舌痛症(口腔灼熱症候群)とは?
口腔灼熱症候群は、口の中に目に見える口内炎や異常がない人にみられる口の痛みで、しばしば舌に起こります。日本では舌痛症とも呼ばれます。
刺激の強い食べ物や酸っぱい食べ物を食べたあとに多くの人が経験する一時的な不快感とは異なります。閉経後の女性に最も多くみられます。
舌痛症はなぜ起こる?
痛みと味覚をつかさどる神経に、まだよくわかっていない異常が生じていることが関わっていると考えられています。
口腔灼熱症候群には、原因は異なっても症状が共通しているいくつかの状態が含まれます。口の痛みを起こすほかの病気がなく、口の中に明らかな異常がない場合に、口腔灼熱症候群と呼ばれます。そのため診断は、症状に加えて、舌の不快感のよくある原因がほかに見当たらないことに基づいて下されます。
区別が必要なほかの原因
- ビタミンB12や葉酸の不足、貧血
- 糖尿病
- カンジダ症(真菌の感染)
- 食べ物や歯科材料に対するアレルギー
- 口の乾燥
- 一部の高血圧の薬(ACE阻害薬)
- 舌で歯を押す、歯の噛みしめ、歯ぎしりなどの癖
- 舌や口の中の炎症、自己免疫疾患、がんなど
舌の不快感は、パイナップルなど酸性の食べ物や、歯磨き剤・洗口液・キャンディー・ガムなどに含まれる成分、一部の薬、舌のけがやただれ、セリアック病などでも起こります。舌や口全体の激しい痛みが続く場合に、口腔灼熱症候群が考えられます。
舌痛症の症状
痛みを伴う灼熱感、ピリピリ感、しびれたような感覚が、口全体(特に舌、唇、上あご)または舌だけに起こります。続くことも、ときどき起こることもあり、1日を通してだんだん強くなることがあります。飲んだり食べたりすると和らぐこともあります。
- 強いのどの渇きを伴う口の乾燥
- 味覚の変化
痛みの結果として、食習慣の変化、いらだち、抑うつ、人を避けるようになることなどがみられることもあります。
舌痛症の診断
医師や歯科医師は、病歴と食習慣を詳しく確認し、口の中を診察します。診断には通常、痛みがほぼ毎日、1日約2時間以上、3カ月以上続いていることが必要です。
口の灼熱感を起こすほかの病気を調べるために、血液検査などを行うことがあります。たとえば、口の乾燥がないかを確かめるため、唾液の分泌を調べることがあります。
ほかの病気による口の痛みでも、軽いうちや初期には口の中が正常に見えることがあるため、診断を確定するのが難しいことがよくあります。
原因を探すための工夫
舌の不快感では、原因になりうるものを一つずつ取り除いて、正確な原因を探すことが多くあります。
- 歯磨き剤を変えてみる(特にラウリル硫酸ナトリウムを含まないものに)
- 刺激の強い食べ物、酸っぱい食べ物、香辛料の効いた食べ物を避ける
- とがった歯や欠けた歯を歯科で直してもらう
- 温かい塩水で口をゆすぐ
カンジダ症が原因の場合は、抗真菌薬で治療できます。
口を湿らせて痛みを和らげる
原因が見つかれば、その治療をします。そのうえで、口を湿った状態に保つことが、灼熱感の緩和にしばしば役立ちます。
- 人工唾液を使う
- 氷片を口に含む
- こまめに水を飲む
- シュガーレスのガムを噛んで唾液の分泌を促す
薬や心理療法
一緒に起こりうる気分の変化に対して、抗うつ薬や抗不安薬がときに役立ちます。ただし、これらの薬は口の乾燥を起こし、痛みを悪化させることがあります。
カプサイシンのクリーム、神経の痛みに使う薬、ビタミンB・Cのサプリメントが役立つ場合もあります。ほかの治療で効果がない場合には、認知行動療法が役立つことがあります。治療しなくても症状が自然に消えることがありますが、再び起こることもあります。
出典によって異なる点:治療の根拠の強さ
MSDマニュアル家庭版は、口を湿らせる工夫を中心に、抗うつ薬、抗不安薬、カプサイシン、ビタミン、認知行動療法などが役立つ場合があるとしています。
コクランのシステマティックレビュー(McMillanら、2016年)は、23件のランダム化比較試験(1,121人、83%が女性)をまとめました。口の中で使うベンゾジアゼピン系の薬、けいれん止めの薬などに短期的な効果を示す報告がありましたが、根拠の質はすべて「非常に低い」と評価されました。抗うつ薬やサプリメントなどについては、効果を判断する根拠が不十分または矛盾していました。長期的な効果の可能性が示されたのは、心理療法、カプサイシンでのうがい、口の中で使うベンゾジアゼピン系の薬でしたが、いずれも小規模な試験にとどまり、根拠の質は非常に低いとされています。
つまり、舌痛症にはこれといった決め手の治療はまだなく、医師や歯科医師と相談しながら、自分に合う方法を試していくことになります。
舌痛症のポイント
- 舌痛症は、口の中に見た目の異常がないのに、舌などが焼けるように痛む状態です。
- 閉経後の女性に最も多くみられます。
- ビタミン不足、貧血、糖尿病、カンジダ、口の乾燥、歯磨き剤などほかの原因を確かめます。
- 痛みがほぼ毎日、1日約2時間以上、3カ月以上続くことが診断の目安です。
- 人工唾液、氷片、こまめな水分、シュガーレスガムで口を湿らせると楽になることがあります。
- 薬や認知行動療法も試されますが、根拠はまだ限られています。
舌痛症についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
舌がヒリヒリするのは舌痛症ですか?
口の中に見た目の異常がなく、ほかの原因が見つからない場合に舌痛症(口腔灼熱症候群)と呼ばれます。まずは歯科や医師の診察で原因を確かめましょう。
どんな人に多いですか?
閉経後の女性に最も多くみられます。
ほかにどんな原因がありますか?
ビタミンB12や葉酸の不足、貧血、糖尿病、カンジダ症、口の乾燥、アレルギー、一部の薬、歯ぎしりなどの癖などがあります。
自分でできる対処法はありますか?
人工唾液、氷片、こまめな水分、シュガーレスガムで口を湿らせることが役立つことがあります。刺激の強い食べ物を避けるのもよいでしょう。
薬は効きますか?
抗うつ薬や抗不安薬などがときに役立ちますが、口の乾燥を起こして痛みを悪化させることもあります。研究では、どの治療も根拠の質は低いとされています。
舌痛症は治りますか?
治療しなくても自然に消えることがありますが、再び起こることもあります。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 口腔灼熱症候群
- MSDマニュアル家庭版 · 舌不快感
- McMillan R, et al. Interventions for treating burning mouth syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2016
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
