学習障害(学習症)とはどんな状態?
学習障害(医学的には限局性学習症ともいいます)は、全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の学習だけに困難がみられる状態です。自閉スペクトラム症やADHDなどと同じく、発達障害(神経発達症)の一つに数えられます。
知的能力障害とは大きく異なり、知的能力障害では認知機能全般に困難が生じるのに対し、学習障害では特定の機能だけに影響がみられます。そのため、知能が正常な子どもや、知能が高い子どもにも起こります。
学習障害の3つのタイプ
- 読むことの障害:文章を正確に読むことや、読んだ内容を理解することが難しくなります。最もよく知られているのがディスレクシアです。
- 書いて表現することの障害:文字を書く、つづる、文法や句読点を正しく使う、考えを文章で表すことが難しくなります。
- 算数の障害:数の意味や数同士の関係、計算、問題を解くための数学的な考え方が難しくなります。
たとえば算数には大きな困難があるのに、読み書きやほかの科目にはまったく問題がない、ということもあります。なお、視覚や聴覚の障害、協調運動の障害、情緒の問題が主な原因で学習につまずいている場合は、学習障害には含めません。ただし、これらが学習障害と一緒にみられることはあります。
学習障害の原因
生まれつきの場合もあれば、成長する過程で現れる場合もあります。原因は完全には解明されていませんが、話し言葉や書き言葉を理解・使用するときの基本的な処理や、数や空間をとらえる働きの違いが関係していると考えられています。
- 妊娠・出産にかかわる要因:母親の病気や妊娠中の有害な薬の使用、妊娠高血圧腎症や長引く分娩などの合併症、早産、低出生体重、重い黄疸など
- 生まれた後の要因:鉛などの有害物質への曝露、脳や脊髄の感染症、がんとその治療、低栄養、重い社会的孤立、心理的なネグレクトや虐待など
小児期のトラウマとなる出来事も、学習障害の発生に関わる可能性があるとされています。
学習障害はどのくらいみられる?
米国では2020〜2021年度に、3〜21歳の約730万人(公立学校の生徒の約15%)が特別な教育サービスを受け、そのうち32%(全生徒の約5%)が特定の学習障害でした。
学習障害と診断される男の子は女の子の約5倍ですが、女の子では気づかれなかったり、診断されなかったりすることが多いとされています。また、自分の苦手を上手に隠しているために、長い間支援を受けられない子どももいます。学習障害は、気づかれにくい障害でもあります。
学習障害のサイン
幼児期には、色の名前や文字を覚える、身近なものの名前を言う、数を数えるといった早い時期に身につける力の習得が遅れることがあります。その後、読み書きの習得の遅れとして目立ってきます。
- 注意が続きにくい、気が散りやすい(ADHDに似た様子)
- 言葉の遅れ、話し言葉の理解の苦手さ
- いくつかの項目を順番どおりに覚えておくのが苦手
- 字が乱雑になる、鉛筆の持ち方がぎこちないなど、細かい手の動きの苦手さ
- 課題を整理して始めること、話を正しい順序で伝え直すことの苦手さ
- 算数の記号を混同する、数字を読み間違える
気持ちや行動への影響と、ほかの発達障害との関係
学習障害のある子どもは、まず思うようにできないことにいらだち、その後、注意散漫、多動、引きこもり、引っ込み思案、攻撃性などの行動面の問題が出てくることがあります。人とのコミュニケーションがうまくいかないこともあります。
学習障害とADHDは、しばしば一緒に起こります。不安や抑うつなどの情緒の問題が重なると、学習の困難が悪化することもあります。同じ診断名でも特性の現れ方は一人ひとり異なり、ほかの発達障害を併せ持つこともあります。
学習障害の診断
その年齢で期待される水準の読み書きができない子どもは、評価を受けるべきとされています。まず医師が診察し、聴力検査や視力検査などで、学習を妨げる体の病気がないかを調べます。聞こえや見え方の問題を学習障害と取り違えないことが大切です。
- 知能検査:言語と非言語の両面を調べます。
- 学力検査:読む、文章の意味の理解、つづり、書いて表現する力、数の意味や計算、数学的な考え方を評価します。
- 心理的な評価:不安や抑うつ、ADHDなどがないか、学校への気持ちや人間関係、自尊心や自信を確認します。
支援を受けていても、これらの力の少なくとも1つが6カ月以上、年齢で期待される水準を大きく下回っている場合に、学習障害の可能性があります。知的能力障害やほかの神経発達症が原因でないことも確認します。

学習障害の支援:一人ひとりに合わせた学びの工夫
最も有効な対応は、その子に合わせて入念に調整した教育です。困難の種類ごとに、次のような工夫が役立ちます。
- 読むことが難しい:大きな文字の文章を指でなぞりながら読む、文章を分かち書きにしたり文節で区切ったりする、音声教材(電子教科書)を使う
- 書くことが難しい:大きなマス目のノートを使う、ICT機器を活用する
- 計算が難しい:絵を使って視覚化するなど、その子に合った工夫をする
子どもの困難を正確に把握し、決して怠けのせいにせず、適切な支援の方法を家庭と学校で共有することが大事です。
学業成績や知能そのものを改善する薬はありません。ADHDを併せ持つ場合は、薬で注意力や集中力が改善し、学びやすくなることがあります。食品添加物を除く、ビタミンを大量にとる、体内の微量ミネラルを分析するといった対策は、いずれも効果が実証されていません。

出典によって異なる点:何を中心に伝えているか
MSDマニュアル家庭版は、学習障害を医学的な評価の対象としてとらえ、知能検査や学力検査による診断の流れと、個別に調整した教育を最も有効な治療としています。支援の枠組みとしては、米国の法律にもとづく学校での配慮を紹介しています。
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)のこころの情報サイトは、教育的な支援を中心に、大きな文字、分かち書き、音声教材、大きなマス目のノート、ICT機器、絵による視覚化など、日本の学校や家庭ですぐに使える具体的な工夫を挙げています。また、学習障害が気づかれにくいことや、子どもの怠慢のせいにしないことを強調しています。
両者は対立していませんが、診断の手順はMSD、日常の学びの工夫はNCNPのほうが詳しく、合わせて読むと全体像がつかみやすくなります。
学習障害のポイント
- 学習障害は、知的発達に問題がないのに、読む・書く・算数など特定の学習だけが難しい状態です。
- 知能が正常な子どもや高い子どもにも起こり、気づかれにくいことがあります。
- ADHDや不安、抑うつを併せ持つことがあり、いらだちから行動の問題が出ることもあります。
- 診断では、まず聴力や視力の問題を除外し、知能検査と学力検査を行います。
- 最も有効なのは一人ひとりに合わせた教育で、大きな文字や音声教材、ICT機器などが役立ちます。
- 食品添加物の除去やビタミンの大量摂取などは、効果が実証されていません。
学習障害についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
学習障害は知能が低いということですか?
いいえ。学習障害は知的能力障害とは異なり、知能が正常な子どもや高い子どもにも起こります。特定の学習だけに困難がみられます。
ディスレクシアと学習障害はどう違いますか?
ディスレクシアは、学習障害のうち読むことの障害の代表的なものです。学習障害には、ほかに書いて表現することの障害と算数の障害があります。
どんなときに評価を受けるべきですか?
その年齢で期待される読み書きができない場合です。まず聴力や視力の検査で、学習を妨げる体の問題がないかを確認します。
学習障害は薬で治りますか?
学業成績や知能を改善する薬はありません。ADHDを併せ持つ場合は、薬で注意力や集中力が改善し、学びやすくなることがあります。
家庭や学校でできる工夫はありますか?
読むことが苦手なら大きな文字や分かち書き、音声教材、書くことが苦手なら大きなマス目のノートやICT機器、計算が苦手なら絵で視覚化するなどの工夫があります。
サプリメントや食事療法は効きますか?
食品添加物の除去やビタミンの大量摂取、微量ミネラルの分析などは広く行われていますが、いずれも効果は実証されていません。
出典
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

