夢遊病(睡眠時遊行症)とは?
夢遊病(睡眠時遊行症)は、眠っている人が自覚のないまま、半ば無意識の状態で歩き回る現象です。入眠の直前、睡眠中、目覚めるときに起こる異常行動(睡眠時随伴症)の一つです。
大人でも子どもでも、睡眠中に、ほとんど記憶に残らないさまざまな行動を無意識のうちに起こすことがあります。夢遊病は、ノンレム睡眠の最も深い段階で起こります。
睡眠時随伴症には、ほかにも、寝入りばなに腕や体がピクッと動く(ほぼすべての人が経験します)、寝入りばなや目覚めるときに体が動かなくなる睡眠麻痺、歯ぎしり、悪夢などがあります。
どのくらいの人にみられる?
夢遊病は、小児期の後半から思春期に最も多くみられます。子どもでは、夢遊病のほか、頭を大きく振る動き、夜驚症などもよくみられ、親を心配させることがあります。通常、本人はこれらの出来事を覚えていません。
世界の研究をまとめた報告では、生涯に夢遊病を経験する人は約7%、最近1年間に経験した人は子どもで約5%、大人で約1.5%と推定されています(詳しくは「出典によって異なる点」を参照)。
夢遊病のときの様子
- 歩きながら、くり返し何かをつぶやくことがあります。
- 障害物にぶつかって、けがをすることがあります。
- ほとんどの人は、眠っている間に歩き回ったことを覚えていません。
夢遊病が起こりやすくなる要因
睡眠不足や、目がさえるような行動は、夢遊病を起こりやすくします。
- 寝る前のカフェインの摂取
- 寝る前の運動
- 興奮するようなテレビ番組を寝る直前に見ること
こうした要因を減らし、睡眠を改善するための生活習慣を見直すことが、対策の第一歩になります。
夢遊病の頻度を減らす工夫
けがをしない限り、通常は特別な治療は不要です。次のような一般的な対策で、夢遊病の頻度を減らすことができます。
- 睡眠を整える:寝る数時間前の運動や、寝る約12時間前以降のカフェインなど、寝る前に心身を刺激する行動を避けます。
- ベッドのアラーム:ベッドを離れるとアラームが鳴るようにします。
- ドアのアラーム:ドアにアラームを取り付けます。
歩き回るときのけがを防ぐ
- 無理に起こさない:無理に目を覚まさせると興奮することがあるため、ベッドに戻るようにやさしく誘導します。
- 障害物を片づける:歩く邪魔になりそうな物をどけておきます。
- 窓に鍵をかける:窓は閉めて鍵をかけておきます。
- 低い寝床:ベッドから出るときにけがをしないよう、低めのベッドや床に敷いた布団で寝るようにします。
薬による治療
一般的な対策で効果がない場合は、ベンゾジアゼピン系の薬(特にクロナゼパム)が効果的なことがあります。
ただし、この種の薬には日中の眠気などの重大な副作用があり、長く使うと依存のおそれもあります。使うかどうかは医師とよく相談します。
夜驚症やレム睡眠行動障害との違い
- 夜驚症:子どもに多く、眠っている間に恐怖で起き上がり、悲鳴を上げたり腕を振り回したりします。深いノンレム睡眠から起こり、夢遊病につながることもあります。起こすとかえって怖がるため、起こしてはいけません。本人は覚えておらず、成長とともに起こらなくなります。子どもでは、親が安心させるだけで十分なことがあります。大人の夜驚症には、心の問題やアルコール使用症が関係していることがよくあります。
- 悪夢:鮮明で恐ろしい夢で、突然目が覚めます。夢を見るレム睡眠中に起こり、子どもにも大人にもみられます。ストレス、発熱、強い疲れ、飲酒のときに見やすくなります。
- レム睡眠行動障害:高齢者に多く、夢に反応して話したり、腕を振り回す、殴る、蹴るなどの動きをしたりします。本人やベッドパートナーがけがをすることがあり、夢を覚えている場合もあります。パーキンソン病などの病気と関係することがあるため、受診が必要です。ベッドパートナーは、薬が効くまで別のベッドで寝ることや、とがった物や家具をベッドから遠ざけておくことが勧められます。
出典によって異なる点:どのくらいの人に起こるか
MSDマニュアル家庭版は、夢遊病は小児期の後半から思春期に最も多いとしていますが、具体的な頻度は示していません。
51件の研究(合計100,490人)をまとめたメタアナリシス(StallmanとKohler、2016年)は、生涯に夢遊病を経験する人の割合を約6.9%と推定しました。最近12カ月の頻度は、子どもで約5.0%、大人で約1.5%と、子どものほうが明らかに多くなっていました。一方、子どもの年齢による一定の傾向はみられませんでした。ただし、多くの研究に偏りのリスクがあり、結果は慎重に解釈すべきだとしています。
つまり、夢遊病は子どもで珍しくなく、大人でも一定の割合でみられる現象です。
夢遊病のポイント
- 夢遊病は、眠ったまま半ば無意識に歩き回る、深いノンレム睡眠で起こる現象です。
- 小児期の後半から思春期に多く、大人でもみられます。
- 睡眠不足、寝る前のカフェイン・運動・刺激的なテレビで起こりやすくなります。
- けがをしない限り特別な治療は不要で、睡眠を整えることが対策の基本です。
- 無理に起こさず、ベッドへやさしく誘導し、障害物や窓に注意します。
- 激しい動きを伴う場合は、レム睡眠行動障害などとの区別のため受診します。
夢遊病についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
夢遊病はなぜ起こるのですか?
夢遊病はノンレム睡眠の最も深い段階で起こります。睡眠不足や、寝る前のカフェイン、運動、刺激的なテレビで起こりやすくなります。
子どもの夢遊病は心配ですか?
夢遊病は小児期の後半から思春期に多くみられます。けがをしない限り、通常は特別な治療は不要です。
歩き回っているときに起こしてもよいですか?
無理に起こすと興奮することがあるため、ベッドに戻るようにやさしく誘導します。
けがを防ぐにはどうすればよいですか?
障害物を片づけ、窓に鍵をかけ、低めのベッドや床に敷いた布団で寝るようにします。ベッドやドアのアラームも役立ちます。
薬は必要ですか?
一般的な対策で効果がない場合に、ベンゾジアゼピン系の薬が使われることがありますが、日中の眠気や依存などの副作用に注意が必要です。
大人でも夢遊病になりますか?
はい。研究のまとめでは、最近1年間に夢遊病を経験した大人は約1.5%と推定されています。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 睡眠時随伴症
- Stallman HM, Kohler M. Prevalence of sleepwalking: a systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2016
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
