごく軽いことがあります。尿の増加やのどの渇きは最初は軽く、数週間から数か月かけて少しずつ強まり、やがて強い疲れ、目のかすみ、脱水が目立ってきます。
糖尿病の合併症と、すぐに受診が必要な状態
高い血糖が長く続くと、全身の血管が傷ついて狭くなり、血液の流れが悪くなります。とくに影響を受けやすいのは次の臓器です。
- 脳:脳卒中
- 目:糖尿病網膜症による視力の低下や失明
- 心臓:心臓発作や心不全
- 腎臓:糖尿病性腎症による慢性腎臓病
- 神経:糖尿病性神経障害による、主に足や脚の感覚の低下
高血糖は免疫の働きも弱めるため、細菌やカビ(真菌)による感染症にもかかりやすくなります。
急に命に関わる状態もあります。1型糖尿病では、体の中に酸がたまる「糖尿病性ケトアシドーシス」が急に起こることがあり、強いのどの渇きや頻尿に加えて、吐き気、嘔吐、だるさ、腹痛(とくに子ども)、深く速い呼吸、果物や除光液のような息のにおいがみられます。2型糖尿病では、感染症や薬などをきっかけに血糖値が極端に上がり、ひどい脱水、意識の混乱、眠気、けいれんを起こす「高浸透圧高血糖状態」があります。どちらも昏睡や死亡につながりうる緊急事態のため、こうした症状があればすぐに受診してください。
糖尿病の検査と診断の数値(血糖値・HbA1c)
糖尿病は、血液中のブドウ糖の値(血糖値)を測って診断します。のどの渇き、尿の増加、強い空腹感などの症状がある人のほか、感染症をくり返す、足に潰瘍ができるなど、合併症が疑われる場合にも測定します。主な検査と基準は次のとおりです。
- 空腹時血糖:ひと晩食事をとらずに採血し、126mg/dL以上なら糖尿病と診断できます。
- 随時血糖:食事に関係なく測った値が200mg/dLを超える場合も、糖尿病と診断できます。
- HbA1c(ヘモグロビンA1c):赤血球のヘモグロビンにブドウ糖が結びついた割合で、その時点ではなく、それまでの長い期間の血糖の傾向を表します。認定された検査施設で測った値が6.5%以上なら糖尿病、5.7〜6.4%なら前糖尿病の範囲とされています。
- 経口ブドウ糖負荷試験:空腹時に採血した後、ブドウ糖の多い液体を飲み、2〜3時間後に再び血糖値を測ります。妊娠糖尿病を調べるときなどに行われます。
日本の診断では、HbA1cだけでなく血糖値の基準も満たす必要があるとされています。治療中の目標としては、食前の血糖80〜130mg/dL、食後2時間で180mg/dL未満、HbA1c 7%未満が一般的に挙げられていますが、低血糖を避けたい高齢者などでは目標が調整されます。
糖尿病の治療:食事・運動・減量と薬
治療の基本は、食事、運動、そして病気についての学習で、過体重の場合は減量も重要です。血糖値の上がり方が軽い2型糖尿病では、生活習慣の見直しだけで治療を始めることもあります。生活習慣だけでは十分に下がらない場合や、血糖値の異常が大きい場合は薬が必要です。1型糖尿病では、診断の時点からインスリン注射が欠かせません。
- 食事:栄養バランスのよい食事で健康的な体重を保つことが基本です。砂糖などの単純な糖や加工食品を控え、食物繊維を増やし、炭水化物が多く脂肪(とくに飽和脂肪酸)も多い食べものを控えます。血糖値に直接影響するのは、食事に含まれる炭水化物の量です。インスリンを使っている人は、低血糖を防ぐため食事の間隔をあけすぎないようにし、栄養士と相談して炭水化物の量とインスリンの量を合わせる方法(カーボカウント)を学ぶこともあります。
- 運動:週に150分以上を3日以上に分けて行う適度な運動は、体重の管理と血糖値の改善に役立ちます。運動中は血糖が下がるため、長い運動では少量の糖分をとる、インスリンを減らすなどして低血糖に注意します。
- 減量:2型糖尿病では、健康的な体重を保つことで薬が不要になったり、薬を始める時期を遅らせたりできることがあります。
- そのほか:禁煙し、お酒は女性で1日1杯、男性で2杯までにとどめます。
2型糖尿病では飲み薬がよく使われ、必要に応じてインスリンやほかの注射薬を使います。血糖をできるだけ正常に近づけておくことで、合併症が起こる可能性を下げられます。

2型糖尿病の予防:生活習慣でリスクを下げる
1型糖尿病を完全に防ぐ方法はまだありません。家族に1型糖尿病の人がいる場合、抗体の検査で早い段階を見つけ、症状が出るのを遅らせる薬(テプリズマブ)が検討されることがあります。
一方、2型糖尿病は生活習慣を変えることで予防が可能です。過体重の人が体重を7%ほど減らし、1日30分歩くなど体を動かす量を増やすと、糖尿病になるリスクは半分以上下がるとされています。耐糖能異常がある人では、糖尿病の治療薬であるメトホルミンもリスクを下げる可能性があります。
高齢になるほど糖尿病は多くなり、2型糖尿病では本人が気づかないまま進んでいることもあります。血糖値は通常の健康診断でもよく測られるので、境界域と言われたら食事や運動を見直すことが予防の第一歩になります。

出典によって異なる点:予防効果の数字と診断基準
予防効果の示し方:MSDマニュアル家庭版は、過体重の人が体重を約7%減らして運動量を増やすと、糖尿病のリスクが50%以上下がると説明しています。米国の糖尿病予防プログラム(DPP、2002年)では、血糖値が高めの3,234人を平均2.8年追跡しました。生活習慣の改善(7%以上の減量と週150分以上の運動)で発症は58%減り、メトホルミンでは31%減で、生活習慣の改善の方が明らかに効果的でした。3年間で1人の発症を防ぐには、生活習慣プログラムなら6.9人、メトホルミンなら13.9人が取り組む必要がありました。
HbA1cの扱い:米国の基準ではHbA1c 6.5%以上で糖尿病と診断できるのに対し、日本の診断ではHbA1cに加えて血糖値の基準も満たす必要があるとされています。検査結果の読み方は国によって異なるため、数値の意味は担当の医師に確認してください。
糖尿病のポイント
- 糖尿病は、インスリンが足りない、または効きにくくなって、血糖値が高い状態が続く病気です。
- 1型は免疫が膵臓の細胞を壊すタイプ、2型はインスリンが効きにくくなるタイプで、2型の最大の危険因子は肥満です。
- のどの渇き、尿の増加、意図しない体重減少が代表的な症状ですが、2型では何年も症状がないことがあります。
- 空腹時血糖126mg/dL以上、随時血糖200mg/dL超、HbA1c 6.5%以上などが診断の目安です(日本では血糖値の基準も必要)。
- 治療の基本は食事・運動・学習・減量で、必要に応じて飲み薬やインスリンを使います。
- 2型糖尿病は、約7%の減量と運動で発症リスクを半分以上下げられます。
糖尿病についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
糖尿病の初期症状は何ですか?
のどの渇き、尿の量や回数の増加、強い空腹感、意図しない体重減少などです。ただし、とくに2型糖尿病では何年も症状がないことがあるため、危険因子がある人は定期的に検査を受けることが大切です。
血糖値がいくつなら糖尿病ですか?
ひと晩食事をとらずに測った空腹時血糖が126mg/dL以上、または食事に関係なく測った血糖が200mg/dLを超えると、糖尿病と診断できます。健康な人の血糖値はおおむね70〜110mg/dLです。
HbA1cとは何ですか?
赤血球のヘモグロビンにブドウ糖が結びついた割合で、それまでの長い期間の血糖の傾向を表します。6.5%以上で糖尿病、5.7〜6.4%で前糖尿病の範囲とされますが、日本の診断では血糖値の基準も満たす必要があります。
1型と2型はどう違いますか?
1型は免疫が膵臓のインスリンをつくる細胞を壊し、インスリンがほとんどつくられなくなるタイプで、診断時から薬(インスリン)が必要です。2型はインスリンが効きにくくなるタイプで、肥満が最大の危険因子です。
糖尿病の食事で気をつけることは?
砂糖などの単純な糖や加工食品を控え、食物繊維を増やし、炭水化物と脂肪がともに多い食べものを控えます。血糖値に直接影響するのは炭水化物の量です。自分に合った食事プランは栄養士と相談して作るのが役立ちます。
糖尿病は予防できますか?
1型を完全に防ぐ方法はまだありませんが、2型は生活習慣で予防できます。米国の研究では、7%以上の減量と週150分以上の運動で発症が58%減りました。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 糖尿病(DM)
- Diabetes Prevention Program Research Group. Reduction in the incidence of type 2 diabetes with lifestyle intervention or metformin. N Engl J Med. 2002
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

