耳管開放症とは?
耳管は、鼻の奥(上咽頭)と中耳をつなぐ細い管です。ふだんは閉じていて、つばを飲み込んだときなどに短い時間だけ開きます。
耳管開放症は、この耳管が一定時間以上開いたままになることで、さまざまな耳の症状が起こる病気です。典型的な症状があれば疑うことは難しくありませんが、決定的な治療法がなく、症状に合わせて最適な治療を探していくことも少なくありません。
耳管開放症の症状
- 自声強聴:自分の声が耳に大きく響いて聞こえる。
- 耳閉感:耳がこもった、ふさがった感じがする。
- 自己呼吸音聴取:自分の呼吸の音が耳の中で聞こえる。
これらの症状は、横になったり前かがみになったりすると、はっきり軽くなるのが特徴です。

耳管開放症の原因ときっかけ
耳管開放症には、大きく分けて2つのタイプがあります。
- 周りの組織の変化によるもの:体重減少、脱水、ホルモンの変化などで、耳管を取り巻く組織からの圧が減り、耳管が開きやすくなります。この場合、鼓膜は正常のことが多いとされています。
- 耳管そのものが弱いもの:耳管の構造自体がもろく、閉じにくくなるタイプで、鼓膜が薄くなったり、へこんだりしていることが多くみられます。
発症年齢には、男性では60歳代、女性では30歳代にピークがあると報告されています。
鼻すすり癖との関係
耳管開放症の人の中には、鼻をすすって耳管を一時的に閉じ、症状を和らげる癖をもつ人がいます。
- 以前は鼻をすすれば楽になっていたのに、すすっても改善しにくくなったことが受診のきっかけになることが多いとされています。
- 鼻をすすり続けると中耳の圧が下がり、鼓膜の一部がへこんでいくことが心配されます。
- 鼻すすり癖があるかどうかで、治療の進め方が変わります。
耳管開放症の診断基準
日本耳科学会の診断基準案2016では、次の3つの項目で判断します。
- 1. 自覚症状:自声強聴、耳閉感、呼吸音聴取の1つ以上がある。
- 2. 耳管を閉じる処置で症状が明らかに改善する:横になる・前かがみになるなどの姿勢の変化、または鼻の奥の耳管の入り口を綿棒やジェルでふさぐ処置。
- 3. 耳管が開いている客観的な所見:呼吸に合わせた鼓膜の動きや、耳管機能検査での異常など。
1〜3がすべてそろえば「確実例」、1に加えて2か3があれば「疑い例」とされます。数回の診察を経て初めて診断が確定することもあります。
ほかの病気との見分け
自分の声が響く症状は、急な感音難聴の後遺症などでもみられることがあります。その場合、耳管をふさいでも症状ははっきり改善しません。
診断基準でも、耳管を閉じる処置で症状が改善しなければ、耳管開放症は否定されるとしています。受診時に症状がない場合は、横になったときに症状が変わるかどうかを医師に伝えることが診断に役立ちます。
鼻すすり癖がない場合の治療
- 説明と生活指導:まず病気の仕組みを説明して不安をやわらげます。原因が耳だと分かって安心する人も多くいます。体重減少がきっかけなら体重を戻すことをすすめ、妊娠中は出産後に軽くなることが多いことを説明します。
- 薬:生活指導で不十分な場合は、漢方薬などの薬物療法を検討します。生理食塩水の点鼻が有効だったという報告もあります。
- 処置:耳管の入り口に薬を塗って粘膜を腫らす処置や、鼓膜にテープを貼る方法などがあります。効果は一時的で、症状が再び出ることもあります。
- 手術:これらの保存的な治療が効かない場合は、耳管に器具を入れる手術などを検討します。
鼻すすり癖がある場合の治療
- 若い人:中耳の圧が下がって鼓膜のへこみが進むおそれがある場合は、まず鼻すすりをやめるよう勧められます。
- 高齢の人:長年すすっていても鼓膜の状態が落ち着いている場合は、必ずしも今から鼻すすりをやめる必要があるとは限らず、すすり癖のない人に準じた治療が行われることもあります。
鼻すすり癖があるかどうかと鼓膜の状態によって方針が大きく変わるため、耳鼻咽喉科で鼓膜をよく診てもらうことが大切です。
出典によって異なる点:同じ診断でも治療は分かれる
日本耳科学会の診断基準案2016は、症状、耳管を閉じる処置による改善、客観的な所見の3つで、耳管開放症を「確実例」と「疑い例」に分けています。基準はあくまで「案」で、今後も改訂されていくと考えられています。
日本耳鼻咽喉科学会会報の総説(水田ら、2017年)は、体重減少や妊娠をきっかけとするタイプも、鼻すすり癖をもつタイプも同じ基準で診断され得るものの、病気の成り立ちが異なるため治療のアプローチは違うと指摘しています。また、鼻すすり癖が鼓膜の病気の原因になるかどうかは、専門家の間でも意見が分かれているとしています。
診断がついたあとも、きっかけや鼻すすり癖の有無、年齢、鼓膜の状態に合わせて治療を選ぶことが大切です。
耳管開放症のポイント
- 耳管が開いたままになり、自分の声が響く、耳がこもる、呼吸音が聞こえるといった症状が出ます。
- 横になったり前かがみになったりすると症状が軽くなるのが特徴です。
- 体重減少、脱水、妊娠などがきっかけになることがあります。
- 症状、耳管を閉じる処置での改善、客観的な所見で診断します。
- まず説明と生活指導、不十分なら薬や処置、手術を検討します。
- 鼻すすり癖があると治療の進め方が変わるため、医師に伝えましょう。
耳管開放症についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
耳管開放症ではどんな症状が出ますか?
自分の声が耳に大きく響く、耳がこもる、自分の呼吸の音が聞こえる、といった症状が出ます。
横になると症状が楽になるのはなぜですか?
横になったり前かがみになったりすると、開いていた耳管が閉じやすくなるためです。この変化は診断の重要な手がかりになります。
耳管開放症のきっかけは何ですか?
体重減少、脱水、ホルモンの変化、妊娠などがきっかけになることが多いとされています。
妊娠中に耳管開放症になりました。治りますか?
妊娠がきっかけの場合は、出産後に軽くなることが多いとされています。
鼻をすすると楽になるのですが、続けてもよいですか?
鼻をすすり続けると鼓膜がへこみ、中耳の病気につながるおそれがあります。特に若い人では、やめるよう勧められることがあります。耳鼻咽喉科で相談しましょう。
耳管開放症の治療にはどんなものがありますか?
説明と生活指導、漢方薬などの薬、生理食塩水の点鼻、耳管の入り口や鼓膜への処置、効かない場合の手術などがあります。
出典
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

