構音障害とは?
構音障害は、言葉を正常にはっきり発音する力が失われる障害です。言葉の障害のように見えることがありますが、実際には発話に使う筋肉を制御する働き(運動機能)の問題です。
構音障害がある人は、言いたいことに近い音を正しい順番で出すことはできます。言葉を理解して使う力には通常異常がないため、ほとんどの人は普通に読み書きができます。
構音障害にかかわる脳と神経
構音障害は、次のような部分が傷つくことで起こります。
- 筋肉の動きを制御する脳の部分
- 小脳:体の各部の動きを協調させています。
- 大脳基底核:動きを協調させ、滑らかにするのを助けています。
- 脳幹:呼吸や声を出すための筋肉を制御しています。
- 大脳の表面(大脳皮質)と脳幹をつなぐ神経線維:唇、舌、口蓋、声帯などの動きを制御する情報を伝えます。
- 神経と筋肉のつなぎ目(神経筋接合部)
構音障害の原因となる病気
- 脳卒中
- 頭部外傷
- 脳腫瘍
- 神経の変性疾患:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ハンチントン病など
- 多発性硬化症
- 感染症:ライム病など
どの部分が傷ついたかによって、話し方の特徴が変わります。
構音障害の症状
損傷の場所によって、話し方には次のような特徴が現れます。
- ぎこちない
- ブツブツと途切れる
- 息の音が混じる
- リズムが不規則になる
- 不明瞭になる(ろれつが回らない)
- 抑揚がなく単調になる
どの特徴が目立つかは、脳や神経のどの部分が傷ついたかによって異なります。言葉を理解して使う力は通常保たれています。
失語症との違い
- 構音障害:発音を物理的に行う神経や筋肉の障害です。言葉の理解や選び方には問題がなく、読み書きもできることが多いです。
- 失語症:言葉の障害です。言葉を理解する、考える、言葉を探すといった脳の働きが損なわれ、話すだけでなく、聞いて理解すること、読み書きにも影響が出ます。
評価の際には、言葉の問題が聞こえや見え方の異常によるものではないことも確かめたうえで、両者を区別します。
飲み込みの問題にも注意
構音障害を起こす病気は、かむことや飲み込むことが難しくなる原因にもなります。
そのため、構音障害の評価では飲み込みの機能も調べます。通常はバリウムを使ったX線検査を行い、ときに内視鏡検査も行います。食事中にむせる、飲み込みにくいといった様子があれば、医療者に伝えましょう。
構音障害の診断
医師は症状について質問し、身体診察を行います。評価には、しばしば言語聴覚士(言語療法士)が加わります。
- 簡単な動作:ろうそくを吹き消す、下唇をかむ、舌を突き出すなどの動作から、発話に使う筋肉の力や動きを調べます。
- 発声の観察:単語や文をくり返す、歌う、数を数えるなどで、息の音が混じる、ぎこちないといった特徴を調べます。
- 神経心理学的検査:治療計画を立て、回復の見込みを判断するのに役立ちます。
- 画像検査:原因を調べるためにCT検査やMRI検査を行います。
疑われる原因によっては、血液・尿検査、脳波検査、筋電図検査、神経伝導検査などを行うこともあります。
言語療法とコミュニケーション機器
構音障害がある人には、言語療法が役立つ場合があります。
- 呼吸の訓練:発声を支える呼吸を整えます。
- 筋肉の訓練:唇や舌などの発話に使う筋肉を動かします。
- 単語や文のくり返し:はっきり話す練習をします。
構音障害が重い場合は、文字や絵が書かれたボードや、キーボードと画面を備えた機器を使って意思を伝える方法がすすめられることもあります。

出典によって異なる点:言語療法の効果はどこまで分かっているか
MSDマニュアル家庭版は、構音障害には言語療法が役立つ場合があるとし、呼吸や筋肉の訓練、単語や文のくり返しを挙げています。
コクランのシステマティックレビュー(Mitchellら、2017年)は、脳卒中などによる成人の構音障害への治療を調べた5件の小規模なランダム化比較試験(234人)をまとめました。治療直後には発話の障害の程度にわずかな改善がみられた可能性がありますが、根拠の質は非常に低く、3〜9か月後に日常の活動レベルで効果が続いているという根拠は得られませんでした。十分な規模の試験はなく、治療の利点とリスクはまだ分かっていないと結論づけています。
ただし、これは「効果がない」と証明されたわけではなく、研究が不足しているということです。著者らも、脳卒中や脳損傷のあとの構音障害がある人は、診療指針に沿ってリハビリを続けるべきだとしています。
構音障害のポイント
- 構音障害は、発話に使う筋肉の制御が損なわれ、発音が不明瞭になる状態です。
- 言葉の理解や読み書きは保たれていることが多く、失語症とは異なります。
- 脳卒中、パーキンソン病、ALS、多発性硬化症、頭部外傷などで起こります。
- 飲み込みの問題を伴うことがあるため、評価では飲み込みも調べます。
- 言語療法では、呼吸や筋肉の訓練、単語や文のくり返しを行います。
- 突然ろれつが回らなくなったら、すぐに119番(スペインでは112番)に連絡を。
構音障害についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
構音障害とはどんな状態ですか?
発話に使う唇、舌、のど、声帯などの筋肉をうまく制御できず、発音が不明瞭になる状態です。言葉の理解や読み書きは保たれていることが多いです。
構音障害と失語症の違いは何ですか?
構音障害は発音のための神経や筋肉の障害で、失語症は言葉を理解したり探したりする脳の働きの障害です。
構音障害の原因にはどんな病気がありますか?
脳卒中、頭部外傷、脳腫瘍、パーキンソン病、ALS、ハンチントン病、多発性硬化症、一部の感染症などがあります。
構音障害は治りますか?
原因の病気や傷ついた部位によって異なります。言語療法が役立つ場合がありますが、効果を確かめた質の高い研究はまだ少ないのが現状です。
言語療法ではどんなことをしますか?
発声を支える呼吸の訓練、唇や舌などの筋肉の訓練、単語や文をくり返してはっきり話す練習などを行います。
急にろれつが回らなくなったらどうすればよいですか?
脳卒中の可能性があるため、すぐに119番(スペインでは112番)に連絡してください。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 構音障害
- Mitchell C, et al. Interventions for dysarthria due to stroke and other adult-acquired, non-progressive brain injury. Cochrane Database Syst Rev. 2017
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

