吃音(どもり)とは?
吃音は、ことばを滑らかに話せない発話の障害です。主な症状は次の3つです。
- くり返し:ことばの一部をくり返します(例:「た、た、た、たまご」)。
- 引き伸ばし:ことばの一部を伸ばします(例:「きーーーのうね」)。
- ブロック(阻止):話そうとしても、ことばが出てこない状態です。
1〜2回程度のくり返しは吃音に特徴的とはいえませんが、3回以上のくり返しは吃音の症状と判断されやすくなります。症状には波があり、時期や場面によっては症状がみられないこともあります。
吃音はどのくらい多い?
吃音は主に幼児期に始まります。国立障害者リハビリテーションセンターなどの研究グループが3歳児健診を受けた約2,000人を調べたところ、3歳の時点で吃音の症状がある子どもは6.5%、3歳までに一度でも症状を示した子どもは8.9%でした。
つまり、幼児期に吃音の症状を示す子どもは、少なくとも10人に1人近くいることになります。日本の幼児の吃音が世界と比べて少ないわけではないこともわかりました。
吃音の原因
近年の研究では、吃音の原因のほとんどは体質によるものであることがわかっており、育て方は吃音の原因ではありません。
- 3歳の時点で吃音の症状があった子どもでは、家族に吃音のある人がいる割合が27.4%で、症状のなかった子ども(10.4%)より高くなりました。
- ただし、家族に吃音の人がいれば必ず吃音になる、いなければならない、といえるほど大きな差ではありません。
子どもの吃音の経過
幼児期の吃音の多くは、数年のうちに自然に消えることが報告されています。
- 女の子は男の子に比べて、いくらか改善しやすいとされています。
- どもり始めてから1年半程度の間に症状が軽くなる傾向があれば、改善しやすいとされています。
- 幼児期の症状は、くり返しから始まり、小学校にかけて引き伸ばしや詰まる話し方が増えていくのが典型的です。
- ことばが滑らかに出ないときに、体に力が入ったり手足を動かしたりする、もがくような症状が二次的に出ることもあります。
ただし、目の前の子どもが治療なしで改善するかどうかを正確に予測することはできません。
幼児期の対応:環境調整
- 周囲の人がゆったりと楽に話し、吃るかどうかではなく、話の内容を聞くように努めます。
- 吃ると笑ったり真似したりする子がいる場合は、保育園や幼稚園の先生に協力を求め、「わざとそうしているのではない」と説明してもらいます。
- 本人の話したい気持ちを下げないよう、保護者を支えながら経過をみます。
悪化がみられる場合、吃音が始まって1年半から2年以上たっても、あるいは就学1年前までに治らない場合、家族歴などの危険因子がある場合には、言語訓練を行います。

幼児期の言語訓練
- 言語の要求水準を下げる方法:子どもの発話能力に合わせて、周囲が求めることばの水準を下げます。
- リッカムプログラム:望ましい反応を強化する行動療法の考え方(オペラント)を使い、子どもの滑らかな話し方を強化していく方法です。
- ゆっくりした話し方の練習:ゆっくりした柔らかい話し始めを真似させたり、ぬいぐるみなどを使ってゆっくりした発話のリズムを教えたりします。
幼児の多くは治療によく反応し、幼児期に治れば本人の記憶にも残りません。
学童期の吃音と支援
吃音のある子どもの過半数が、笑われたりからかわれたりした経験をもっています。これにより自尊感情の低下や不登校などの二次的な問題が起こりやすくなるため、本人の意向を聞きながら、クラスや学校の環境を整えます。
- みんなで声をそろえて読む、リズムに合わせて読むなど、滑らかに話しやすい方法で自信をつける訓練がよく行われます。
- 学年が上がると、柔らかくゆっくり話す練習や、わざと軽く吃る練習、認知行動療法も使われます。
大人の吃音と支援
- 言語訓練:楽に吃る方法と滑らかに話す方法を組み合わせた訓練がよく使われますが、これだけで改善する人は少なく、過半数では社交不安障害など心理面の評価と対応も必要になります。
- 認知行動療法:吃るかどうかにこだわらず、楽なコミュニケーションを目標にします。話し方そのものから注意が外れることで、かえって症状が改善しやすくなります。
- 薬:吃音に有効性が確立された薬はありません。吃音が原因の抑うつや社交不安障害には薬物療法が行われることがあります。
- 職場での配慮:障害者差別解消法などにより、本人が求めれば、雇用主は面接時間を長くする、電話業務を免除するなどの合理的配慮をする義務があります。多くの場合、吃音の診断書が必要です。

出典によって異なる点:吃音はどのくらい多く、どのくらい治るか
AMEDの吃音研究プロジェクトの解説は、約5%の子どもが一時的に吃音と考えられる状態を経験し、吃音があると判断された子どものうち7割程度は特別な治療を受けずに改善するとしています。
一方、国立障害者リハビリテーションセンターなどの2024年の調査では、3歳までに8.9%が吃音の症状を示しており、従来考えられていたより多いことがわかりました。また、幼児期の吃音の8割程度は数年で自然に消えるという過去の研究を紹介しています。
治療の効果については、ランダム化比較試験(Jonesら、2005年)が、3〜6歳の吃音のある54人を調べ、リッカムプログラムを受けた子どもでは9か月後に吃る音節の割合が1.5%と、受けなかった子ども(3.9%)より明らかに少なくなりました。自然に治る子どもが多い一方で、早期の治療にも効果があると考えられます。
吃音のポイント
- 吃音は、くり返し、引き伸ばし、ブロックを主な症状とする発話の障害です。
- 幼児期に始まることが多く、3歳までに約10人に1人近くが症状を示します。
- 原因のほとんどは体質で、育て方は原因ではありません。
- 幼児期の吃音の多くは自然に改善しますが、どの子が治るかは予測できません。
- 周囲がゆったり話し、話の内容に耳を傾ける環境調整が基本です。
- 大人の吃音には、言語訓練に加えて心理的な支援や職場での配慮が役立ちます。
吃音についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
吃音の原因は親の育て方ですか?
いいえ。近年の研究で、吃音の原因のほとんどは体質によるものであることがわかっており、育て方は吃音の原因ではありません。
子どもの吃音は自然に治りますか?
幼児期の吃音の多くは数年で自然に消えると報告されています。ただし、どの子どもが自然に治るかを正確に予測することはできません。
子どもが吃ったとき、言い直させたほうがよいですか?
周囲の人がゆったりと楽に話し、吃るかどうかではなく話の内容を聞くようにすることがすすめられています。本人の話したい気持ちを下げないことが大切です。
吃音はいつ専門家に相談すればよいですか?
悪化がみられる場合や、始まって1年半から2年以上たっても治らない場合、就学1年前までに治らない場合、家族に吃音のある人がいる場合などは、言語訓練が検討されます。
吃音に効く薬はありますか?
吃音に有効性が確立された薬はありません。吃音が原因で起こる抑うつや社交不安障害には、薬物療法が行われることがあります。
大人の吃音でも改善できますか?
言語訓練に加えて、認知行動療法などの心理的な支援が役立ちます。吃るかどうかにこだわらず、楽なコミュニケーションを目標にすることで症状が改善しやすくなります。
出典
- 国立障害者リハビリテーションセンター · 日本の幼児における吃音の有症率・累積発症率が明らかに(2024年)
- 発達性吃音(どもり)の研究プロジェクト(AMED) · 吃音の解説・治療の解説
- Jones M, et al. Randomised controlled trial of the Lidcombe programme of early stuttering intervention. BMJ. 2005
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

