ストレートネックとは?
首の骨(頸椎)は7個の骨(椎骨)が積み重なってできていて、横から見ると前に向かってゆるやかなカーブ(前弯)を描いています。骨と骨のあいだには、クッションの役割をする椎間板があり、頸椎の中を脊髄が通っています。
ストレートネックは、このカーブが小さくなり、首の骨がまっすぐに近くなった状態を指す一般的な呼び方です。正式な病名ではなく、X線写真で見た首の骨の「形」を表した言葉といえます。
首の骨が年齢とともにすり減って変性すると、首全体や一部のカーブが小さくなったり失われたりすることが多く、それが首の痛みの原因だと考えられることがよくあります。ただし、後で紹介するように、こうした形の変化があっても痛みが出ないことも少なくありません。
ストレートネックで気になる症状:首の痛みと肩こり
ストレートネックといわれた人が気にする症状の多くは、首の痛みや肩こりです。日本整形外科学会は、肩こりを、首すじや首のつけ根から肩・背中にかけて張る、凝る、痛むといった感じとし、頭痛や吐き気を伴うこともあると説明しています。中心になるのは、首の後ろから肩、背中にかけて広がる僧帽筋という筋肉です。
- 首の片側の痛み、動かすと強まり休むと和らぐ痛み
- 首を左右に回しにくい、こわばる
- 首から肩、背中にかけての張りや凝り
- 腕や手に広がる痛み、しびれ、力が入りにくい(神経が圧迫されているサイン)
首の痛みは腰痛と同じようにとてもよくみられる症状で、年齢とともに多くなります。腕にまで広がる痛みやしびれは、首の椎間板ヘルニアや頸椎症などで神経の根元が圧迫されているときに起こりやすい症状です。
首の痛み・肩こりの主な原因
首は柔軟によく動く一方で、重い頭を支える役割があり、すり減りやけがが起こりやすい部位です。姿勢が悪いと、頭を支えるのにより大きな負担がかかります。首の痛みのよくある原因は次のとおりです。
- 筋肉のけいれんや挫傷、靭帯のねんざ:物を持ち上げる、運動する、思わぬ方向に体が動くといった日常の動作でも起こります。
- 変形性関節症、頸椎症:首の骨や関節、椎間板が年齢とともに変性し、神経が締めつけられることもあります。
- 椎間板ヘルニア:椎間板の外側が裂けて中身が飛び出し、神経を圧迫します。
- 線維筋痛症:首以外にも広い範囲に慢性の痛みが出ます。
肩こりについて日本整形外科学会は、首や背中が緊張するような姿勢での作業、猫背や前かがみの姿勢、運動不足、精神的なストレス、なで肩、長時間同じ姿勢を続けること、ショルダーバッグ、冷房などを原因に挙げています。また、首の骨の病気、高血圧、目や耳鼻の病気、肩関節の病気などの症状の一つとして肩こりが現れることも少なくありません。
すぐに受診すべき危険なサイン
首の痛みの大半は筋肉や靭帯の問題ですが、まれに重い病気が隠れていることがあります。次のようなサインがある場合は、すぐに受診してください。
- 腕や脚の力が入らない、感覚が鈍い(神経の障害のおそれ)
- 発熱、寝汗
- 頭痛、意識がぼんやりする、混乱している
- 胸の不快感、突然の発汗や息苦しさ(心臓の病気のおそれ)
- 運動をすると首の痛みが出る、強まる
- 飲み込みにくい、飲み込むと痛む
首の動脈の内側が裂ける病気(動脈解離)、背骨の腫瘍や感染症、髄膜炎、心臓発作や狭心症などが、まれな原因として挙げられています。安静にしても治まらず夜も続く痛み、だんだん強くなる痛みも注意が必要です。危険なサインがなくても、痛みが強く市販の鎮痛薬で治まらない場合は、翌日ごろまでには受診しましょう。
首の痛みの検査と診断
医師はまず、痛みの場所や始まり方、これまでの病気について尋ね、首の動きや神経の働き(筋力、反射、感覚)を調べます。多くの場合、問診と診察で原因の見当がつきます。
- 検査をしないことも多い:首の痛みの大半は筋肉のけいれんや挫傷によるもので、診察だけで判断でき、検査は必要ないことがよくあります。
- X線検査:関節炎などの骨の変化を確かめるのに役立ちます。首の骨のカーブの形もここで見えます。
- MRI検査・CT検査:しびれや筋力低下などの神経の症状がある場合に行います。椎間板や神経の様子はMRIの方がよくわかります。
- 筋電図検査・神経伝導検査:神経の根元の圧迫を確かめるために行うことがあります。
日本整形外科学会は肩こりの診断について、問診や神経の診察、とくに僧帽筋の押したときの痛みや緊張、肩の動き、首の骨の病気の有無を確かめ、必要に応じてX線やMRI、筋電図、血圧測定などを行うとしています。

ストレートネックの治し方①:姿勢・枕・温める
ほとんどの首の痛みは、生活の工夫と市販の鎮痛薬で和らぎ、完全に治っていきます。
- 同じ姿勢を続けない:とくにパソコンやスマートフォンなどを使いながら長時間座り続けると、症状が悪化することがあります。こまめに休憩をはさみましょう。
- 姿勢を整える:立つとき、座るとき、寝るときのすべてで、首に負担のかからない姿勢を心がけます。
- 枕の工夫:横向きで寝る人は、頭と首がまっすぐになるよう枕で支えます。あお向けの人は、首と頭が高くなりすぎない枕を使います。うつ伏せ寝は避けましょう。
- 温める・冷やす:痛む場所を温めたり冷やしたりすると楽になることがあります。日本整形外科学会は、肩こりには蒸しタオルや入浴で温め、筋肉の血行をよくしてリラックスすることをすすめています。
- 無理のない範囲で動く:耐えられる程度の軽い運動を続けます。
痛みが強いときは、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの市販の鎮痛薬が役立ちます。
ストレートネックの治し方②:首と肩まわりの運動
医師や理学療法士は、首の痛みに対して、ストレッチと、背中の上部などの筋力を強化する運動をすすめることがあります。日本整形外科学会も、肩こりの治療の一つとして筋力強化の運動療法を挙げています。
首の運動療法の研究をまとめたコクランのシステマティックレビュー(Grossら、2015年、27件の試験)によると、慢性の首の痛みでは、首・肩・肩甲骨まわりと腕の筋力トレーニングで、運動直後と短期的に痛みが中程度から大きく改善するという中程度の質の根拠がありました。首・肩・肩甲骨まわりの筋力強化とストレッチを組み合わせた運動でも、痛みと首の機能の改善がみられました。
一方、ストレッチだけ、呼吸の運動だけ、全身の体力づくりだけでは、痛みや機能が変わらない可能性があるという、質の低い根拠も示されています。運動は痛みのない範囲から始め、痛みやしびれが強まる場合は中止して、医師や理学療法士に相談してください。

医療機関で行われる治療
- 薬:鎮痛薬で足りない場合、短期間に限ってオピオイド鎮痛薬が使われることがありますが、長く使うと痛みに敏感になる、眠気や便秘、依存などのおそれがあります。筋弛緩薬も使われますが、効果については意見が分かれていて、高齢者には副作用が出やすいためすすめられません。
- 神経の症状がある場合:腕に広がる痛みや筋力低下がある場合は、ステロイドの飲み薬や注射が使われることがありますが、長期的な効果や副作用の面で意見が分かれています。
- 首の装具(頸椎カラー):首を固定して痛みを和らげるために使うことがあります。
- 物理療法・徒手療法:日本整形外科学会は、肩こりの治療としてマッサージ、温熱療法、運動療法、安静、湿布薬や筋弛緩薬、局所注射などを挙げています。
椎間板ヘルニアで脊髄や神経が圧迫され、強い筋力低下や痛みがある場合は、手術が検討されます。ただし、手術を受けた人と手術以外の治療を受けた人で、治療の成功率は同じくらいとされています。
出典によって異なる点:首のカーブの形は痛みの原因なのか
一般向けの情報では、首の骨のカーブが少ない「ストレートネック」そのものが首の痛みや肩こりの原因として説明されることがよくあります。MSDマニュアル家庭版は、ストレートネックという言葉は使わず、首の痛みの大半は筋肉のけいれんや挫傷によるもので、姿勢の悪さや長時間座り続けることが症状を悪化させるとしています。
Grobらの研究(2007年)は、45歳以上の107人の首のX線写真を調べ、過去1年に首の痛みがあった54人となかった53人を比べました。首全体のカーブ、一つひとつの骨のあいだの角度、首がまっすぐ(ストレート)または逆向きに曲がっている人の割合のいずれにも、二つのグループで差はありませんでした。痛みのある人の中でも、痛みの強さや続いている期間とカーブの形には関連がありませんでした。研究者は、こうした形の異常は「たまたま見つかったもの」と考えるべきで、必ずしも痛みの原因を示すものではないとしています。
X線写真でストレートネックといわれても、それだけで痛みの原因が決まるわけではなく、筋肉の負担や姿勢、ほかの病気がないかを含めて考えることが大切です。
ストレートネックのポイント
- ストレートネックは、首の骨の前向きのカーブが小さく、まっすぐに近い状態を指す一般的な呼び方です。
- 研究では、首のカーブの形と首の痛みのあいだに、はっきりした関係は見つかっていません。
- 首の痛みの多くは筋肉や靭帯の負担によるもので、肩こりには姿勢、運動不足、ストレス、長時間同じ姿勢などが関わります。
- 腕や脚の力が入らない、しびれる、発熱、強い頭痛、胸の不快感などを伴う場合は、すぐに受診してください。
- 長時間同じ姿勢を避け、枕を工夫し、温める・冷やす、鎮痛薬を使うといった対処で多くは和らぎます。
- 首・肩・肩甲骨まわりの筋力強化の運動には、慢性の首の痛みを和らげる一定の根拠があります。
ストレートネックについてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
ストレートネックは病気ですか?
正式な病名ではなく、首の骨(頸椎)の前向きのカーブが小さくなり、X線写真でまっすぐに近く見える状態を指す一般的な呼び方です。カーブが少なくても痛みのない人は多くいます。
ストレートネックだと首が痛くなりますか?
45歳以上の人を調べた研究では、首の痛みがある人とない人で、首のカーブの形に差はありませんでした。形だけで痛みの原因を決めることはできず、筋肉の負担や姿勢、ほかの病気がないかを含めて考える必要があります。
肩こりの原因は何ですか?
日本整形外科学会は、首や背中が緊張する姿勢での作業、猫背や前かがみ、運動不足、精神的なストレス、なで肩、長時間同じ姿勢を続けること、ショルダーバッグ、冷房などを挙げています。首の骨の病気や高血圧、目の病気などの症状として現れることもあります。
どんな枕がよいですか?
横向きで寝る人は頭と首がまっすぐになるよう支える枕、あお向けで寝る人は首と頭が高くなりすぎない枕がすすめられています。うつ伏せ寝は避けましょう。
ストレッチや体操は効きますか?
研究のまとめでは、慢性の首の痛みに対して、首・肩・肩甲骨まわりの筋力トレーニングや、筋力強化とストレッチの組み合わせに一定の効果が示されています。一方、ストレッチだけでは痛みが変わらない可能性も示されています。
すぐに受診すべきなのはどんなときですか?
腕や脚の力が入らない・しびれる、発熱、寝汗、頭痛、意識がぼんやりする、胸の不快感や急な発汗・息苦しさ、運動で強まる首の痛み、飲み込みにくさがある場合は、すぐに受診してください。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 首の痛み
- 日本整形外科学会 · 症状・病気をしらべる「肩こり」
- Grob D, Frauenfelder H, Mannion AF. The association between cervical spine curvature and neck pain. Eur Spine J. 2007
- Gross A, et al. Exercises for mechanical neck disorders. Cochrane Database Syst Rev. 2015
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

