バセドウ病とは?
甲状腺は首の前側にある臓器で、体の化学反応の速さ(代謝)を調節する甲状腺ホルモンをつくっています。甲状腺ホルモンは、心拍数、カロリーの消費、体温、消化など多くの働きに影響します。
バセドウ病は、自分の体を攻撃する抗体がつくられる自己免疫の病気の一つです。多くの自己免疫の病気では抗体が細胞を傷つけますが、バセドウ病では抗体が甲状腺を刺激し続けるため、甲状腺ホルモンが過剰につくられます。これを甲状腺機能亢進症といい、バセドウ病はその最も多い原因です。
甲状腺機能亢進症は米国では人口の約1%にみられ、どの年代でも起こりますが、20〜50歳の女性に多い傾向があります。
バセドウ病の症状
甲状腺ホルモンが過剰になると、体のさまざまな働きが速まり、次のような症状が現れます。
- 脈が速い、血圧が上がる、動悸(不整脈によることもあります)
- 汗を多くかく、体がほてる
- 手のふるえ
- 神経過敏、不安
- 眠れない
- 食欲が増すのに体重が減る
- 疲れや脱力を感じるのに、活動量が増える
- 便通の回数が増える、下痢
- 女性では月経周期の変化
多くの人では甲状腺が腫れて大きくなります(甲状腺腫)。首の前が腫れて見えることで気づくこともあります。
バセドウ病に特有の目と皮膚の症状
バセドウ病では、ほかの原因による甲状腺機能亢進症にはない、目と皮膚の症状が現れることがあります。
- 目の症状(甲状腺眼症):目のまわりが腫れる、涙が増える、目がごろごろする、光をまぶしく感じる。眼球が前に突き出る(眼球突出)、ものが二重に見える(複視)こともあります。
- 皮膚の症状:すねなどの皮膚がオレンジの皮のように厚くなり、かゆみが出て、押すと硬く感じます。
眼球が突き出るのは、眼球の入っている骨のくぼみ(眼窩)で炎症が起こるためです。眼球を動かす筋肉にも炎症が起こると、目の動きがそろわなくなり、ものが二重に見えます。眼球が突き出てまぶたが完全に閉じなくなると、目が乾いたり、細かいごみで傷ついたりします。
高齢者の甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は高齢者でより多くみられ、ほかの病気を抱えていることが多いため、影響が深刻になりやすいとされています。高齢者では、典型的な症状が現れにくいのが特徴です。
- 最も多い症状は体重の減少と疲れ
- 脈は速くならないこともあり、眼球の突出も少ない
- 心房細動などの不整脈、狭心症や心不全、便秘が比較的よくみられる
- 弱々しさ、混乱、引きこもり、気分の落ち込みだけが目立つこともある
高齢者では、心臓の病気に使う薬(アミオダロン)など、甲状腺機能亢進症の原因になる薬を使っていることも多く、症状が他の病気と紛らわしいため、見逃されないよう注意が必要です。
すぐに受診すべき「甲状腺クリーゼ」
甲状腺クリーゼは、甲状腺の働きが突然極端に高まる状態で、命にかかわる緊急事態です。体のあらゆる働きが危険なほど速まり、心臓に大きな負担がかかって、命にかかわる不整脈や極端な心拍数の上昇が起こることがあります。
甲状腺機能亢進症が治療されていない、または治療が不十分なときに、感染症、けが、手術、コントロールが悪い糖尿病、妊娠や出産などのストレスがきっかけで起こります。
高い熱、ひどい動悸、意識の変化などがみられる場合は、すぐに救急車を呼んでください。治療は通常、集中治療室で行われます。また、バセドウ病と診断されていなくても、動悸、汗、手のふるえ、体重減少などが続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
バセドウ病の診断
医師は、症状や診察での所見(脈が速い、血圧が高い、甲状腺の腫れ、目の症状など)から甲状腺機能亢進症を疑います。
- 血液検査(甲状腺機能検査):診断を確定するために行います。多くの場合、まず甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測ります。甲状腺が働きすぎていると、TSHは低くなります。あわせて甲状腺ホルモンの量も調べます。
- 甲状腺の画像検査:結節(しこり)が原因かどうかを確かめたり、バセドウ病の評価に役立てたりするために行います。
まれに、脳の下垂体が働きすぎていて、TSHが正常または高くなる場合もあります。原因によって治療が変わるため、どの病気による甲状腺機能亢進症なのかを見きわめることが大切です。

バセドウ病の治療①:抗甲状腺薬とベータ遮断薬
甲状腺機能亢進症は、原因に応じた治療で、多くの場合は症状をなくすか大きく和らげることができます。治療しないで放っておくと、心臓などの臓器に大きな負担がかかります。
- 抗甲状腺薬:チアマゾールとプロピルチオウラシルが最もよく使われる飲み薬で、甲状腺ホルモンの産生を抑えます。プロピルチオウラシルは若い人で肝臓を傷めるおそれがあるため、通常はチアマゾールが選ばれます。最初は多めの量から始め、血液検査を見ながら調整し、通常は2〜3か月以内に甲状腺の働きが落ち着きます。量が多いほど速く効きますが、副作用も出やすくなります。
- 主な副作用:発疹などのアレルギー反応、まれに白血球が減って感染症にかかりやすくなること、肝臓の障害(主にプロピルチオウラシル)。熱が出るなど気になる症状があれば、早めに主治医に連絡してください。
- ベータ遮断薬:プロプラノロールなどの薬で、脈を遅くし、ふるえや不安を抑えます。ほかの治療の効果が出るまでのあいだ、症状を和らげるために使われます。
抗甲状腺薬は胎盤を通るため、妊娠中に使う場合は、赤ちゃんの甲状腺への影響に注意しながら慎重に経過を見ます。
バセドウ病の治療②:放射性ヨードと手術、目の症状の治療
- 放射性ヨード:放射性のヨウ素を飲み、甲状腺の一部またはすべてを壊す治療です。入院はほとんど必要ありませんが、治療後しばらくは乳幼児や妊婦に近づかない、パートナーと離れて寝る、6〜12か月程度は妊娠を避けるといった注意が必要です。治療を受けた人の多くは、その後一生、甲状腺ホルモンを補う薬を飲むことになります。妊娠中・授乳中は行いません。放射性ヨードでがんが増えることは確認されていません。
- 手術(甲状腺摘出術):甲状腺の一部またはすべてを切除します。とくに子どもや若い人、甲状腺腫が大きい人、薬にアレルギーや重い副作用がある人、放射線を避けたい人の選択肢になります。手術を受けた人の90%以上で甲状腺機能亢進症は永続的に抑えられますが、術後に甲状腺の働きが低下し、ホルモンの補充が一生必要になることがよくあります。まれに声帯の麻痺や副甲状腺の損傷が起こります。
目の症状には、寝るときに頭を高くする、点眼薬を使う、まぶたをテープで閉じて寝るといった対策が役立ちます。ものが二重に見える場合はプリズム眼鏡で軽くなることがあり、重い場合はステロイドの飲み薬や放射線治療、手術が必要になります。軽い目の症状は、数か月から数年で自然に消えることもよくあります。
出典によって異なる点:抗甲状腺薬はどのくらい続けるのか
MSDマニュアル家庭版は、抗甲状腺薬は通常2〜3か月以内に甲状腺の働きを落ち着かせると説明する一方で、甲状腺機能亢進症の治療として最も一般的なのは放射性ヨードだとしています。薬を何か月続けるべきかについては、具体的な期間を示していません。
コクランのシステマティックレビュー(Abrahamら、2010年)は、バセドウ病の抗甲状腺薬の量や飲み方、期間を比べたランダム化試験26件(3,388人)をまとめました。量を調整しながら飲み続ける方法では、12か月の治療は6か月より再発が少なく、18か月を超えて延ばしても利点はありませんでした。最適な期間は12〜18か月とされています。多めの抗甲状腺薬に甲状腺ホルモン薬を加える方法と、量を調整する方法では、再発率はどちらも約半数(51%と54%)で変わらず、副作用は前者で多くみられました。
薬で甲状腺の働きが落ち着いた後も、治療は1年以上続けるのが一般的で、それでも約半数で再発がみられるという点は、治療法を選ぶうえで知っておきたい情報です。
バセドウ病のポイント
- バセドウ病は、甲状腺を刺激する抗体によって甲状腺ホルモンが過剰になる自己免疫の病気で、甲状腺機能亢進症の最も多い原因です。
- 動悸、汗、手のふるえ、不眠、体重減少、下痢などのほか、目の突出や複視、すねの皮膚の変化がみられることがあります。
- 高齢者では、体重減少や疲れ、不整脈などが中心で、典型的な症状が出にくいことがあります。
- 高い熱、ひどい動悸、意識の変化は甲状腺クリーゼのおそれがあり、すぐに救急車を呼んでください。
- 診断は血液検査(TSHと甲状腺ホルモン)で確定し、抗甲状腺薬、放射性ヨード、手術で治療します。
- 研究では、抗甲状腺薬の最適な期間は12〜18か月で、治療後も約半数で再発がみられました。
バセドウ病についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
バセドウ病の原因は何ですか?
免疫のしくみの異常によって、甲状腺を刺激する抗体がつくられることが原因です。この抗体が甲状腺を刺激し続けるため、甲状腺ホルモンが過剰になります。
バセドウ病の初期症状にはどんなものがありますか?
動悸、汗をかきやすい、手のふるえ、イライラや不安、眠れない、食べているのに体重が減る、便通の回数が増えるなどがあります。首の前の腫れや、目の症状で気づくこともあります。
バセドウ病で目が出るのはなぜですか?
眼球の入っている骨のくぼみで炎症が起こり、眼球が前に押し出されるためです。眼球を動かす筋肉にも炎症が起こると、ものが二重に見えることがあります。
バセドウ病は治りますか?
抗甲状腺薬、放射性ヨード、手術のいずれかで治療し、多くの場合は症状をなくすか大きく和らげることができます。研究では、薬の治療を12〜18か月続けても約半数で再発がみられたため、主治医と相談しながら治療法を選びます。
抗甲状腺薬の副作用は?
発疹などのアレルギー反応、まれに白血球が減って感染症にかかりやすくなること、肝臓の障害(主にプロピルチオウラシル)があります。熱が出るなど気になる症状があれば、早めに主治医に連絡してください。
妊娠を考えている場合は?
抗甲状腺薬は胎盤を通るため、妊娠中は慎重に経過を見ます。放射性ヨードは妊娠中・授乳中には行わず、治療後6〜12か月程度は妊娠を避けるとされています。妊娠を考えている場合は、早めに主治医に相談してください。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 甲状腺機能亢進症
- Abraham P, et al. Antithyroid drug regimen for treating Graves' hyperthyroidism. Cochrane Database Syst Rev. 2010
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

