ナルコレプシーとは?
ナルコレプシーは、日中の過度の眠気が特徴の睡眠障害です。米国、欧州、日本では約2,000人に1人にみられ、男女とも同じくらいの割合で起こります。
原因はわかっていません。似た遺伝子をもつ人もいますが、遺伝性ではないと考えられており、環境的な要因が関わっているようです。症状の多くは、夢を見ているときの眠り(レム睡眠)に起こる現象に似ており、レム睡眠のタイミングと調節の異常を部分的に反映しています。
いつ始まり、どう続くか
症状は通常、思春期から若い成人のころに現れ、その後は生涯続きます。
- 日中の過度の眠気:すべての人に起こります。
- すべての症状がそろう人:全体の約15%に限られ、大部分の人はいくつかの症状が出るだけです。
日中に眠ってしまうため、生活や仕事に支障が出たり、自動車事故などの事故のリスクが高くなったりします。
日中の過度の眠気
- 長く眠っても眠気が軽くならないことが多く、時刻を問わず前ぶれなく、抑えられない眠気に襲われます。
- 発作は1日に何度も起こることもあれば、2〜3回のこともあります。1回は通常2〜3分以下ですが、数時間続くこともあります。
- 退屈な会議や高速道路での長時間の運転など、単調な状況で最も起こりやすいものの、食事中、会話中、書きものをしているときにも起こることがあります。
情動脱力発作(カタプレキシー)
起きているときに、怒り、恐怖、喜び、笑い、驚きなどの突然の感情がきっかけとなって、意識を失わないまま、急に一時的に体の力が抜けることがあります。これを情動脱力発作といいます。
健康な人がレム睡眠中に体が動かなくなる状態に似ており、「笑って力が抜けた」状態にも少し似ています。情動脱力発作は、ナルコレプシーの人の約5人に1人で大きな問題になります。
睡眠麻痺・幻覚・夜間の睡眠障害
- 睡眠麻痺:寝入るときや起きた直後に、体を動かそうとしても動かせなくなります。約4人に1人にみられ、誰かに体に触れてもらうと解けることがあります。
- 入眠時幻覚・出眠時幻覚:寝入る前後や目覚めるときに、実際にはない映像や音が鮮明に見えたり聞こえたりします。入眠時幻覚は約3人に1人から2人に1人以上にみられます。
- 夜間の睡眠障害:夜の睡眠が、目覚めや鮮明で恐ろしい夢で何度も中断され、寝てもすっきりせず、日中さらに眠くなります。
睡眠麻痺や入眠時幻覚は、健康な子どもや大人にもみられることがあります。
ナルコレプシーの検査
日中の過度の眠気に筋力低下の発作を伴う場合に、ナルコレプシーが疑われます。ただし、似た症状を起こす病気もあるため、症状だけでは診断できません。
- 睡眠ポリグラフ検査:一晩かけて、脳、心臓、呼吸、筋肉、目の活動などを記録します。
- 睡眠潜時反復検査:翌日、2時間おきに5回仮眠の機会を設け、どれくらい早く眠りに入るかなどを調べ、体の疲れと日中の過度の眠気を見分けます。
- 脳の画像検査・血液検査:ナルコレプシーの異常はCTやMRIではわかりませんが、ほかの病気を除外するために行うことがあります。
生活の工夫
- 夜の十分な睡眠:夜にしっかり眠るよう心がけます。
- 計画的な短い仮眠:毎日同じ時間(典型的には午後)に、30分未満の短い仮眠をとります。
症状が軽い場合は、これらの対策で十分なこともあります。運転中に眠り込むと特に危険なため、注意が必要です。
薬による治療
- 覚醒を保つ薬:モダフィニルなど、脳のさまざまな受容体に作用して目覚めた状態を保つ薬が使われます。
- オキシベート:就寝時と夜中に飲む薬で、日中の過度の眠気と情動脱力発作を軽くすることができます。
- 中枢刺激薬:ほかの薬が効かない場合や、副作用が問題になる場合に使われることがあります。
薬の種類や量は、症状や生活に合わせて医師が調整します。
出典によって異なる点:計画的な仮眠は誰にでも役立つか
MSDマニュアル家庭版は、夜に十分な睡眠をとり、毎日同じ時間に短い仮眠をとることを一般的な対策としてすすめ、症状が軽ければこれで十分なこともあるとしています。
ランダム化比較試験(Rogersら、2001年)は、薬で治療中のナルコレプシーの29人を、1日2回15分の仮眠、夜の規則正しい就寝、その両方の3つのグループに分けて2週間比べました。仮眠だけでは症状は変わらず、規則正しい就寝だけでは自覚症状は軽くなったものの日中に眠り込む時間は減りませんでした。両方を組み合わせたグループだけで、症状の重さと日中に眠り込む時間の両方が減りました。ただし効果があったのは、薬を飲んでも強い眠気が残る人に限られていました。
計画的な仮眠は、規則正しい夜の睡眠と組み合わせることが大切で、とくに眠気が強い人に役立つと考えられます。
ナルコレプシーのポイント
- ナルコレプシーは、日中の過度の眠気がくり返し起こる睡眠障害で、約2,000人に1人にみられます。
- 思春期から若い成人のころに始まり、生涯続きます。
- 情動脱力発作、睡眠麻痺、入眠時幻覚、夜間の睡眠障害を伴うことがあります。
- 睡眠ポリグラフ検査と睡眠潜時反復検査で診断します。
- 夜の十分な睡眠と、毎日同じ時間の短い仮眠が基本です。
- 必要に応じて、覚醒を保つ薬などで治療し、多くの人が通常の生活に戻れます。
ナルコレプシーについてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
ナルコレプシーの主な症状は何ですか?
日中の過度の眠気が中心で、情動脱力発作、睡眠麻痺、入眠時や目覚めるときの幻覚、夜間の睡眠障害を伴うことがあります。すべてがそろう人は約15%です。
情動脱力発作とは何ですか?
怒り、喜び、笑い、驚きなどの突然の感情がきっかけで、意識を失わないまま急に体の力が抜ける発作です。
ナルコレプシーはどのくらい多い病気ですか?
米国、欧州、日本では約2,000人に1人にみられ、男女ともに同じくらいの割合で起こります。
ナルコレプシーはどうやって診断しますか?
一晩の睡眠ポリグラフ検査と、翌日の睡眠潜時反復検査で診断します。症状だけでは診断できません。
ナルコレプシーは治りますか?
根本的に治す治療はありませんが、多くの人は治療を続けることで通常の生活に戻れます。
昼寝はナルコレプシーに効きますか?
毎日同じ時間に30分未満の短い仮眠をとることがすすめられています。研究では、規則正しい夜の睡眠と組み合わせた場合に、とくに眠気の強い人で効果がみられました。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · ナルコレプシー
- Rogers AE, et al. A comparison of three different sleep schedules for reducing daytime sleepiness in narcolepsy. Sleep. 2001
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
