自律神経失調症とは?
厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、自律神経失調症を、明らかな体の病気がないにもかかわらず、自律神経のバランスが崩れていると感じることによる不調として説明しています。
代表的な症状として挙げられているのは、全身のだるさ(倦怠感)、めまい、頭痛、動悸です。いずれも、原因となる体の病気が見つからないことを前提にした不調として説明されています。
厚生労働省の「e-ヘルスネット」の健康用語辞典でも、自律神経失調症についてはこの「こころの耳」の解説が案内されており、関連する言葉として更年期障害が挙げられています。
自律神経とは?体を自動的に調節する神経
自律神経は、私たちが意識しなくても体の状態を整えてくれる神経のネットワークです。呼吸の速さや血圧などを、自分で考えて操作しなくても自動的に調整しています。
心臓、肺、血管、胃や腸、肝臓、腎臓、膀胱、性器、ひとみ、汗や唾液、消化液を出す腺など、全身の臓器に枝を伸ばしています。自律神経が受けもつ主な働きは次のとおりです。
- 血圧、心臓の拍動、脈の速さ
- 体温
- 食べものの消化と、体内でのエネルギーの利用(代謝)
- 水分とナトリウム・カルシウムなどの電解質のバランス
- 唾液、汗、涙の分泌
- 排尿と排便
- 性的な反応
交感神経と副交感神経の違い
自律神経は、交感神経と副交感神経の2系統に分かれます。おおまかに言えば、体の働きを高めるアクセル役が交感神経、落ち着かせるブレーキ役が副交感神経です。たとえば血圧は、交感神経が働くと上がり、副交感神経が働くと下がります。両者がうまく役割を分け合うことで、体はその場の状況にふさわしい状態に切り替わります。
- 交感神経:緊張や危険が迫った場面で体を「戦うか逃げるか」の態勢にします。心臓を速く強く動かし、空気の通り道を広げ、手のひらに汗をかかせ、ひとみを開きます。その一方で、その場では急がなくてよい消化や排尿の働きは控えめにします。
- 副交感神経:ふだんの穏やかな場面で働き、体力を温存して回復させます。心拍をゆっくりにして血圧を下げ、胃腸を動かして食べものの消化と排出を進めます。
自律神経の中の情報のやりとりには、主にアセチルコリンとノルアドレナリンという2種類の神経伝達物質が使われています。
自律神経失調症の症状
「こころの耳」の解説で自律神経失調症の症状として挙げられているのは、次のようなものです。
- 全身倦怠感(体全体のだるさ)
- めまい
- 頭痛
- 動悸
ただ、めまいや動悸は、自律神経そのものの病気でもみられる症状です。自律神経失調症という呼び方は体の病気がないことを前提にしているため、まず体の病気が隠れていないかを確かめることが大切です。
自律神経そのものの病気(自律神経系の病気)
自律神経やそれを調節する脳の一部が傷つくことで、自律神経が本当に働きにくくなる病気もあります。はっきりした原因がなく起こる場合もありますが、よくある背景として、糖尿病、手足などの末梢神経の病気、加齢、パーキンソン病が挙げられています。
このような病気では、次のような症状がみられることがあります。
- 立ち上がった直後に血圧が下がり、めまいやふらつきが起こる(起立性低血圧)
- 立ちくらみ、目のかすみ、頭が重い感じ、動悸、ふるえ、吐き気、息苦しさ、ときに気を失う
- 汗が減る、またはまったく出なくなり、暑さに弱くなる
- 目や口の乾き
- 少し食べただけで満腹になる、吐く
- 尿もれや尿の出にくさ、便秘や便のコントロールの異常
なお、MSDマニュアル家庭版には「純粋自律神経失調症」という項目がありますが、これは「純粋自律神経不全症」とも呼ばれる別の病気です。脳にアルファシヌクレインというたんぱく質が異常にたまることで起こり、40〜50代で始まりやすく、立ち上がったときの強い血圧低下、汗の減少、見え方の異常、尿が出にくい、便秘などがみられます。この記事で扱う「自律神経失調症」とは別のものです。
医療機関を受診する目安
症状が体の病気によるものかどうかを見きわめるため、医師は、これまでの経過を詳しく聞き取り、診察を行い、必要に応じて血液検査や画像検査などで確かめます。
また、すでに「自律神経の乱れ」と言われている人でも、新しい症状が出たときに、それを同じ原因によるものと決めつけるのは避けるべきです。次のような場合は医療機関を受診してください。
- 立ち上がったときにめまいやふらつきが起こる、気を失ったことがある
- 汗がほとんど、またはまったく出ない
- 尿や便のコントロールがうまくいかない
- これまでになかった症状が新しく現れた
症状への不安が強く続くとき:身体症状症
体の症状そのものに加えて、その症状について不釣り合いなほど強い苦痛や心配が続き、仕事や家事など日常の役割にも差しさわりが出ている状態は「身体症状症」と呼ばれます。痛み、力が入らない感じ、疲れやすさ、吐き気などがみられ、背景に体の病気がある場合もない場合もあります。
身体症状症の人は、症状や健康の心配に多くの時間とエネルギーを費やしがちです。十分に調べても原因が見つからないのに、いくつもの医療機関を受診したり、同じ検査を何度も希望したりすることがあります。症状は多くの場合、30歳になる前に始まります。
治療では、心理療法、とくに認知行動療法が効果的とされています。担当の医師と協力し合える信頼関係を築くことも助けになり、うつ病を伴っていればその治療も行います。

リラクセーション法「自律訓練法」
「こころの耳」によると、自律訓練法は、注意を一点に向けることと自分への言葉かけ(自己暗示)を練習して全身の力を抜き、心と体の状態を自分で整えられるように組み立てられた段階的な方法です。ストレスの緩和や心身症、神経症などに効果があるといわれるリラクセーション技法の一つで、医療だけでなく、教育、職場、スポーツなどの分野でも取り入れられています。
自律訓練法の臨床研究をまとめたメタアナリシス(Stetterら、2002年)は、60件の研究(そのうち35件はランダム化比較試験)を分析しました。対照条件と比べると中くらいの効果がみられましたが、ほかの心理療法と比べると、多くは差がないか、やや劣る結果でした。
3件以上の研究がそろっている分野では、緊張型頭痛や片頭痛、軽度から中等度の本態性高血圧、不安症、軽度から中等度のうつ状態、はっきりした原因のない睡眠の問題などで、中くらいの効果が報告されています。気分や生活の質への効果は、主な症状への効果よりもさらに大きい傾向がありました。

出典によって異なる点
言葉が指すもの:「こころの耳」は、自律神経失調症を、体の病気がないのに自律神経のバランスが崩れていると感じる不調として説明しています。一方、MSDマニュアル家庭版の「純粋自律神経失調症」は、自律神経の神経細胞そのものがうまく働かなくなる特定の病気(純粋自律神経不全症)です。同じ「自律神経失調症」という文字を含んでいても、指している内容はまったく異なります。
自律訓練法の効果:「こころの耳」は、自律訓練法をストレスの緩和や心身症などに効果があるといわれる技法として紹介しています。Stetterらのメタアナリシスでは、対照条件と比べると中くらいの効果がありましたが、ほかの心理療法と比べた場合には、多くで差がみられませんでした。
自律神経失調症のポイント
- 自律神経失調症は、明らかな体の病気がないのに、自律神経のバランスが崩れていると感じる不調を指す言葉です。
- 主な症状は、全身のだるさ、めまい、頭痛、動悸などです。
- 自律神経は、血圧、心拍、体温、消化、排尿などを自動で調整しており、交感神経と副交感神経が役割を分け合っています。
- 自律神経そのものの病気でもめまいや動悸が起こるため、立ちくらみ、気を失う、汗の異常、排尿・排便の異常があれば受診が必要です。
- 症状への不安が強く続く身体症状症には、認知行動療法が効果的とされています。
- 自律訓練法は、全身の緊張をほぐすために使われるリラクセーション技法の一つです。
自律神経失調症についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
自律神経失調症とはどういう意味ですか?
明らかな体の病気がないのに、自律神経のバランスが崩れていると感じることで起こる不調を指す言葉です。厚生労働省の「こころの耳」でこのように説明されています。
自律神経失調症の症状にはどんなものがありますか?
代表的なのは、全身のだるさ、めまい、頭痛、動悸です。同じ症状が体の病気で起こることもあるため、まず医療機関で原因を確かめることが大切です。
交感神経と副交感神経はどう違いますか?
交感神経は、緊張や危険な場面で心拍を速め、空気の通り道を広げるなど体の働きを高めます。副交感神経は、穏やかな場面で心拍をゆっくりにし、消化を進めて体を回復させます。
「純粋自律神経失調症」とは同じものですか?
同じではありません。純粋自律神経失調症(純粋自律神経不全症)は、脳にたんぱく質が異常にたまり、自律神経の神経細胞がうまく働かなくなる病気で、立ち上がったときの強い血圧低下などが起こります。
検査で異常がないのに症状が続くときは?
症状について強い苦痛や心配が続き、生活に差しさわりが出ている場合は、身体症状症の可能性があります。心理療法、とくに認知行動療法が効果的とされています。新しい症状が出たときは、改めて医師に相談してください。
自律訓練法とは何ですか?
注意を一点に向けることと自己暗示の練習で全身の力を抜き、心と体の状態を自分で整えられるようにする段階的なリラクセーション法です。研究のまとめでは、対照条件と比べて中くらいの効果が報告されています。
出典
- 厚生労働省 こころの耳 · 用語解説「自律神経失調症」
- 厚生労働省 こころの耳 · 用語解説「自律訓練法」
- MSDマニュアル家庭版 · 自律神経系の概要
- MSDマニュアル家庭版 · 純粋自律神経失調症
- MSDマニュアル家庭版 · 身体症状症
- Stetter F, Kupper S. Autogenic training: a meta-analysis of clinical outcome studies. Appl Psychophysiol Biofeedback. 2002
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

