低血糖とは?
体は通常、血糖値を約70〜110mg/dL(3.9〜6.1mmol/L)の範囲に保っています。低血糖は、この血糖値が低くなりすぎた状態です。
脳はブドウ糖を主なエネルギー源にしているため、血糖値の低下にとくに敏感です。血糖値が下がると、体はアドレナリン、コルチゾール、グルカゴン、成長ホルモンを分泌して、肝臓からブドウ糖を放出させようとします。それでも血糖値が十分に上がらないと、脳のエネルギーが不足します。
低血糖の症状
- 軽い低血糖:汗、神経質になる、ふるえ、気が遠くなる感じ、動悸、空腹感。
- 重い低血糖:めまい、疲労感、力が入らない、頭痛、集中できない、錯乱、ろれつが回らない、目のかすみ、けいれん、昏睡。
症状は通常、血糖値が60mg/dL(3.3mmol/L)より低くならないと現れません。ただし、血糖値が急に下がった場合などは、少し高い値でも症状が出る人がいます。症状は数分のうちに、軽い不快感から重い錯乱やパニックに進むこともあります。重い低血糖では、酔っているのと間違えられるような行動がみられることもあります。
症状に気づきにくい人もいる
長く糖尿病を患っている人、とくに低血糖を何度も経験している人は、低血糖の初期症状を自覚できなくなることがあります。その場合、ほかの症状がないまま、急に重い症状が現れるおそれがあります。
低血糖を起こしやすい人は、医療者に自分の状態を知らせるため、医療情報を示すものを持ち歩くか身につけておきましょう。
低血糖の主な原因
- 糖尿病の治療薬:最も多い原因です。インスリンやスルホニル尿素薬などを使っている人が、普段より食べる量が少なかったり、運動量が多かったりすると、血糖値が下がりすぎることがあります。
- アルコール:何も食べずに大量のお酒を飲むと、肝臓でのブドウ糖づくりが妨げられます。
- 空腹時の低血糖:まれに、膵臓のインスリンをつくる腫瘍(インスリノーマ)、ホルモンの病気、慢性腎臓病、心不全、がんなどで起こります。
- 食後の低血糖:胃バイパス術などの肥満手術の後に、糖が速く吸収されて起こることがあります。炭水化物の多い食事の後の低血糖(反応性低血糖)は、まれです。
健康な人では、長時間食べなかったり激しい運動を続けたりしても、低血糖はあまり起こりません。
低血糖の診断
低血糖の症状が出ている間に血糖値を測り、低いことを確認して診断します。糖分をとって数分以内に症状が治まることも、診断の手がかりになります。
- 糖尿病の人:症状が出たら、低血糖を疑って血糖値を確認します。
- 糖尿病でない人:症状、病歴、診察、簡単な検査をもとに診断し、関係がはっきりしない場合は、管理された状況で絶食した後に血糖値を測るなど、さらに検査を行います。
なお、血液の検体を長く置きすぎたなどの検査のミスで、血糖値が低く出ることもあります。
すぐにできる対処法
- 糖分をとる:キャンディー、ブドウ糖の錠剤、コップ1杯の果物ジュースなどの甘い飲み物で、症状は数分以内に回復します。
- ブドウ糖の錠剤:速く効き、決まった量の糖分をとれるため、低血糖を何度か起こしたことのある人に向いています。
- グルカゴン:重い低血糖を起こすリスクのある人は、緊急時に備えて手元に置いておくとよいとされています。注射または鼻からの粉末で使うと、肝臓から大量のブドウ糖が放出され、5〜15分以内に血糖値が上がります。
原因の治療と予防
- 薬の調整:薬が原因の場合は、量を調整したり別の薬に変更したりします。
- 食事を分ける:糖尿病でなくても低血糖を起こしやすい人は、1日3食よりも、少量の食事を何回もとることで低血糖を避けられます。
- 単糖類を控える:炭水化物、とくに単糖類を制限すると、食後に起こる反応性低血糖を予防できるという説があります。
- 腫瘍の手術:インスリノーマが原因の場合は、手術で取り除きます。
糖尿病の治療中に気をつけたいこと
- 食事を抜いたり、普段より少ない量しか食べなかったりした日は、低血糖に注意する
- 普段より運動量が多い日は、低血糖に注意する
- 空腹のまま大量のお酒を飲まない
- ブドウ糖の錠剤などを持ち歩く
1型糖尿病の人や、10年以上2型糖尿病を患っている人は、低血糖を解消するためのグルカゴンやアドレナリンが体内で十分につくられないため、低血糖をより起こしやすくなります。低血糖をくり返す場合は、薬の量について医師と相談しましょう。
出典によって異なる点:ブドウ糖と食品の糖はどちらがよいか
MSDマニュアル家庭版は、低血糖の症状にはどんな形の糖分でも数分以内に回復するとしつつ、ブドウ糖の錠剤は速く効き、決まった量をとれる点で、低血糖をくり返す人に向いていると説明しています。
システマティックレビューとメタアナリシス(Carlsonら、2017年)は、意識のある糖尿病の人の低血糖に対して、砂糖、ジュース、菓子などの食品の糖とブドウ糖の錠剤を比べた4件の研究をまとめました。15分後に症状が治まった割合は、食品の糖のほうがブドウ糖の錠剤より低く(リスク比0.89)、手元にあればブドウ糖の錠剤を優先すべきだと結論づけています。
どの糖でも効果はありますが、低血糖に備えるならブドウ糖の錠剤を持ち歩くと安心です。
低血糖のポイント
- 低血糖は、血糖値が低くなりすぎた状態です。
- 軽いと汗・ふるえ・動悸・空腹感、重いと錯乱・けいれん・昏睡が起こります。
- 最も多い原因は糖尿病の治療薬で、食事量の不足や運動量の増加がきっかけになります。
- 症状が出たら、ブドウ糖の錠剤やジュースなどで糖分をとります。
- 重い低血糖のリスクがある人は、グルカゴンを手元に置いておきます。
- 少量の食事を何回もとる、薬を調整するなどで予防します。
低血糖についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
低血糖になるとどんな症状が出ますか?
軽いと汗、ふるえ、動悸、空腹感などが出ます。重くなると、めまい、頭痛、錯乱、ろれつが回らない、けいれん、昏睡などが起こります。
低血糖の症状が出たら何を食べればよいですか?
キャンディー、ブドウ糖の錠剤、コップ1杯の果物ジュースなど、糖分をとると数分以内に回復します。ブドウ糖の錠剤は速く効き、決まった量をとれます。
血糖値がいくつになると低血糖の症状が出ますか?
通常は60mg/dL(3.3mmol/L)より低くならないと症状は現れませんが、血糖値が急に下がった場合などは、少し高い値でも症状が出ることがあります。
糖尿病でなくても低血糖になりますか?
まれですが、空腹のままの大量飲酒、インスリノーマなどの腫瘍、ホルモンの病気、肥満手術の後などに起こることがあります。
低血糖を予防するにはどうすればよいですか?
糖尿病の薬を使っている人は、食事を抜いた日や運動量が多い日に注意します。低血糖を起こしやすい人は、少量の食事を何回もとると避けられることがあります。
グルカゴンとは何ですか?
肝臓からブドウ糖を放出させるホルモンの薬です。注射または鼻からの粉末で使い、5〜15分以内に血糖値が上がります。重い低血糖のリスクがある人の緊急用です。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 低血糖
- Carlson JN, et al. Dietary sugars versus glucose tablets for first-aid treatment of symptomatic hypoglycaemia in awake patients with diabetes: a systematic review and meta-analysis. Emerg Med J. 2017
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
