ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)とは?
胃の中は強い酸性の胃液で満たされていて、多くの細菌は生きていけません。ピロリ菌は、胃の内側を守っている粘液の層の中で増える細菌です。
ピロリ菌は、アンモニアをつくり出して周りの胃酸を中和し、自分を守っています。さらにこのアンモニアは、ピロリ菌が粘液の層を壊して入り込むのも助けています。
ピロリ菌の感染はとても多く、年齢とともに増えます。黒人、ヒスパニック系、アジア系の人に多くみられます。
ピロリ菌の感染経路
ピロリ菌は、便、唾液、歯垢の中にも見つかり、人から人へうつる可能性があります。
- 手を介した感染:感染している人が、排便後に手を十分に洗わなかった場合などにうつります。
- 濃厚接触:キスなどの濃厚な接触でも広がることがあります。
- 集団での感染:そのため、家族の中や、介護施設などでいっしょに暮らしている人のあいだで感染が広がる傾向があります。
日ごろから、トイレの後や食事の前にしっかり手を洗うことが大切です。
ピロリ菌が引き起こす病気
- 胃炎:ピロリ菌に感染しているほぼすべての人に、胃の炎症がみられます。炎症は胃全体に広がっていることもあれば、胃の出口に近い部分だけのこともあります。
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍:ピロリ菌は、胃酸の分泌を増やし、胃の防御の働きを弱め、毒素をつくることで、潰瘍ができる一因になります。
- 胃がん:ピロリ菌の感染が長く続くと、胃がんのリスクが高まります。
ピロリ菌は、胃炎と消化性潰瘍の原因として世界で最もよくみられるものです。
ピロリ菌感染の症状
ピロリ菌に感染して胃炎があっても、多くの人には潰瘍などの症状や合併症はみられません。症状がないまま感染が続いていることも少なくありません。
- 胃炎の症状:消化不良(胃もたれ)、みぞおちの痛みや不快感
- 潰瘍の症状:潰瘍がある場合は、みぞおちの痛みなど、ほかの原因の潰瘍と同じような症状が出ます
胃の不調が続く場合や、家族にピロリ菌の感染や胃がんの人がいる場合は、検査について医師に相談してみるとよいでしょう。
ピロリ菌の検査
- 呼気試験:吐いた息を調べて、ピロリ菌がいるかどうかを確かめます。
- 便検査:便のサンプルでピロリ菌を調べます。
- 上部消化管内視鏡検査:口から細い管状の内視鏡を入れて胃の中を観察し、胃の粘膜の一部を採って(生検)、いくつかの方法でピロリ菌の有無を調べます。
内視鏡検査では、ピロリ菌の有無だけでなく、胃炎や潰瘍、がんなどがないかを直接確かめることができます。

ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌の治療では、胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬)と、2種類の抗菌薬を組み合わせて飲みます。ビスマスを含む薬が加えられることもあります。
- プロトンポンプ阻害薬:胃酸の分泌を減らします。
- 抗菌薬:アモキシシリン、クラリスロマイシン、メトロニダゾール、テトラサイクリンなどから2種類が使われます。
- ビスマスを含む薬:ときに加えられます。
どの組み合わせを使うかは、医師が判断します。
除菌できたかの確認と、除菌後の見通し
- 確認の検査:治療が終わってから約4週間後に、呼気試験、便検査、または内視鏡検査をくり返して、除菌が成功したかを確かめます。
- 除菌できなかった場合:ピロリ菌が残っていれば、治療をくり返します。
除菌の効果は大きく、完全に除菌できた場合、消化性潰瘍が3年以内に再発する可能性は10%未満です。一方、除菌できなかった場合は、3年後に再発する可能性が50%以上になります。また、ほかの治療で治らなかった胃潰瘍が、ピロリ菌の治療で治ることもあります。
除菌治療の副作用
除菌治療の薬は、多くの人にとって飲み続けやすいものですが、次のような副作用が起こることがあります。
- プロトンポンプ阻害薬:多くの場合、副作用はほとんどないか軽いものですが、下痢、便秘、頭痛が起こることがあります。
- 抗菌薬:いずれも味覚が変わったり吐き気が出たりすることがあり、アモキシシリン、クラリスロマイシン、テトラサイクリンでは下痢が起こることがあります。
- ビスマスを含む薬:便秘や、舌や便が黒くなることがあります。
副作用が気になるときは、自己判断で薬をやめずに、医師や薬剤師に相談しましょう。除菌できなかった場合は治療をくり返すことになるため、決められたとおりに飲むことが大切です。

出典によって異なる点:除菌で胃がんは防げるか
MSDマニュアル家庭版は、ピロリ菌の長期の感染が胃がんのリスクを高めると説明し、除菌の効果としては主に消化性潰瘍の再発予防を挙げています。
コクランのシステマティックレビュー(Fordら、2020年)は、症状のないピロリ菌感染者を対象に、除菌治療と偽薬または治療なしを比べた7件のランダム化試験(8,323人)をまとめました。除菌治療を受けた人では、その後の胃がんの発生が約半分に減り(リスク比0.54)、胃がんによる死亡も減りました(中程度の確実性)。一方、すべての原因による死亡には差がみられませんでした。7件のうち6件はアジアの人々を対象にした試験でした。
除菌が胃がんの予防につながることは研究で示されつつありますが、試験の多くはアジアで行われたもので、ほかの地域への当てはまり方には注意が必要です。検査や除菌を受けるかどうかは、医師と相談して決めましょう。
ピロリ菌のポイント
- ピロリ菌は胃の粘膜に住みつく細菌で、胃炎と消化性潰瘍の原因として世界で最も多いものです。
- 便、唾液、歯垢を介して人から人へうつり、家族内で広がる傾向があります。
- 多くは症状がありませんが、胃もたれやみぞおちの痛みが出ることがあり、長く感染が続くと胃がんのリスクが高まります。
- 呼気試験、便検査、内視鏡検査で感染を調べます。
- 胃酸を抑える薬と2種類の抗菌薬で除菌し、約4週間後に除菌できたかを確認します。
- 除菌すると潰瘍の再発が大きく減り、研究では胃がんの発生も減ることが示されています。
ピロリ菌についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
ピロリ菌はどうやって感染しますか?
便、唾液、歯垢の中にいるピロリ菌が、手を介したり、キスなどの濃厚な接触によったりして人から人へうつります。そのため、家族の中や介護施設などで広がる傾向があります。
ピロリ菌に感染すると、どんな症状が出ますか?
多くの人は症状がありません。症状がある場合は、胃もたれ、みぞおちの痛みや不快感などの胃炎の症状や、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の症状が出ます。
ピロリ菌の検査にはどんな方法がありますか?
吐いた息を調べる呼気試験、便検査、内視鏡で胃の粘膜を採って調べる方法があります。内視鏡検査では、胃炎や潰瘍の有無も直接確かめられます。
ピロリ菌の除菌はどのように行いますか?
胃酸を抑える薬と2種類の抗菌薬を組み合わせて飲みます。治療の約4週間後に検査をして、除菌できたかを確かめ、残っていれば治療をくり返します。
ピロリ菌を除菌すると胃がんを防げますか?
研究では、除菌治療を受けた人で胃がんの発生が約半分に減ったと報告されています。ただし試験の多くはアジアで行われたもので、検査や除菌については医師と相談して決めましょう。
除菌すれば胃潰瘍は再発しませんか?
完全に除菌できた場合、消化性潰瘍が3年以内に再発する可能性は10%未満です。除菌できなかった場合は3年後に50%以上が再発するため、治療後の確認検査が大切です。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · ヘリコバクター・ピロリ感染症
- Ford AC, et al. Helicobacter pylori eradication therapy to prevent gastric cancer in healthy asymptomatic infected individuals. Cochrane Database Syst Rev. 2020
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

