末梢神経とは?
末梢神経系とは、脳と脊髄(中枢神経系)以外の神経のことです。脳と顔・目・耳などをつなぐ脳神経、脊髄と体の各部分をつなぐ31対の脊髄神経などが含まれます。
- 運動神経:脳からの指令を筋肉に伝えます。傷つくと、筋力の低下やまひが起こります。
- 感覚神経:痛み、温度、振動などの感覚を脳に伝えます。傷つくと、異常な感覚や感覚の消失が起こります。
皮膚の中にある感覚受容器が痛みや温度の変化を感じると、その信号が神経を通って脳に届きます。とがった石を踏んだときのように強い刺激が突然加わると、信号は脳を通らずに脊髄から直接運動神経に戻り、筋肉が瞬時に反応することもあります。
神経のどこが傷つく?
それぞれの末梢神経は、信号を伝える軸索、神経細胞の本体、軸索を包む髄鞘(ずいしょう)からできています。髄鞘は電気ケーブルの絶縁体のような働きをして、信号を速く伝えます。
このいずれが傷ついても、末梢神経の働きに障害が起こります。髄鞘が傷つくことを脱髄といい、ギラン・バレー症候群などでみられます。
末梢神経障害の種類
- 単神経障害:1本の神経が障害されます。
- 多発性単神経障害:別々の場所にある2本以上の神経が障害されます。
- 多発神経障害:全身の多くの神経が、通常は体の両側のほぼ同じ場所で障害されます。
- そのほか:脊髄から神経が出る根元(神経根)、神経が網目状に集まる神経叢、神経と筋肉のつなぎ目(神経筋接合部)が障害されることもあります。
末梢神経障害の主な原因
末梢神経障害には、遺伝性のものと、生まれたあとに起こるもの(毒性物質、けが、感染症、代謝や炎症の病気など)があります。
- 代謝の病気:糖尿病、ビタミンB不足、長い間の過度の飲酒による栄養不足、腎不全など
- 感染症:帯状疱疹、C型肝炎、HIV感染症、COVID-19など
- 炎症:ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーなど
- 圧迫:手根管症候群、肘部管症候群、腓骨神経まひなど
- そのほか:血管の炎症、ヒ素・鉛・水銀などの毒素、遺伝性のニューロパチー
末梢神経障害と似た病気
筋萎縮性側索硬化症のような運動ニューロン疾患は、末梢神経だけでなく、筋肉の動きを制御する脊髄や脳の神経細胞にも進行性の変性が起こる病気で、末梢神経障害と似ることがあります。
重症筋無力症などの神経筋接合部の病気や、筋ジストロフィーなどの筋肉そのものの病気も、筋力の低下を起こします。筋肉の病気には、遺伝性のもののほか、甲状腺の病気などのホルモンの異常、炎症、血液中のカリウムの低下などによるものもあります。医師は検査を行い、原因が神経、神経筋接合部、筋肉のどこにあるかを判断します。
診察で確認すること
- 症状はいつ始まり、最初に何が現れたか
- 時間とともに症状が変わったか
- 体のどこに症状があるか
- 症状を軽くする・悪くする要因は何か
- 感染症やほかの病気、毒性物質にさらされた経験、同じ症状の家族がいるか
神経の診察では、感覚(刺激を正常に感じるか、ピリピリ感などがないか)、筋力、反射、脳神経を評価します。
末梢神経障害の検査
- 筋電図検査・神経伝導検査:問題が神経、神経筋接合部、筋肉のどこにあるかを判断するのに役立ちます。
- 画像検査:脳神経や脊髄に影響する腫瘍などの異常がないかを確認し、同じ症状を起こすほかの異常を否定します。
- 筋肉と神経の生検:神経が脱髄しているのか、炎症を起こしているのかなど、問題の種類を調べます。
- 遺伝子検査:遺伝性のニューロパチーが疑われる場合に行います。
末梢神経障害の治療
症状を起こしている病気がある場合は、可能であればその治療を行います。それ以外の場合は、症状の緩和に重点を置きます。
- 理学療法士:筋肉を使い続けられるよう支援します。
- 作業療法士:歩行を補助する器具など、日常生活に役立つ道具について助言します。
- 言語療法士:意思疎通を支援します。
- そのほかの専門家:飲み込みにくさや呼吸の問題などに対応します。
複数の分野の専門家がチームでケアにあたることは、障害の進行に対処するうえで助けになります。
出典によって異なる点:どのくらいの人に、何が原因で起こるか
MSDマニュアル家庭版は、末梢神経障害のさまざまな原因を挙げていますが、どのくらいの人にみられるか、原因がわからない人がどのくらいいるかは示していません。
29件の住民調査などをまとめたレビュー(Hanewinckelら、2016年)は、手足の先に左右対称のしびれが出る多発神経障害は、一般の人の約1%、高齢者では最大7%にみられるとしました。欧米などでは特に糖尿病、過度の飲酒、抗がん剤、心血管の病気との関連が強く、どの研究でも20〜30%は原因がわからないままでした。
つまり、末梢神経障害は高齢になるほど多く、原因が見つからないこともあるため、原因の検査とともに症状を和らげるケアが大切です。
末梢神経障害のポイント
- 末梢神経障害は、脳と脊髄以外の神経が傷つくことで起こります。
- 運動神経が傷つくと筋力の低下、感覚神経が傷つくとしびれや感覚の異常が起こります。
- 糖尿病、ビタミン不足、過度の飲酒、感染症、炎症、神経の圧迫などが原因になります。
- 筋電図検査・神経伝導検査などで、問題の場所と種類を調べます。
- 原因の治療と、理学療法などによる症状の緩和が治療の柱です。
- 多発神経障害は高齢者で最大7%にみられ、20〜30%は原因不明です。
末梢神経障害についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
末梢神経障害ではどんな症状が出ますか?
運動神経が傷つくと筋力の低下やまひ、感覚神経が傷つくとしびれ、ピリピリ感、感覚の消失などが起こります。
原因で多いものは何ですか?
糖尿病、ビタミンB不足、過度の飲酒、感染症、ギラン・バレー症候群などの炎症、手根管症候群などの神経の圧迫があります。
どんな検査をしますか?
診察で感覚・筋力・反射を調べ、筋電図検査や神経伝導検査、必要に応じて画像検査、生検、遺伝子検査を行います。
治療法はありますか?
可能であれば原因の病気を治療し、それ以外の場合は症状の緩和に重点を置きます。理学療法などのリハビリも役立ちます。
どのくらいの人がなりますか?
研究のまとめでは、多発神経障害は一般の人の約1%、高齢者では最大7%にみられるとされています。
原因がわからないこともありますか?
はい。研究では、多発神経障害の20〜30%は原因がわからないままでした。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 末梢神経系の概要
- Hanewinckel R, et al. The epidemiology and risk factors of chronic polyneuropathy. Eur J Epidemiol. 2016
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
