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双極性障害(双極症)とは?躁状態・うつ状態の症状と治療

双極性障害(双極症)は、気分が落ち込むうつ状態と、気分が高まりすぎる躁状態や軽躁状態をくり返す病気で、かつては「躁うつ病」と呼ばれていました。多くは10代から30代に始まります。I型とII型の違い、それぞれの状態の症状、原因、診断、治療と、再発を防ぐための生活の工夫を整理します。

テーマ
心理
更新日
読了時間
9分
監修
Itziar Gotxi Erezuma医師 · 耳鼻咽喉科専門医 · ビスカヤ県医師会 登録番号 484809757

双極性障害(双極症)とは?

双極性障害は、気分の両極端である「うつ状態」と「躁状態」のあいだを行き来することから、その名がついた病気です。以前は躁うつ病と呼ばれていました。

躁状態とは、置かれた状況にまったく見合わないほど気分が高まり、自信や活動性が強くなる状態で、ときに危険な行動をとってしまうことがあります。うつ状態では、ひどく気持ちが沈み、ものごとへの興味を失います。二つの状態のあいだには、気分が比較的落ち着いた時期がはさまります。

米国では、軽いものも含めると人口の4%弱にみられ、男女で起こりやすさに差はありません。多くは10代、20代、30代で始まり、子どもで起こることはまれです。

双極性障害の種類:I型とII型

  • 双極I型:ふだんの役割が果たせない、または妄想がみられるほどの、はっきりした躁状態を一度でも経験したことがあるものです。通常はうつ状態も経験します。
  • 双極II型:うつ状態を何度か経験し、軽い躁状態(軽躁状態)を少なくとも一度経験しているものの、はっきりした躁状態は起きたことがないものです。
  • そのほか:双極性障害に似た症状がありながら、I型やII型の基準を満たさない軽いものは、気分循環症などに分類されることがあります。

1回のエピソード(症状が出ている期間)は数週間から3〜6か月続きます。エピソードの頻度は人によってさまざまで、一生に数回だけの人もいれば、1年に4回以上くり返す人もいます(急速交代型)。多くの人では、躁とうつのどちらか一方が目立って現れます。

双極性障害の原因

正確な原因はわかっていませんが、遺伝が関わっていると考えられています。また、双極性障害のある人では、ノルアドレナリンやセロトニンといった神経伝達物質の調整がうまくいっていないことがあります。

強いストレスのかかる出来事の後に発症したり、再発したりすることもありますが、それが原因だと証明されているわけではありません。

一方で、ほかの原因によって躁状態が引き起こされることもあります。甲状腺ホルモンが多くなりすぎる甲状腺機能亢進症、脳腫瘍や頭のけが、脳卒中、多発性硬化症などの脳の病気、一部の感染症のほか、ステロイド薬や一部の抗うつ薬、パーキンソン病の薬、コカインやアンフェタミン類などの薬物が、躁状態の原因や引き金になることがあります。

双極性障害の症状①:うつ状態

双極性障害のうつ状態は、うつ病だけが起こる場合とよく似ています。

  • 強い悲しみを感じ、ふだんの活動への興味を失う
  • 考えや動作がゆっくりになる
  • いつもより長く眠る
  • 食欲が増える、または減り、体重が増減する
  • 絶望感や罪悪感に押しつぶされそうになる
  • 集中できなくなる

双極性障害のうつ状態では、うつ病だけの場合に比べて、幻覚や妄想などの精神病症状がみられることが多いとされています。

双極性障害の症状②:躁状態・軽躁状態・混合状態

躁状態は、うつ状態よりも急に終わることが多く、一般に1週間あまりと短めです。

  • いきいきとして活力にあふれ、気分が高まる、または怒りっぽくなる
  • 自信が強くなりすぎる、お金を使いすぎる、派手な服装をする
  • ほとんど眠らなくても平気になる
  • いつもより口数が多くなり、考えが次々に浮かぶ
  • 気が散りやすく、関心がすぐに別のことへ移る

躁状態の人は、自分が病気だという自覚をもちにくいのが特徴です。せっかちになったり、口出しが多くなったり、邪魔をされると強く怒ったりするため、人間関係のトラブルにつながりやすく、迫害されていると思い込むこともあります。極端な場合は、統合失調症に似た幻覚や妄想が現れます。

軽躁状態は躁状態ほど重くなく、元気で睡眠が少なくても活発に過ごせます。本人にとっては創造的で生産的な時期に感じられることもありますが、気が散る、怒りっぽくなる、守れない約束をするといった問題が出ることもあります。混合状態では、うつと躁の症状が同時に現れ、気分が高まっているのに涙ぐむ、といったことが起こります。混合状態のときは、とくに自殺のリスクが高くなります。

すぐに相談したいサインと自殺のリスク

双極性障害のある人は、一生を通じてみると、一般の人より少なくとも15倍、自殺で亡くなる可能性が高いとされています。とくに、うつと躁の症状が重なる混合状態の時期は注意が必要です。

  • 「死にたい」「消えたい」と口にする、自殺について考えている
  • 自分や他人を傷つけるおそれがある
  • 身の回りのことができなくなっている
  • ほとんど眠らずに動き回る、大きな浪費や危険な行動が止まらない
  • お酒や薬物の問題が重なっている

このような場合は、早めに医療機関に相談してください。重いうつ状態や躁状態では入院が必要になることもあります。緊急時は119番(スペインでは112番)に連絡してください。

双極性障害の診断

双極性障害は、精神医学の標準的な診断基準にもとづき、症状の現れ方のパターンから診断されます。ただ、躁状態の人は自分には何も問題がないと感じているため、症状を正確に伝えられないことがあります。そのため、家族からの情報がとても重要です。短い質問票への回答が、リスクの評価に役立つこともあります。

医師は、自殺について考えていないかも必ず尋ねます。また、使っている薬が症状の一因になっていないか、甲状腺機能亢進症などの体の病気がないかを確かめるために、血液検査を行い、違法薬物の使用がないかを血液や尿で調べることもあります。適切な治療を選ぶため、いまがうつ状態と躁状態のどちらにあるかも判断します。

双極性障害の治療:薬・心理療法・生活の工夫

  • リチウム:躁状態とうつ状態の両方の症状を軽くし、気分の波を予防するのに役立ちます。効き始めるまでに4〜10日かかるため、最初は速く効く薬を併用することがあります。眠気、ふるえ、吐き気、のどの渇き、尿の増加、体重増加などの副作用があり、血液中の濃度が高くなりすぎると中毒を起こすため、定期的に血液検査で濃度と甲状腺・腎臓の働きを確かめます。まれに胎児の心臓に異常を起こすことがあるため、妊娠を考えている人や妊娠中の人は使用をやめる必要があるとされています。自己判断で中止せず、必ず主治医と相談してください。
  • 抗てんかん薬:バルプロ酸やカルバマゼピンが気分安定薬として使われます。ラモトリギンは気分の波とうつ状態に使われますが、まれに重い発疹を起こすため、新しい発疹や発熱が出たらすぐに医師に連絡します。
  • 抗精神病薬:急な躁状態の治療に使われることが増えています。双極性障害のうつ状態に適した薬もあります。体重増加やメタボリックシンドロームが長期的な副作用です。
  • 抗うつ薬:重いうつ状態に使われることがありますが、使い方には議論があり、短期間に限って気分安定薬などと併用するのが一般的です。
  • そのほか:薬で改善しないうつ状態や躁状態に電気けいれん療法、季節で気分が変わるタイプなどに光療法、重いうつ状態に経頭蓋磁気刺激療法が使われることがあります。

心理療法は、治療を続けやすくすることを主な目的としてすすめられます。集団療法は本人とパートナーや家族の理解を深め、個人療法は日々の問題への対処を学ぶのに役立ちます。カフェインやニコチン、アルコールを控えること、十分に眠ることも再発予防の助けになり、症状の始まりに早く気づく方法を身につけることも大切です。家族が病気を理解し、治療に関わって支えることも重要です。

出典によって異なる点:うつ状態に抗うつ薬は使うべきか

MSDマニュアル家庭版は、重いうつ状態に特定の抗うつ薬が使われることはあるものの、その使用には議論があるため、短期間に限り、通常は気分安定薬や抗精神病薬と併用するとしています。

Sidorらのメタアナリシス(2011年)は、双極性障害のうつ状態に対する抗うつ薬の二重盲検ランダム化比較試験15件(2,373人)をまとめました。抗うつ薬は、偽薬やほかの標準的な治療と比べて統計的に優れているとはいえませんでした。躁状態などへの切り替わり(躁転)のリスクは全体としては高まっていませんでしたが、より感度の高い基準で躁転を判定した研究では、抗うつ薬で躁転が多く報告されていました。

抗うつ薬を慎重に使うという点では両者は共通していますが、研究のまとめでは、そもそも双極性障害のうつ状態に抗うつ薬が効くという根拠が確認されなかった、という違いがあります。

双極性障害のポイント

  • 双極性障害(双極症、かつての躁うつ病)は、うつ状態と躁状態・軽躁状態をくり返す病気です。
  • はっきりした躁状態があるものをI型、軽躁状態とうつ状態をくり返すものをII型と呼びます。
  • 原因は不明ですが、遺伝が一部関わると考えられ、甲状腺の病気や薬で躁状態が起こることもあります。
  • 躁状態の人は病気の自覚をもちにくいため、家族からの情報が診断に重要です。
  • 治療の中心はリチウムなどの気分安定薬、抗てんかん薬、抗精神病薬で、心理療法や生活の工夫、家族の支えも役立ちます。
  • 自殺のリスクが高い病気のため、危険なサインがあればすぐに相談してください。

双極性障害についてよくある質問

回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。

双極性障害とうつ病はどう違いますか?

うつ病ではうつ状態だけがみられますが、双極性障害ではうつ状態に加えて、気分が高まりすぎる躁状態や軽躁状態が現れます。双極性障害のうつ状態は、うつ病だけの場合よりも幻覚や妄想を伴うことが多いとされています。

I型とII型の違いは何ですか?

I型は、ふだんの役割が果たせないほどの、はっきりした躁状態を一度でも経験したものです。II型は、うつ状態をくり返し、軽躁状態はあるものの、はっきりした躁状態は起きたことがないものです。

躁状態のときはどんな様子になりますか?

気分が高まる、または怒りっぽくなり、自信が強すぎる、浪費する、ほとんど眠らない、口数が多い、考えが次々に浮かぶ、気が散りやすいといった様子がみられます。本人は病気の自覚をもちにくいのが特徴です。

双極性障害は治りますか?

気分安定薬などで症状を抑え、再発を防ぎながら生活を続けることが治療の目標です。症状のある時期とほとんどない時期がくり返す病気のため、症状が落ち着いても自己判断で薬をやめず、医師と相談しながら治療を続けます。

リチウムを飲むときの注意点は?

血液中の濃度が高くなりすぎると中毒を起こすため、定期的に血液検査を受けます。嘔吐や下痢、利尿薬の使用などで体のナトリウムが失われると、濃度が上がりやすくなります。妊娠を考えている場合は、必ず事前に主治医と相談してください。

生活の中で気をつけることはありますか?

カフェインやニコチン、アルコールを控え、十分に睡眠をとることが再発予防の助けになります。症状の始まりのサインに早く気づけるよう、本人と家族で学んでおくことも大切です。

出典

  1. MSDマニュアル家庭版 · 双極症
  2. Sidor MM, MacQueen GM. Antidepressants for the acute treatment of bipolar depression: a systematic review and meta-analysis. J Clin Psychiatry. 2011

このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。