貧血とは?
貧血とは、赤血球の数や、赤血球に含まれて酸素を運ぶヘモグロビンの量が少なくなった状態です。血液検査でヘモグロビン値やヘマトクリット値(血液中の赤血球の割合)が低いことで診断されます。
赤血球をつくるには、鉄、ビタミンB12、葉酸などの栄養素が必要です。これらが足りなくなると、赤血球を十分につくれなくなります。
高齢者の貧血は、年をとったための自然な変化ではありません。原因となる病気がないか調べる必要があります。高齢者では軽い貧血でも、混乱、気分の落ち込み、無気力、ふらつきや歩きにくさが現れることがあります。
貧血が起こる3つのしくみ
- 出血:急な大量出血や、気づかないほど少しずつ続く出血で赤血球が失われます。
- 赤血球がつくられない:鉄、ビタミンB12、葉酸の不足や、白血病などの骨髄の病気で、赤血球の生産が減ります。
- 赤血球が壊れすぎる:赤血球が通常より早く壊されることで減ります(溶血)。
どのしくみで起きているかによって、必要な検査や治療が変わります。
貧血の症状
貧血が軽い場合や徐々に進む場合は、とくに高齢者で、まったく症状が出ないこともあります。軽い貧血では、次のような症状が出ます。
- 疲れやすさ、だるさ
- 力が入らない(脱力感)
- 顔色の悪さ(皮膚の青白さ)
貧血が重くなると、失神、めまい、のどの渇き、汗、速く弱い脈、速い呼吸などが加わります。重い貧血では、運動中に胸の痛みや息切れが起こることもあります。
症状から考える原因の手がかり
- 黒いタール状の便や血の混じった便、血尿:出血が貧血の原因であることが疑われます。
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる):赤血球が壊れすぎている可能性があります。
- 手足の焼けるような感じやピリピリ感:ビタミンB12の不足が疑われます。
このような症状は、医師が原因を見つけるための大切な手がかりになります。気づいたことはそのまま医師に伝えましょう。
最も多い鉄欠乏性貧血の原因
鉄は赤血球をつくる材料です。体の鉄が不足して起こる貧血を鉄欠乏性貧血といいます。大人では、出血による鉄の喪失が最も多い原因です。
- 月経のある女性:月経による出血が主な原因になります。
- 男性や閉経後の女性:鉄欠乏は通常、消化管からの出血を示唆するため、原因を詳しく調べることが重要です。
乳幼児、思春期の女子、妊娠中の女性など、鉄の必要量が増える時期に食事からの鉄が足りないと、鉄欠乏が起こることがあります。また、セリアック病などで腸からの鉄の吸収が悪くなることもあります。
鉄欠乏性貧血では、氷など変わったものがむしょうに食べたくなる「異食症」が多くの人に起こります。
貧血の検査
- 血液検査(血算):ヘモグロビン値、ヘマトクリット値、赤血球の大きさなどを調べます。
- フェリチン:体にたくわえられた鉄の量を反映し、鉄欠乏を調べる最も正確な血液検査とされています。
- 注意点:肝臓の障害、炎症、感染、がんなどがあるとフェリチン値が上がり、鉄欠乏があっても正常に見えることがあります。
鉄欠乏性貧血と診断されたら、なぜ鉄が不足したのかを確かめることが治療の第一歩です。

鉄欠乏性貧血の治療
治療の基本は、出血の原因を見つけて止めることと、失われた鉄を補うことです。
- 鉄剤は通常、飲み薬で補います。慢性の出血で不足した鉄を、普通の食事だけで補うのは難しいためです。
- 出血が止まっても、鉄の補給は通常3〜6週間必要です。
- 鉄剤を飲むと、便の色が濃くなったり黒くなったりします。
- 便秘になることがよくあります。
- 鉄は、オレンジジュースやビタミンCと一緒に朝食の30分前にとると、最も効率よく吸収されます。
定期的に血液検査を行い、鉄の補給が十分かどうかを確認します。鉄欠乏が治ると、異食症も治ります。
こんなときは受診を
- 疲れやすさや息切れが続く
- 顔色が悪いと人から言われる
- 月経の量が多い
- 黒い便や血の混じった便が出た
- 氷などをむしょうに食べたくなる
- 手足のしびれやピリピリ感がある
失神やめまいがある場合や、黒い便が出た場合は、早めに医療機関を受診してください。

出典によって異なる点:鉄剤の効果と副作用のバランス
MSDマニュアル家庭版は、鉄欠乏性貧血の治療として、出血を止めることと鉄剤で鉄を補うことを挙げ、便の黒ずみや便秘といった副作用に触れています。
コクランのシステマティックレビュー(Lowら、2016年)は、月経のある女性への毎日の鉄剤について67件の研究(8,506人)をまとめました。鉄剤を飲んだ人では貧血の割合が約6割減り(リスク比0.39)、ヘモグロビン値は平均で5.3 g/L上がりました。一方で、胃腸の副作用はおよそ2倍に増えていました(リスク比1.99)。
どちらの出典も、鉄を補うことの効果を認めています。研究からは、効果がある一方で胃腸の副作用も起こりやすいことがわかるため、つらい場合は医師に相談しましょう。
貧血のポイント
- 貧血は、赤血球やヘモグロビンが減って酸素を十分に運べない状態です。
- 出血、赤血球がつくられない、壊れすぎる、の3つのしくみで起こります。
- 疲れやすさ、顔色の悪さ、息切れが主な症状です。
- 大人で最も多いのは出血による鉄欠乏性貧血で、男性や閉経後の女性では消化管の出血を調べます。
- フェリチンは鉄欠乏を調べる最も正確な血液検査です。
- 治療は出血の原因を止め、鉄剤で鉄を補います(通常3〜6週間)。
貧血についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
貧血になるとどんな症状が出ますか?
軽い貧血では、疲れやすさ、脱力感、顔色の悪さが出ます。重くなると、めまい、失神、のどの渇き、速く弱い脈などが加わります。
貧血の原因で一番多いのは何ですか?
大人では、出血によって鉄が失われる鉄欠乏性貧血が最も多くみられます。月経のある女性では月経、男性や閉経後の女性では消化管からの出血が主な原因です。
フェリチンとは何ですか?
体にたくわえられた鉄の量を反映する血液検査の値です。鉄欠乏を調べるための最も正確な検査とされています。
鉄剤はいつまで飲めばよいですか?
出血が止まっても、鉄の補給は通常3〜6週間必要です。定期的な血液検査で補給が十分かを確認しながら、医師と相談して決めます。
鉄剤を飲むと便が黒くなるのはなぜですか?
鉄剤を飲むと、便の色が濃くなったり黒くなったりします。ただし、鉄剤を飲んでいないのに黒いタール状の便が出た場合は、出血のおそれがあるため受診してください。
年をとると貧血になるのは普通ですか?
いいえ。高齢者の貧血は年齢による自然な変化ではありません。原因となる病気がないか調べることが大切です。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 貧血の基礎知識
- MSDマニュアル家庭版 · 鉄分欠乏性貧血
- Low MSY, et al. Daily iron supplementation for improving anaemia, iron status and health in menstruating women. Cochrane Database Syst Rev. 2016
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

