失語症とは?
失語症は、会話や文字でものごとを表現したり理解したりする力が、部分的または完全に失われる障害です。言葉を扱う脳の部分が傷つくことで起こります。
右利きの人と左利きの人の約3分の2では、言葉の働きは脳の左半分が担っています。前頭葉のブローカ野、側頭葉のウェルニッケ野、その周囲の部分と、それらをつなぐ経路のどこかが傷つくと、言葉の働きが少なくとも部分的に障害されます。通常、書くことと話すことは同じ程度に影響を受けます。
失語症の原因
- 脳卒中
- 頭のけが
- 脳の感染症(脳炎)
これらのように、傷が広がっていかない病気が原因の場合、失語症が時間とともに悪化し続けることはありません。
一方、大きくなる脳腫瘍や一部の認知症のように進行する病気が原因の場合は、失語症も次第に悪化することがあります。
主な種類:ブローカ失語とウェルニッケ失語
- ブローカ失語(運動性失語):言葉の意味は理解でき、何を答えたいかもわかっていますが、それをうまく言葉にできません。苦労しながらゆっくり言葉を押し出すように話し、正常な話のリズムや抑揚が失われます。ほとんどの人は単語を書くことができません。
- ウェルニッケ失語(感覚性失語):話された言葉や書かれた言葉の理解が難しくなります。よどみなく自然なリズムで話しますが、内容は意味の通らない言葉の羅列になり、本人がそれに気づいていないこともあります。
そのほかの症状
- 失名詞:物の名前を思い出せない、または頭に浮かんでも口に出せません。回りくどい話し方になります。失語症のほとんどの人にみられます。
- 伝導失語:聞いた言葉や文をくり返して言えません。
- 失読:書かれた言葉を理解できなくなります。
- 全失語:言葉を理解する、話す、書く力のほとんどすべてが失われます。それでも、感情と関わりの深い右脳が無事であれば、とっさの感嘆の言葉は出ることがあります。
多くの人には複数の種類が重なってみられ、そのうち1つが特に重いことがよくあります。
失語症と構音障害の違い
構音障害は、声や音を出すための神経や筋肉が傷つくことで、言葉を物理的にうまく発音できなくなる障害です。
これに対して失語症は言語の障害で、理解したり、考えたり、言葉を見つけたりする脳の働きの問題です。診断では、言葉の問題が聴覚や視覚の異常、あるいは構音障害によるものではないことを確かめます。
失語症の診断と検査
医師は患者と話し、いくつか質問をすることで失語症を見つけることができます。どのくらい流暢に話すか、話し始めにくいか、言葉を見つける・物の名前を言う・言葉をくり返すことが難しいかを調べ、指示を理解して実行できるか、文字を書いたり音読したりできるかも確認します。
- 神経心理学的検査:専門家や言語療法士が行う標準的な検査で、軽い失語症の発見や、治療計画、回復の見通しの判断に役立ちます。
- 画像検査:CTやMRIで、失語症を起こした脳の損傷を調べます。
失語症の治療と言語療法
原因によっては、その治療がとても効果的です。たとえば腫瘍で脳が腫れている場合は、ステロイドで腫れを抑えると言葉の働きが改善することがあります。脳卒中などが原因の場合は、回復が比較的ゆっくりか、部分的なことがあります。
脳卒中など傷が広がらない病気による失語症には、言語療法の専門家(日本では言語聴覚士)による支援が役立ちます。言語療法は、本人が治療に参加できるようになったらすぐに始め、早く始めるほど効果的ですが、遅れて始めても役に立ちます。
基本的な言葉の力が戻らない人には、本、よく使う単語や日常動作を絵やシンボルにしたボード、キーボードと画面のついた機器など、別の方法で意思を伝える手段もあります。
回復の見通しと家族の接し方
どこまで回復するかは、脳の損傷の原因・大きさ・場所、言葉の障害の程度、治療の効果によって変わります。年齢、教育歴、全身の健康状態も、影響は比較的小さいものの関係します。
8歳未満の子どもは、脳の損傷が重くても言葉の力を取り戻すことがよくあります。8歳以上では、回復の大部分は最初の3カ月に起こりますが、最長で1年ほどは少しずつ回復が続くことがあります。
家族や介護者はいらだちを感じることもありますが、失語症は体の病気であり、本人にもほとんどコントロールできないことを心に留めておくことが助けになります。

出典によって異なる点:言語療法の効果と量
MSDマニュアル家庭版は、言語療法は早く始めるほど効果的で、遅れても役に立つとしていますが、効果の大きさや、どのくらいの量が必要かには言及していません。
コクランのシステマティックレビュー(Bradyら、2016年)は、脳卒中後の失語症に関する57件のランダム化比較試験(3,002人)をまとめました。言語療法を受けた人は、受けなかった人に比べて、日常のコミュニケーション能力、読む力、書く力、表現する力が改善しました。また、集中的に、多くの量を、長い期間行うほうが、コミュニケーション能力がより改善する傾向がありました。ただし、集中的な療法では途中でやめる人も多く、すべての人に受け入れられるとは限らないとしています。
つまり、言語療法は効果が確認されており、本人の負担に合わせて、できるだけ多く続けることが望ましいと考えられます。
失語症のポイント
- 失語症は、言葉を扱う脳の部分が傷つくことで起こる言語の障害です。
- 脳卒中、頭のけが、脳炎が主な原因で、進行する病気では次第に悪化することがあります。
- ブローカ失語は話すことが、ウェルニッケ失語は理解することが主に難しくなります。
- 発音の筋肉や神経の問題である構音障害とは異なります。
- 言語療法は早く始めるほど効果的で、量を多く続けるほど改善しやすい傾向があります。
- 回復の大部分は最初の3カ月に起こり、1年ほど続くことがあります。
失語症についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
失語症になると知能も落ちますか?
失語症は言語の障害で、理解・思考・言葉を見つける脳の働きに影響します。ブローカ失語の人は、言われたことの意味を理解していることがよくあります。
失語症の主な原因は何ですか?
脳卒中、頭のけが、脳の感染症(脳炎)です。脳腫瘍や一部の認知症など、進行する病気が原因になることもあります。
ブローカ失語とウェルニッケ失語の違いは?
ブローカ失語は理解できても言葉にするのが難しく、ウェルニッケ失語は流暢に話せても理解が難しく、内容の意味が通りにくくなります。
言語療法はいつ始めればよいですか?
本人が治療に参加できるようになったらすぐに始めます。早く始めるほど効果的ですが、遅れて始めても役に立ちます。
どのくらい回復しますか?
原因や損傷の大きさによります。8歳以上では回復の大部分は最初の3カ月に起こり、最長1年ほど続くことがあります。
言葉が戻らない場合はどうすればよいですか?
絵やシンボルのボード、よく使う単語の本、キーボードと画面のある機器など、別の方法で意思を伝えることができます。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 失語症
- Brady MC, et al. Speech and language therapy for aphasia following stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2016
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

