脳梗塞の後遺症とは?
脳梗塞(虚血性脳卒中)は、脳の動脈が詰まって血液と酸素が届かなくなり、その先の脳組織が壊死してしまう病気です。多くの場合、症状は突然始まり、数分から数時間のうちに脳の損傷が進みます。その後、大半は状態が落ち着きます。
どのような症状が残るかは、どの動脈が詰まり、脳のどの部分が傷ついたかによって異なります。脳の各部分はそれぞれ特定の働きを担っているため、損傷を受けた場所によって失われる機能が変わります。
脳梗塞の主な後遺症
- 運動と感覚:左右どちらかの腕や脚、または半身の筋力低下、まひ、感覚の異常。多くの場合、脚より腕のほうが動きの制限が大きく残ります。
- 見え方:片目が見えにくい、視野が欠ける、物が二重に見える。
- バランス:めまい、手足の動きをうまく協調させにくい。
- 言葉:話し方が不明瞭になる、言葉が出にくい、理解しにくい。
- 排尿:尿失禁。
- 気分と感情:抑うつ、感情をコントロールしにくくなり、場にそぐわない場面で急に泣いたり笑ったりする。
- けいれん発作:発症から数カ月〜数年たってから起こることもあります。
言葉の後遺症:失語症と構音障害
脳卒中を経験した人の約3分の1に、言葉の障害である失語症がみられるとされています。失語症は、言葉を理解し、考え、言葉を探す働きそのものが障害される状態です。
- 運動性失語(ブローカ失語):言われたことは理解でき、何を言いたいかも分かっているのに、言葉をうまく出せません。苦労しながらゆっくり話します。
- 感覚性失語(ウェルニッケ失語):話された言葉や書かれた言葉の理解が難しくなります。よどみなく話せても、内容がまとまらないことがあります。
- 失名詞:物の名前が出てこない状態で、失語症のほとんどの人にみられます。
一方、構音障害は、声や音を出すための筋肉や神経の障害によって、発音が不明瞭になる状態です。失語症とは原因が異なるため、評価の際には区別されます。
飲み込みの障害と、その他の合併症
- 飲み込みにくさ:十分に食べられず、栄養不良や脱水になることがあります。
- 誤嚥性肺炎:食べもの、唾液、嘔吐物が肺に入ると起こることがあります。
- 長く同じ姿勢でいることによる問題:床ずれ、筋肉の減少、体力の低下、尿路感染症、関節が固まる拘縮など。
- 脚の血栓:脚を動かせないと深部静脈血栓症が起こり、血栓が肺に詰まる肺塞栓症につながることがあります。
- 睡眠の問題:眠りにくくなることもあります。
そのため、食事や飲みものを始める前に飲み込みに問題がないかを確認します。問題があれば、療法士が安全に飲み込む方法を指導し、必要に応じてチューブで栄養をとることもあります。
脳卒中のあとの抑うつ
脳卒中によって生じたさまざまな喪失や不自由が原因で、抑うつ状態になる人もいます。脳卒中は気分の変動、特に抑うつの原因になりやすいことが知られています。
本人が落ち込んでいるように見えるときは、家族や友人が医師に伝えることが大切です。抑うつは、薬と精神療法で治療することができます。
回復の見通し
- 体の片側にまひがある人の約50%と、それより症状が軽い人の大半は、退院までに一部の機能を取り戻し、最終的には日常の基本的な動作を自分で行えるようになります。
- 脳梗塞を起こした人の約10%は、元の機能をほぼ完全に取り戻します。
- 若い人や、早い時期から改善が始まった人は、完全に回復する可能性が高くなります。
- 一方で、動く、話す、食べるといったことが難しいまま残る人もいます。
- 発症から12カ月たっても残っている障害の大半は、その後も続くものとなります。
言葉のリハビリ(言語療法)
脳卒中による失語症には、言語聴覚士による言語療法が役立ちます。言語療法は、本人が参加できるようになり次第、できるだけ早く始めます。早く始めるほど効果的ですが、遅れて始めた場合でも役に立ちます。
- 失語症の回復の大部分は最初の3カ月に起こりますが、最長で1年ほどは、いくらかの回復が続くことがあります。
- 8歳未満の子どもは、脳の損傷が重くても言葉の力を取り戻すことがよくあります。
- 基本的な言葉の力を取り戻せない場合は、よく使う言葉や日常の動作を絵や記号で示したボード、キーボードと画面を備えた機器など、意思を伝える道具を使う方法があります。
家族や介護する人がいらだちを感じることもありますが、失語症は体の病気であり、本人にはほとんどコントロールできないことを心に留めておくと助けになります。
再発を防ぐために
最初の脳卒中から回復した人の約25%で、5年以内に再び脳卒中が起こります。再発すると、機能がさらに損なわれます。
- 高血圧、糖尿病、喫煙、過度の飲酒、コレステロール高値、肥満といった危険因子をコントロールします。
- 医師から処方された、血液を固まりにくくする薬やコレステロールを下げる薬は、自己判断でやめずに続けます。
- 心房細動など、ほかの病気があればその治療も続けます。
出典によって異なる点:言語療法はどのくらい続けるべきか
MSDマニュアル家庭版は、言語療法は始めるのが早いほど効果的で、遅れて始めても役に立つとし、失語症の回復の大部分は最初の3カ月に起こると説明しています。療法の量や期間についての具体的な目安は示していません。
コクランのシステマティックレビュー(Bradyら、2016年)は、脳卒中後の失語症に対する言語療法の57件のランダム化比較試験(3,002人)をまとめました。言語療法を受けた人は、受けなかった人に比べて、日常のコミュニケーション、読む・書く力、言葉で表現する力が改善しました。ただし、その後の追跡時点では、はっきりした差は確認されませんでした(比較できた人数は少数でした)。また、高い頻度・多い量・長い期間の言語療法のほうが日常のコミュニケーションの改善が大きい一方で、途中でやめる人も多くなりました。
つまり、言語療法には効果が期待でき、量や期間を確保するほど有利な可能性がありますが、無理なく続けられる計画を担当の言語聴覚士と相談することが大切です。
脳梗塞の後遺症のポイント
- 後遺症は、脳のどの部分が傷ついたかによって異なります。
- 片側のまひ、感覚の異常、言葉の障害、飲み込みの障害、抑うつなどが残ることがあります。
- 脳卒中の約3分の1に失語症がみられ、言語療法が役立ちます。
- 12カ月たっても残る障害の大半は、その後も続きます。リハビリは早めに始めましょう。
- 回復した人の約25%で5年以内に再発するため、危険因子のコントロールが重要です。
- 新たな症状が突然現れたら、すぐに119番(スペインでは112番)に連絡してください。
脳梗塞の後遺症についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
脳梗塞の後遺症にはどんなものがありますか?
片側の手足のまひや感覚の異常、見え方の障害、言葉の障害、飲み込みの障害、尿失禁、抑うつなどがあります。どの症状が残るかは、脳の傷ついた部位によって異なります。
後遺症はどのくらい回復しますか?
片側にまひがある人の約50%は、最終的に日常の基本的な動作を自分で行えるようになり、約10%はほぼ完全に回復します。12カ月たっても残る障害の大半はその後も続きます。
失語症と構音障害はどう違いますか?
失語症は言葉を理解したり探したりする働きの障害で、構音障害は発音のための筋肉や神経の障害で話し方が不明瞭になる状態です。
言語療法はいつ始めればよいですか?
本人が参加できるようになり次第、できるだけ早く始めます。早いほど効果的ですが、遅れて始めた場合でも役に立ちます。
脳梗塞のあと気分が落ち込むのはよくあることですか?
はい。脳卒中は抑うつの原因になりやすく、薬と精神療法で治療できます。落ち込んでいる様子があれば医師に伝えましょう。
脳梗塞の再発を防ぐにはどうすればよいですか?
高血圧、糖尿病、喫煙、過度の飲酒、コレステロール高値、肥満などの危険因子をコントロールし、処方された薬を自己判断でやめないことが大切です。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 虚血性脳卒中
- MSDマニュアル家庭版 · 失語
- Brady MC, et al. Speech and language therapy for aphasia following stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2016
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

