聴覚過敏とは?
感覚過敏とは、感覚の刺激が過剰に強く感じられ、苦痛になる状態です。聴覚過敏は、それが音について起こるものです。
反対に、感覚の刺激を感じにくかったり、反応が低下したりする状態を感覚鈍麻といいます。感覚の問題には、過敏と鈍麻の両方があります。
発達障害と感覚の問題
- 自閉スペクトラム症(ASD):社会性とコミュニケーションの問題、くり返しの行動や限られた興味を特徴とします。米国精神医学会の診断基準(DSM-5)にも、感覚過敏や感覚鈍麻など感覚の問題が生じることが書かれています。
- 注意欠如多動症(ADHD):不注意や多動・衝動性を特徴とします。
- 学習障害(LD):知能全般には問題がないものの、読み書きや計算など特定の能力に限って困難があります。
ASDだけでなく、ADHDやLDのある人も、さまざまな感覚の問題をもっていることが報告されています。ただし、困りごとの違いが詳しくわかっていないため、必ずしも適切な支援につながっていないのが現状です。
国内の調査で調べたこと
国立障害者リハビリテーションセンターは、発達障害情報・支援センターなどと共同で、感覚にまつわる日常の困りごとを「見える化」するために、発達障害のある人を対象に調査を行いました。結果は2023年2月に学術誌『Frontiers in Psychiatry』に掲載されました。最もつらい感覚の問題から3番目までを書いてもらい、その内容を分析しました。
- 障害の特性によって、感覚の問題の出かたに違いがあるか
- 年齢層によって違いがあるか
- 自由記述から、それぞれの感覚でどのような問題があるか
最もつらいのは「聴覚」
「最もつらい感覚の問題」として、聴覚の問題が全415件の回答の半数以上(約55%)を占めました。視覚、触覚、嗅覚の問題は、それぞれ10%程度でした。
日常の困りごととして、聴覚の問題の比重が大きいことがわかります。一方、「2番目」「3番目につらい感覚の問題」になると、視覚、触覚、嗅覚の問題も多くなりました(いずれも15〜20%)。
よく知られている聴覚や視覚の問題だけでなく、それ以外の感覚の問題を最もつらいと感じている人も一定数おり、つらさの内容もさまざまであることがわかりました。
聴覚過敏の2つのタイプ
- 特定の強い音が苦手:「高い音」など、強い刺激や特定の刺激がつらいタイプです。
- 同時に来る複数の音で混乱する:いくつもの音が同時に聞こえると、疲れてしまったり、状況がわからなくなったりするタイプです。
聴覚だけでなく、視覚や嗅覚でも、強い刺激がつらいという問題と、複数の刺激が同時に来ることでの混乱や苦痛という問題に分かれることがわかりました。

障害の特性による違い
ASD、ADHD、LDのどれでも、聴覚の問題が目立つことは変わりませんでした。そのうえで、次のような違いがみられました。
- ASDのある人:最もつらい問題として触覚を挙げた人が、ASDのない人より相対的に多い
- LDのある人:視覚の問題を挙げた人が相対的に多い
触覚の刺激に敏感という特性は、ASDのある人にとって、ほかの障害より困りごとの原因になりやすいと考えられています。
年齢による違い
回答を年齢層に分けて分析すると、味覚の問題を挙げた人は未成年で多く、中年層で少ないことがわかりました。味覚の問題には、食感や苦手な食べ物、偏食に関するものも含まれていました。
このほか、固有覚や前庭覚に関する困りごと、気圧や気温に関する困りごとも、同じように分析されています。
感じにくさ(感覚鈍麻)にも注意
感覚の問題は、過敏だけではありません。感覚鈍麻では、刺激を感じにくかったり、反応が低下したりします。
たとえば、気温の変化に気づきにくく、熱中症になってしまうことがあるといった困りごとが知られています。感じすぎるつらさと、感じにくいことによる危険の両方に目を向けることが大切です。
出典によって異なる点:苦手な音の表し方
国立障害者リハビリテーションセンターの解説は、苦手な刺激の例として「高い音」「まぶしい光」など特定の強い刺激を挙げ、最もつらい感覚として聴覚を挙げた人が約55%だったと具体的な数字を示しています。
同じ調査をもとにした論文(Wadaら、2023年、Frontiers in Psychiatry)は、苦手な刺激を「突然の、強い、または特定の刺激」と表しており、「突然」の刺激が苦手であることも含めています。また、学習障害には「限局性学習症(SLD)」という名称を使っています(センターの解説でも、LDはSLDとも呼ばれると説明されています)。
どちらも、感覚の問題は多様であり、支援するときにはその多様さを十分に考える必要があるという点で一致しています。
聴覚過敏のポイント
- 聴覚過敏は、音の刺激を強く感じすぎて苦痛になる状態です。
- 発達障害のある人では、最もつらい感覚として聴覚を挙げた人が約55%でした。
- 特定の強い音が苦手なタイプと、同時に来る複数の音で混乱するタイプがあります。
- ASDでは触覚、LDでは視覚の問題も相対的に多くみられました。
- 感じにくい「感覚鈍麻」では、熱中症などに注意が必要です。
- 困りごとは人それぞれで、特性に応じた個別の対応が必要です。
聴覚過敏についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
聴覚過敏とは何ですか?
音の刺激が過剰に強く感じられ、苦痛になる状態です。感覚過敏の一つです。
発達障害と関係がありますか?
自閉スペクトラム症の診断基準には感覚の問題が書かれており、ADHDや学習障害のある人も感覚の問題をもつことが報告されています。
どんな音がつらいのですか?
「高い音」など特定の強い音がつらい場合と、複数の音が同時に聞こえると疲れたり混乱したりする場合があります。
聴覚以外の感覚の問題もありますか?
あります。視覚、触覚、嗅覚、味覚の問題も多く、自閉スペクトラム症では触覚の問題を挙げる人が相対的に多くみられました。
感覚鈍麻とは何ですか?
刺激を感じにくかったり、反応が低下したりする状態です。気温の変化に気づかず熱中症になることがあります。
子どもと大人で違いはありますか?
調査では、味覚(偏食や食感)の問題を挙げた人が未成年で多く、中年層で少ないという違いがみられました。
出典
- 国立障害者リハビリテーションセンター · 発達障害のある人の感覚の問題
- Wada M, et al. Qualitative and quantitative analysis of self-reported sensory issues in individuals with neurodevelopmental disorders. Front Psychiatry. 2023
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

