味覚障害とは?
味覚障害は、食べ物の味が分からなくなったり(味覚脱失)、鈍くなったり(味覚低下)する状態です。
- 味覚低下・味覚脱失:味が分かりにくい、まったく感じない。
- 一部の味だけの障害:特定の味だけが分からない。
- 異味症:何も食べていないのに変な味がする、味がゆがんで感じられる。
味覚と嗅覚の関係
舌の表面には、味のセンサーである「味蕾(みらい)」が何千個もあり、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の5つの基本の味を感じとります。
一方で、食べ物の「風味」の多くは、味覚と嗅覚の両方の情報を脳が組み合わせて感じています。そのため、かぜなどで鼻が詰まって匂いが分からなくなると、食べ物の味も分かりにくくなります。「味がしない」と感じていても、実際には嗅覚の低下が原因のこともあります。
最も多い原因:亜鉛不足
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会によると、味覚障害の多くのケースで、血液中の亜鉛不足が関係していることが分かっています。
- 亜鉛不足の原因は、多い順に、原因不明(特発性)、薬、かぜ、全身の病気とされています。
- 亜鉛のほか、銅やニッケルなどが不足する栄養不良でも、味覚と嗅覚が変化することがあります。
その他の主な原因
- 口の強い乾燥:シェーグレン症候群、大量の喫煙、頭や首への放射線治療、脱水などによる口の乾きで、味を感じにくくなります。
- 薬:抗ヒスタミン薬、一部の抗うつ薬、抗菌薬、抗てんかん薬、一部の抗がん剤、利尿薬、関節炎や甲状腺の治療薬などで味覚の異常が起こることがあります。
- 舌や口の病気:鉄欠乏性貧血や虫歯などに伴う舌の炎症、口内炎、歯ぐきの炎症、舌のやけどなど。
- 神経や脳の病気:ベル麻痺(顔面神経麻痺)、うつ病、けいれん性の病気など。
- 感染症:かぜ、インフルエンザ、COVID-19など。
- 心理的な要因も原因になることがあります。
顔面神経麻痺と味覚
舌の前方3分の2の味覚は、顔の筋肉を動かす顔面神経が伝えています。そのため、ベル麻痺(顔の片側が動かなくなる病気)では、麻痺した側の舌の前方で味が分からなくなることがよくあります。
ただし、舌の残りの部分の味覚は正常なため、味覚の異常に気づかないこともあります。
味覚障害の検査
- 電気味覚検査:舌に弱い電気刺激を与えて、味を感じる程度を調べます。
- ろ紙ディスク法:いろいろな種類・濃さの味の溶液をしみこませたろ紙を舌にのせて調べます。
- 血液検査:貧血の有無や、血液中の亜鉛の量を調べます。
甘味(砂糖)、酸味(レモン汁)、塩味(塩)、苦味のあるものを使って、簡単に味覚を確かめることもできます。

味覚障害の治療
- 亜鉛不足:栄養指導を行い、亜鉛の薬を処方します。
- 薬が原因:原因となる薬の中止、変更、減量を検討します。
- 全身の病気が原因:もとの病気の治療を行います。
自己判断で薬をやめるのではなく、必ず処方した医師に相談してから見直しましょう。
日常生活で気をつけること
- 舌をこすりすぎない:舌には味蕾がたくさんあるため、表面についた舌苔(ぜったい)をブラシなどで無理に取らないようにします。
- 口の乾燥に気をつける:口の乾きは味覚低下の大きな原因です。脱水を避け、喫煙を控えましょう。
- 危険に注意:嗅覚も低下している場合は、ガス漏れや傷んだ食べ物に気づきにくくなるため注意が必要です。
出典によって異なる点:亜鉛はどのくらい効くか
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、味覚障害の多くに亜鉛不足が関係しているとし、亜鉛不足が考えられる場合は栄養指導や亜鉛の薬を処方するとしています。MSDマニュアル家庭版は、味覚低下の原因として、強い口の乾燥や薬を中心に挙げています。
コクランのシステマティックレビュー(Kumbargere Nagrajら、2017年)は、味覚障害の治療に関する10件の試験(581人)をまとめました。原因不明または亜鉛不足による味覚障害では、亜鉛の補充で検査上の味覚が改善する傾向がみられましたが、根拠の質は非常に低いものでした。患者自身が感じる改善については結論を出せず、一部の試験では吐き気や腹痛などの副作用が報告されています。
亜鉛不足がある場合の補充は理にかなっていますが、すべての味覚障害に亜鉛が効くとは限らないため、原因を調べることが大切です。
味覚障害のポイント
- 味覚障害は、味が分からない、鈍い、変な味がするといった状態です。
- 風味は味覚と嗅覚の両方で感じるため、嗅覚の低下でも味が分かりにくくなります。
- 多くのケースで亜鉛不足が関係しています。
- 口の乾燥、薬、口の病気、ベル麻痺、感染症なども原因になります。
- 電気味覚検査、ろ紙ディスク法、血液検査で調べます。
- 原因に応じて、亜鉛の補充や薬の見直しを行います。
味覚障害についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
味覚障害の原因で多いものは何ですか?
多くのケースで血液中の亜鉛不足が関係しています。亜鉛不足の原因は、多い順に原因不明、薬、かぜ、全身の病気とされています。
薬で味覚障害が起こることはありますか?
はい。抗ヒスタミン薬、一部の抗うつ薬、抗菌薬、抗てんかん薬、利尿薬などで起こることがあります。薬の見直しは必ず医師に相談しましょう。
鼻が詰まると味が分からなくなるのはなぜですか?
食べ物の風味の多くは、味覚と嗅覚の両方で感じています。鼻が詰まって匂いが分からないと、味も分かりにくくなります。
突然味が分からなくなりました。どうすればよいですか?
突然の味覚の喪失はCOVID-19の初期症状の可能性があります。ほかの症状も含めて医療機関に相談しましょう。
味覚障害はどんな検査をしますか?
電気刺激を使う電気味覚検査、味の溶液を使うろ紙ディスク法、貧血や亜鉛の量を調べる血液検査などを行います。
舌の汚れはこすって取ったほうがよいですか?
舌には味蕾がたくさんあるため、舌苔をブラシなどで無理に取らないようにしましょう。
出典
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 · 口腔・咽頭の病気(味覚異常)
- MSDマニュアル家庭版 · 嗅覚と味覚の障害の概要
- Kumbargere Nagraj S, et al. Interventions for managing taste disturbances. Cochrane Database Syst Rev. 2017
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

