気管支拡張症とは?
気管支拡張症は、気道の壁が傷つき、気管支の一部が広がって厚くなったまま元に戻らなくなる病気です。
気道には、粘液の層と、細胞の表面にある小さな毛(線毛)による防御のしくみがあります。線毛は前後に動いて粘液を運び、とらえた有害な粒子や細菌をのどまで送り出します。この防御が損なわれたり、壁が直接傷ついたりすると、気管支拡張症が起こることがあります。
感染と損傷の悪循環
傷ついた気管支の壁は慢性的な炎症を起こし、だんだん弾力を失って広がり、風船のような小さな袋ができます。炎症によって粘液も増えます。
線毛のある細胞が傷ついたり死んだりするため、粘液が広がった気道にたまり、細菌の温床になります。この細菌がさらに気管支の壁を傷つけ、感染と気道の損傷の悪循環に陥ります。
気管支拡張症の原因
最も多い原因は、重い、またはくり返す呼吸器の感染症です。特に次のような人に起こりやすくなります。
- 嚢胞性線維症や原発性線毛機能不全症などの遺伝性の病気
- 免疫不全の病気
- 関節リウマチ、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎などの一部の自己免疫疾患
- 異物の吸入、リンパ節の腫れ、肺の手術、肺の腫瘍などによる気道の閉塞
- 有害な煙・ガス・粉じん(タバコの煙を含む)の吸入
COPDや喘息に伴って起こることや、胃の中身などを慢性的に吸い込むことで起こることもあります。ただし、詳しく調べても原因がわからない人も多くいます。
気管支拡張症の症状
- たんのからむせき:ほとんどの人で、濃いたんのからむせきが慢性的に続きます。せきの発作は早朝と夕方遅くに多くみられます。
- 血たん(喀血):傷ついた気道の壁はもろく、血管が増えているため、よくみられます。最初の症状や唯一の症状のこともあります。
- 発熱や胸の痛み:肺炎をくり返すことがあります。
- 息切れ・喘鳴:広い範囲に及ぶ場合にみられます。
多くは呼吸器の感染症のあとに少しずつ始まり、数年かけて悪化する傾向があります。新たな感染などで症状が悪化(増悪)すると、せきやたんが増え、息苦しさが強くなります。
進行したときの合併症
炎症や感染が肺の奥の小さな空気の袋(肺胞)まで広がると、肺炎や肺の傷あとが残り、肺の働きが失われることがあります。
肺の傷あとが重くなると、心臓の右側に大きな負担がかかり、肺性心と呼ばれる心不全につながることがあります。非常に重い場合は、血液中の酸素が少なく二酸化炭素が多い慢性呼吸不全に陥ることもあります。
気管支拡張症の検査
- 胸部X線検査:多くの場合、肺の変化がわかりますが、正常に見えることもあります。
- CT検査:病気を確かめ、範囲や重症度を判定するうえで最も精度の高い検査です。
- 肺機能検査:肺がどの程度働いているかを調べ、進行の確認にも役立ちます。
- 原因を調べる検査:免疫や自己免疫の検査、汗の塩分の測定(嚢胞性線維症)、たんの培養検査などを行います。たんの培養は、悪化したときに最適な抗菌薬を選ぶのにも役立ちます。
気管支拡張症の治療
- 感染の治療と予防:抗菌薬で感染を治療し、頻繁に悪化する人には長期間の抗菌薬が使われることもあります。
- たんを出しやすくする:胸部理学療法や定期的な運動でせきを促し、たんの排出を助けます。空気の加湿や、霧状にした食塩水の吸入も役立つ可能性があります。
- 吸入薬:気管支拡張薬で喘鳴や息切れを和らげます。
- 酸素:血液中の酸素が少ない場合は酸素を投与します。
- 手術:まれに、病変が限られている場合などに肺の一部を切除します。
早い段階で有効な治療を行うことで、血たん、酸素不足、呼吸不全、肺性心などの合併症を減らすことができます。
胸部理学療法と予防
悪化したときの治療では、抗菌薬や気管支拡張薬とともに、胸部理学療法でたんや粘液の排出を促します。胸部理学療法には、たんが流れ出やすい姿勢をとる体位ドレナージや、胸を軽くたたく方法などがあります。
- ワクチン:肺炎球菌ワクチン、COVID-19ワクチン、毎年のインフルエンザワクチンが、予防や重症化の防止に役立ちます。
- 早めの治療:肺の感染症の初期に適切な抗菌薬を使います。
- 吸い込まない:有害な煙、ガス、タバコの煙、粉じんを避けます。
出典によって異なる点:排痰法の根拠
MSDマニュアル家庭版は、胸部理学療法や定期的な運動によるたんの排出を治療の柱の一つとしていますが、その効果の大きさは示していません。
コクランのシステマティックレビュー(Leeら、2015年)は、気管支拡張症の排痰法に関する7件の研究(105人)をまとめました。気道に振動を与える器具を使った研究では、悪化の回数に差はみられなかったものの、生活の質やせきに関する評価が改善し、たんの排出量も増えました。ただし、研究の数が少なく質にもばらつきがあり、どの方法が最もよいかは結論が出ていないとしています。
つまり、排痰法は生活の質の改善に役立つ可能性があり、理学療法士などの指導を受けて自分に合った方法を続けることが大切です。
気管支拡張症のポイント
- 気管支拡張症は、気管支の壁が傷つき、広がったまま戻らなくなる病気です。
- たまったたんが細菌の温床になり、感染と損傷の悪循環に陥ります。
- 最も多い原因は、重い、またはくり返す呼吸器の感染症です。
- 濃いたんのからむ慢性的なせき、血たん、くり返す肺炎などがみられます。
- 抗菌薬、吸入薬、胸部理学療法によるたんの排出が治療の柱です。
- ワクチンや有害な煙の回避で、予防や重症化の防止に取り組みます。
気管支拡張症についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
気管支拡張症はどんな病気ですか?
気管支の壁が傷ついて広がったまま戻らなくなり、たんがたまって感染をくり返しやすくなる病気です。
原因は何ですか?
最も多いのは、重い、またはくり返す呼吸器の感染症です。遺伝性の病気、免疫の病気、気道の閉塞などが関係することもありますが、原因不明のことも多くあります。
血たんが出たらどうすればよいですか?
血たんは気管支拡張症でよくみられる症状ですが、量が多い場合や息苦しさが強い場合は、すぐに119番(スペインでは112番)に連絡してください。
どんな検査をしますか?
胸部X線検査、病気の範囲を正確に調べるCT検査、肺機能検査、原因を調べる血液検査やたんの検査などを行います。
胸部理学療法とは何ですか?
たんが流れ出やすい姿勢をとる体位ドレナージや、胸を軽くたたく方法などで、たんの排出を促す方法です。
予防のためにできることは?
肺炎球菌・インフルエンザ・COVID-19のワクチン接種、感染症の早めの治療、タバコの煙や有害な粉じんを避けることが役立ちます。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 気管支拡張症
- Lee AL, et al. Airway clearance techniques for bronchiectasis. Cochrane Database Syst Rev. 2015
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
