妊娠中のむくみとは?
妊娠が進むにつれ、足、足首、すねなどの組織に体液がたまり、腫れてむくんで見えるようになります。妊娠中、とくに妊娠後期にある程度の体液がたまることは正常で、この状態を浮腫といいます。
指に軽いむくみが出ることもあります。ただし、手のむくみが軽くない場合や、顔にむくみがある場合は、医師の評価を受けるべきです。
妊娠中にむくみが起こる理由
- ホルモン:体に水分を保たせるホルモン(アルドステロンやコルチゾール)が、副腎から多く分泌されるようになります。
- 大きくなった子宮:子宮が、脚から心臓へ戻る血流を圧迫します。その結果、水分が脚の静脈にたまり、周りの組織にしみ出します。
注意が必要な病気によるむくみ
あまり多くはありませんが、重い病気が原因でむくみが出ることがあります。
- 妊娠高血圧腎症:妊娠中にだけ起こる病気で、血圧と尿のたんぱくが上がり、顔、手、足などがむくみ、体重が増えます。重い場合は、脳や腎臓、肝臓などの臓器や胎児に影響が出ることがあります。
- 深部静脈血栓症:脚の深い静脈に血のかたまりができる病気です。妊娠中は血液が固まりやすくなり、リスクが上がります。
- 周産期心筋症:妊娠後期や出産後に起こるまれで重い心不全で、むくみに加えて息切れや疲れやすさが出ます。
正常なむくみと病気のむくみの違い
- 正常なむくみ:両脚に起こり、痛みを伴いません。
- 妊娠高血圧腎症:血圧が140/90mmHg以上になり、両足・両足首のほか、顔や手もむくむことがあります。強い頭痛、見え方の変化、上腹部の強い痛みなどを伴うこともあります。
- 深部静脈血栓症:片方の脚やふくらはぎだけがむくんで痛み、押すと痛む、赤い、熱っぽいなどの症状がよくみられます。
- 周産期心筋症:両脚のむくみに、息切れ、疲れ、横になっていられないといった症状を伴います。
すぐに受診すべきサイン
- 手の中等度以上のむくみ(指輪が外れないなど)
- 体のどこかで急に悪化するむくみ
- 片方の脚やふくらはぎだけのむくみ(とくに熱感、赤み、押したときの痛み、発熱を伴う場合)
- 血圧が140/90mmHg以上
- 続く強い頭痛、見え方の変化、錯乱、上腹部の強い痛み、呼吸困難
- 胸の痛みや呼吸困難
これらが1つでもあれば、直ちに病院に行くべきです。警戒サインがない場合も受診は必要ですが、数日の遅れが問題になることは通常ありません。
病院で行う検査
- 血圧を測り、心臓と肺の音を聞きます。
- 妊娠高血圧腎症が疑われる場合は、尿のたんぱくや、血液検査で腎臓・肝臓の働きなどを調べます。
- 深部静脈血栓症が疑われる場合は、脚の超音波検査で静脈の詰まりを確かめます。
- 周産期心筋症が疑われる場合は、心電図、胸部X線、心エコー、血液検査を行います。
正常なむくみと判断するには、こうした病気の可能性をすべて否定する必要があります。
正常なむくみを軽くする方法
- 左側を下にして横になる:心臓に血液を戻す太い静脈(下大静脈)を、子宮が圧迫しにくくなります。
- 脚を上げて休む:脚を高くして、こまめに休みます。
- 弾性ストッキング:弾性のサポートストッキングをはきます。
- 締めつけない服:足首やふくらはぎを締めつける靴下やストッキングは避け、血流を妨げないゆったりした服を着ます。
むくみが病気から生じている場合は、その病気を治療します。
受診時に伝えたいこと
- むくみがいつ始まり、どのくらい続いているか
- 左側を下にして横になるなどで、むくみが軽くなったり悪くなったりするか
- 過去の妊娠高血圧腎症、妊娠前からの高血圧、血栓の病歴など
- 頭痛、見え方の変化、息切れなど、ほかの症状があるか
医師はこれらの情報と診察から、むくみの原因と必要な検査を判断します。
出典によって異なる点:弾性ストッキングは効くか
MSDマニュアル家庭版は、妊娠による正常なむくみを軽くする方法の1つとして、弾性サポートストッキングをはくことを挙げています。
一方、コクランのシステマティックレビュー(Bamigboyeら、2007年)は、妊娠中の静脈瘤と脚のむくみに対する治療を調べた3件の試験(159人)をまとめました。むくみについては、圧迫ストッキングと安静を比べた小さな試験(35人)で、脚の体積に明らかな差はなく、ストッキングにむくみを減らす利点はみられませんでした。足のリフレクソロジーで症状が軽くなったという小さな試験もありましたが、根拠は限られています。
研究は少なく小規模なため、楽に感じる方法を取り入れつつ、警戒サインを見逃さないことが大切と考えられます。
妊娠中のむくみのポイント
- 妊娠後期にある程度の足のむくみが出るのは正常です。
- ホルモンの変化と、大きくなった子宮による血流の圧迫が原因です。
- 手や顔のむくみ、急な悪化、片脚だけのむくみ、高血圧は注意が必要です。
- 強い頭痛、見え方の変化、胸の痛みや息苦しさがあれば直ちに受診します。
- 左側を下にして横になる、脚を上げる、締めつけない服を着るなどで軽くできます。
- 弾性ストッキングの効果については、研究結果が分かれています。
妊娠中のむくみについてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
妊娠中に足がむくむのは普通ですか?
はい。妊娠中、とくに妊娠後期にある程度の体液がたまって足や足首がむくむのは正常です。
妊娠中のむくみはなぜ起こるのですか?
体に水分を保たせるホルモンが増えることと、大きくなった子宮が脚から心臓への血流を圧迫することが原因です。
どんなむくみが危険ですか?
手や顔のむくみ、急に悪化するむくみ、片方の脚だけの痛みを伴うむくみ、高血圧、強い頭痛や見え方の変化を伴うむくみは、直ちに受診が必要です。
むくみを軽くするにはどうすればよいですか?
左側を下にして横になる、脚を上げてこまめに休む、弾性ストッキングをはく、締めつけないゆったりした服を着るといった方法があります。
片方の脚だけがむくむのはなぜですか?
脚の深い静脈に血のかたまりができる深部静脈血栓症の可能性があります。痛みや熱感、赤みを伴う場合は、直ちに受診してください。
弾性ストッキングは効果がありますか?
正常なむくみを軽くする方法として挙げられていますが、小さな研究では脚の体積を減らす効果ははっきりしませんでした。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 妊娠後半にみられるむくみ
- Bamigboye AA, Smyth R. Interventions for varicose veins and leg oedema in pregnancy. Cochrane Database Syst Rev. 2007
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
