腎臓病で食事療法が必要な理由
慢性腎臓病では、血液をろ過して老廃物を取り除く腎臓の働きが、数カ月から数年かけて徐々に落ちていきます。治療の目標は、腎機能の低下を遅らせ、透析が必要になる時期を遅らせることです。
- 余分な塩分や水分を排出できず、高血圧や心不全の原因になる
- カリウムを排出できず、血液中のカリウムが高くなる(高カリウム血症)
- 体内でできる酸を排出できず、血液が酸性に傾く(アシドーシス)
- 血液中のリンが高くなり、骨や血管に影響する
慢性腎臓病の主な原因は糖尿病と高血圧で、どちらも腎臓の細い血管を傷つけます。
こうした変化を食事で抑えることが、薬や原因の病気の治療と並ぶ大切な柱になります。
たんぱく質の制限とエネルギーの確保
毎日のたんぱく質の量を制限すると、腎機能の低下をわずかに遅らせることができるとされています。
ただし、たんぱく質を減らした分、炭水化物から十分なエネルギーをとる必要があります。たんぱく質を大きく制限する場合は、必要なアミノ酸を確実にとるため、栄養の専門家の指導を受けることが大切です。
塩分(ナトリウム)と水分
腎臓が余分な塩分と水分を排出できなくなると、体にたまって高血圧や心不全を起こすことがあります。そのため、塩分の制限は通常役に立ち、心不全がある場合には特に重要です。
血液中のナトリウムが下がりすぎないように、水分の制限が必要になることもあります。必要な水分量は人によって違うため、医師の指示に従いましょう。
カリウムを多く含む食品に注意
- 代用塩:カリウムをとても多く含むものがあり、避ける必要があります。減塩のために自己判断で使わないようにしましょう。
- 果物:ナツメヤシ(デーツ)やイチジクをはじめ、カリウムを比較的多く含む果物が多くあり、とりすぎに注意が必要です。
血液中のカリウムが高くなると、不整脈や心停止の危険が高まります。カリウムは、腎不全の進行、カリウムの多い食事、カリウムの排出を妨げる薬などで危険なほど上がることがあるため、血液検査で確認しながら調整します。
リンを多く含む食品を控える
血液中のリンが高くなると、血管などにカルシウムとリンが沈着します。また、骨の形成にも異常が起こり、骨の痛みや骨折の危険が高まることがあります。
- 乳製品
- レバー
- 豆類、ナッツ類
- 多くの清涼飲料水
これらの摂取を減らすことで、血液中のリンを下げることができます。必要に応じて、リンを吸着する薬も使われます。食品添加物として使われるクエン酸カルシウムは避ける必要があるとされています。

野菜・果物と動物性たんぱく質のバランス
軽いアシドーシス(血液が酸性に傾いた状態)は、果物と野菜を増やし、動物性たんぱく質を減らすことで整えられる場合があります。中等度以上では薬による治療が必要です。
また、慢性腎臓病では血液中の中性脂肪が高くなりやすく、高血圧と合わさって動脈硬化の危険が高まります。脂肪の摂取を控えることで、中性脂肪やコレステロールをある程度抑えられます。

制限をうまく続けるための注意点
- 腎臓から排出される薬は量を減らしたり控えたりすることがあり、カリウムを上げる薬もあります。使っている薬についても医師に確認しましょう。
- 食欲の低下や吐き気は、腎臓病が進むとよくみられ、低栄養や体重減少につながることがあります。食べられないときは早めに相談しましょう。
- 糖尿病や高血圧がある場合は、その管理も腎機能の低下を遅らせるために欠かせません。
腎臓病が進んだ場合
食事療法や薬で効果が得られなくなった場合は、長期の透析や腎移植が選択肢になります。どちらも症状をやわらげ、寿命を延ばすことができます。
原因が尿路の閉塞など治せる病気で、まだ長く続いていない場合は、原因の治療で腎機能が改善することもあります。そうでなければ、腎機能は時間とともに低下する傾向があるため、早くから食事療法を続けることが大切です。
出典によって異なる点:たんぱく質をどこまで減らすか
MSDマニュアル家庭版は、たんぱく質を制限すると腎機能の低下をわずかに遅らせることができ、その分のエネルギーを炭水化物で補う必要があるとしています。
コクランのシステマティックレビュー(Hahnら、2020年)は、糖尿病のない慢性腎臓病の成人を対象とした17件の研究(2,996人)をまとめました。低たんぱく食と通常のたんぱく食を比べると、死亡や透析が必要になる人の数にほとんど差はないとみられました。一方、非常に低いたんぱく食は、低たんぱく食に比べて、末期腎不全に至る人をおそらく減らすとしています。腎機能そのものへの影響ははっきりせず、低栄養はほとんど報告されませんでした。
つまり、どの程度たんぱく質を減らすかで効果は異なり、強い制限ほど専門家による管理が欠かせません。
腎臓病の食事のポイント
- 慢性腎臓病の食事療法は、腎機能の低下を遅らせるための大切な治療です。
- たんぱく質を制限し、不足するエネルギーは炭水化物で補います。
- 塩分を控え、必要に応じて水分も調整します。
- カリウムの多い代用塩や果物のとりすぎに注意します。
- 乳製品、レバー、豆類、ナッツ類、清涼飲料水などリンの多い食品を控えます。
- 制限の程度は人によって違うため、医師や管理栄養士の指導のもとで進めましょう。
腎臓病の食事についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
腎臓病ではなぜたんぱく質を減らすのですか?
たんぱく質の摂取を制限すると、腎機能の低下をわずかに遅らせることができるとされています。その分のエネルギーは炭水化物で補います。
減塩のために代用塩を使ってもよいですか?
代用塩にはカリウムをとても多く含むものがあり、腎臓病では避ける必要があります。使う前に医師に相談してください。
果物は食べないほうがよいですか?
カリウムを比較的多く含む果物もあるため、とりすぎに注意が必要です。どの程度食べてよいかは、血液検査の結果をみて医師が判断します。
リンが多い食品には何がありますか?
乳製品、レバー、豆類、ナッツ類、多くの清涼飲料水などです。これらを控えると、血液中のリンを下げられます。
水分は控えるべきですか?
血液中のナトリウムが下がりすぎないよう、水分の制限が必要になることがあります。必要な量は人によって違うため、医師の指示に従ってください。
たんぱく質は減らすほどよいのですか?
研究では、非常に低いたんぱく食で末期腎不全に至る人が減る可能性が示されましたが、強い制限には専門家による栄養管理が欠かせません。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 慢性腎臓病
- Hahn D, et al. Low protein diets for non-diabetic adults with chronic kidney disease. Cochrane Database Syst Rev. 2020
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

