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甲状腺の病気 MediBilbao Salud

甲状腺機能低下症とは?症状・原因・治療と、高齢者の注意点

甲状腺機能低下症は、甲状腺の働きが落ちて甲状腺ホルモンが足りなくなり、体のさまざまな働きがゆっくりになる病気です。とくに高齢の女性に多く、症状がかすかで少しずつ現れるため、年齢のせいやうつ病と思われて見過ごされることもあります。症状、原因、診断、治療を整理します。

テーマ
栄養
更新日
読了時間
8分
監修
Itziar Gotxi Erezuma医師 · 耳鼻咽喉科専門医 · ビスカヤ県医師会 登録番号 484809757
医師が患者の首の前の甲状腺に触れて診察している様子
甲状腺機能低下症の症状は、かすかで少しずつ現れます。AIで作成したイラストです。

甲状腺機能低下症とは?

甲状腺は首の前にある臓器で、体の化学反応の速さ(代謝)を調節する甲状腺ホルモンをつくっています。甲状腺ホルモンは、心拍数、カロリーの消費、皮膚の修復、成長、体温、妊娠のしやすさ、消化など多くの働きに影響します。

甲状腺ホルモンの量は、脳の下垂体から出る甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されています。甲状腺ホルモンが足りないと、下垂体はTSHを多く出して甲状腺を刺激しようとします。

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンが十分につくられず、体の働きが遅くなる病気です。よくみられる病気で、とくに高齢者、なかでも女性に多く、高齢女性の約10%にみられます。非常に重い甲状腺機能低下症は「粘液水腫」と呼ばれます。

甲状腺機能低下症の原因

甲状腺そのものの病気によって起こるもの(原発性)が大半で、主な原因は次のとおりです。

  • 橋本病:甲状腺が少しずつ壊されていく自己免疫の病気で、米国では最も一般的な原因です。通常は永続的な甲状腺機能低下症になります。
  • 甲状腺の炎症(甲状腺炎):ウイルス感染による亜急性甲状腺炎や出産後の甲状腺炎では、多くは一時的です。
  • 治療によるもの:甲状腺機能亢進症や甲状腺がんの治療(放射性ヨード、薬、手術)、頭や首への放射線治療。
  • ヨウ素不足:食塩にヨウ素が加えられていない国では、最も一般的な原因です。
  • 遺伝性の病気:甲状腺がホルモンを十分につくれない、まれな病気。

まれに、下垂体からTSHが十分に出ないために起こること(続発性)もあります。

甲状腺機能低下症の症状

甲状腺ホルモンが足りなくなると、体の働きが遅くなります。症状はかすかで少しずつ現れ、うつ病の症状と間違われることもあります。

  • 疲れやすい、体重が増える、便秘、筋肉がつる
  • 寒さに耐えられない(寒がり)
  • 顔の表情が乏しくなる、声がかすれる、話し方がゆっくりになる
  • まぶたが垂れる、目と顔が腫れぼったくなる
  • 髪が薄く粗くなり乾燥する、皮膚が乾燥して厚くなる、まゆの外側が抜ける
  • 脈が遅くなる、手がチクチクする(手根管症候群)

血液中のコレステロールが高くなることも多くあります。とくに高齢者では、錯乱やもの忘れなど、認知症と間違えられやすい症状が出ることもあります。

高齢者の甲状腺機能低下症

高齢者の多くに、ある程度の甲状腺機能低下症がみられ、女性の約10%、男性の約6%に起こるとされています。

高齢者では、体重増加、筋肉のけいれん、手のピリピリ感、寒がりといった典型的な症状が少なく、あっても目立たないことがあります。代わりに次のような典型的でない症状が現れることがあります。

  • 体重の減少、食欲の低下
  • 錯乱
  • 関節のこわばりや痛み、筋肉の痛み
  • 脱力感、転びやすくなる

こうした症状は甲状腺の病気がない高齢者にもよくみられるため、原因が甲状腺機能低下症だと気づかれにくいことがあります。70歳以上の人に毎年検査をすすめる専門家もいますが、症状のない人には検査を行わないよう推奨している医療機関もあり、意見は分かれています。

すぐに受診すべき「粘液水腫性昏睡」

甲状腺機能低下症を治療しないでいると、やがて貧血、低体温、心不全を起こし、錯乱、意識がもうろうとする状態を経て、昏睡(粘液水腫性昏睡)に至ることがあります。

粘液水腫性昏睡は命にかかわる合併症で、呼吸が遅くなり、けいれんが起こり、脳への血流が減少します。甲状腺機能低下症の人が、寒さにさらされる、感染症、けが、手術、脳の働きを抑える鎮静薬などをきっかけに起こすことがあります。

強い眠気や意識の変化、極端な低体温がみられる場合は、すぐに救急車を呼んでください。緊急時には、甲状腺ホルモンを点滴で投与します。また、疲れや寒がり、体重増加、便秘などが続く場合は、早めに医療機関で血液検査を受けましょう。

甲状腺機能低下症の診断

症状や、脈が遅いといった診察での所見から甲状腺機能低下症が疑われます。

  • TSHの測定:通常は、この1種類の簡単な血液検査で診断できます。甲状腺の働きが落ちると、TSHの値が高くなります。
  • 甲状腺ホルモン(T4)の測定:まれに下垂体からTSHが十分に出ないことが原因の場合は、T4と遊離T4を測ります。どちらも低ければ診断の裏づけになり、下垂体の検査や画像検査を行います。

高齢者では症状がはっきりしないことが多いため、気になる症状があれば、血液検査で甲状腺の働きを確かめてもらうことが大切です。

採血を受ける人
診断は、TSHを測る血液検査で行います。AIで作成したイラストです。

甲状腺機能低下症の治療:甲状腺ホルモン補充療法

治療は、足りない甲状腺ホルモンを飲み薬で補うことです。

  • レボチロキシン(合成T4):ホルモン補充に最も望ましいとされる薬です。
  • 動物の甲状腺を乾燥させた製剤:錠剤に含まれるホルモンの量がばらつくため、合成T4ほど十分な効果が得られず、あまり使われません。

ホルモンを一度に多く飲みすぎると重い副作用が起こることがあるため、少量から始め、血液中のTSHが正常に戻るまで少しずつ増やします。高齢者では副作用のリスクが高いため、始める量も増やすペースもとくに控えめにします。最終的に多めの量が必要になることもあります。

妊娠中は必要な量が増えます。妊娠を考えている人や妊娠がわかった人は、早めに主治医に伝えてください。甲状腺機能低下症の多くの人は、生涯にわたってホルモンの補充を続ける必要があり、定期的な血液検査で量を確かめます。

軽い段階(潜在性甲状腺機能低下症)は治療すべきか

血液検査でTSHがやや高めでも、はっきりした症状がない軽い段階は「潜在性甲状腺機能低下症」と呼ばれます。健康診断などで見つかることもあり、ホルモンの補充を始めるべきかどうかがよく問題になります。

この段階の扱いは、年齢、TSHの値、症状の有無、妊娠の希望などによって変わります。治療を始めるかどうかは、主治医とよく相談して決めることが大切です。次の章で紹介するように、症状の改善を目的とした治療の効果については、研究で慎重な結果が示されています。

出典によって異なる点:ホルモン補充は誰にでも役立つのか

MSDマニュアル家庭版は、甲状腺機能低下症の人は生涯にわたって甲状腺ホルモンの補充を受ける必要があるとし、TSHが正常に戻るまで量を調整すると説明しています。

Fellerらの系統的レビューとメタアナリシス(2018年)は、妊娠していない成人の潜在性甲状腺機能低下症を対象に、甲状腺ホルモンと偽薬または無治療を比べたランダム化試験21件(2,192人)をまとめました。3〜18か月の治療で、ホルモンを飲んだ人のTSHは基準範囲に下がりましたが、全般的な生活の質や、疲れなどの甲状腺に関連する症状は改善しませんでした。根拠の質は中程度から高いと評価され、潜在性甲状腺機能低下症の成人に一律にホルモン補充を行うことは支持されないと結論づけています。

はっきりした甲状腺機能低下症ではホルモン補充が治療の基本ですが、軽い段階では、数値を整えても症状がよくなるとは限らない、という違いがあります。

甲状腺機能低下症のポイント

  • 甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンが足りなくなり、体の働きがゆっくりになる病気で、高齢の女性に多くみられます。
  • 主な原因は橋本病で、甲状腺炎、甲状腺の治療、ヨウ素不足なども原因になります。
  • 疲れ、体重増加、便秘、寒がり、むくみ、声のかすれ、皮膚や髪の乾燥などが少しずつ現れます。
  • 高齢者では症状が典型的でなく、認知症やうつ病と間違われることがあります。
  • TSHの血液検査で診断し、レボチロキシンを少量から始めて量を調整します。多くは生涯の補充が必要です。
  • 潜在性甲状腺機能低下症では、ホルモン補充で症状や生活の質が改善しなかったという研究があります。

甲状腺機能低下症についてよくある質問

回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。

甲状腺機能低下症の初期症状は?

疲れやすさ、体重増加、便秘、寒がり、筋肉がつる、肌や髪の乾燥などが少しずつ現れます。かすかな症状のため、年齢のせいやうつ病と思われて見過ごされることもあります。

甲状腺機能低下症の原因で多いものは?

米国などで最も多い原因は、甲状腺が少しずつ壊されていく自己免疫の病気である橋本病です。ほかに甲状腺炎、甲状腺機能亢進症や甲状腺がんの治療、ヨウ素不足、頭や首への放射線治療などがあります。

どんな検査で診断しますか?

通常はTSHを測る1回の血液検査で診断できます。甲状腺の働きが落ちるとTSHが高くなります。下垂体が原因と考えられる場合は、甲状腺ホルモン(T4)も測ります。

薬は一生飲む必要がありますか?

多くの人では、生涯にわたって甲状腺ホルモンの補充を続ける必要があります。ただし、亜急性甲状腺炎や出産後の甲状腺炎などでは、一時的なこともあります。

妊娠中はどうなりますか?

妊娠中は甲状腺ホルモンの必要量が増えるため、薬の量を増やす必要があります。妊娠を考えている場合や妊娠がわかった場合は、早めに主治医に伝えてください。

TSHが少し高いだけでも治療が必要ですか?

TSHがやや高めではっきりした症状がない潜在性甲状腺機能低下症では、研究でホルモン補充によって生活の質や症状が改善しなかったと報告されています。治療するかどうかは、年齢や症状、妊娠の希望などをふまえて主治医と相談して決めます。

出典

  1. MSDマニュアル家庭版 · 甲状腺機能低下症
  2. Feller M, et al. Association of thyroid hormone therapy with quality of life and thyroid-related symptoms in patients with subclinical hypothyroidism: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2018

このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。