胃潰瘍とは?十二指腸潰瘍との違い
潰瘍は、胃や十二指腸(小腸の最初の部分)の粘膜を深くえぐるように傷つけたもので、大きさは数ミリから数センチになることがあります。胃や十二指腸の粘膜を守ったり修復したりする働きが弱まり、粘膜が胃酸で傷つきやすくなったときにできます。
- 十二指腸潰瘍:十二指腸にできる潰瘍です。
- 胃潰瘍:胃にでき、通常は胃の下の部分にできます。日本では、十二指腸潰瘍より胃潰瘍の患者の方が多いとされています。
- ストレス性潰瘍:重い病気、やけど、けがなどによる体のストレスで起こることがあります。
潰瘍はどの年齢でも起こりますが、中年の成人に最も多くみられます。胃の炎症(胃炎)が進んで潰瘍になることもあります。
胃潰瘍の主な原因
消化性潰瘍の原因として、群を抜いて多いのは次の2つです。
- ピロリ菌の感染:十二指腸潰瘍の人の50%以上、胃潰瘍の人の30〜50%にみられます。
- 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID):アスピリンやイブプロフェンなどの痛み止めで、消化性潰瘍の50%以上の原因になっています。ただし、使っている人のほとんどでは潰瘍はできません。
喫煙者は、たばこを吸わない人より潰瘍ができやすく、治りが遅く、再発もしやすくなります。アルコールは胃酸を増やしますが、飲む量がそれほど多くなければ、潰瘍の発生や治りの遅れにはつながらないと考えられています。まれに、胃酸を過剰に出させるホルモンを放出する腫瘍が原因になることもあります。
胃潰瘍の症状
最もよくみられる症状は、みぞおち(胸骨のすぐ下の上腹部)の軽いものから中くらいの痛みです。差し込むような、焼けつくような、うずくような痛み、ときには空腹感のように感じられます。
- 十二指腸潰瘍:起きたときは痛くなく、午前中に痛みが出ます。食事や牛乳、制酸薬で和らぎますが、2〜3時間でまた痛み出し、夜中に痛みで目が覚めることもよくあります。
- 胃潰瘍:決まったパターンがなく、食事で痛みが和らぐこともあれば、かえって痛むこともあります。
- 胃の出口が狭くなった場合:食後におなかが張る、吐き気、嘔吐が起こることがあります。
典型的な症状が出るのは約半数にすぎません。子ども、高齢者、痛み止めが原因の潰瘍がある人では、症状がはっきりしなかったり、まったくなかったりすることもあります。
注意すべき合併症
ほとんどの消化性潰瘍は合併症を起こさずに治りますが、ときに命に関わる合併症が起こります。
- 出血:最も多い合併症で、痛みがなくても起こることがあります。真っ赤な血やコーヒーかすのようなものを吐く、黒いタール状の便、血の混じった便が出るなどの症状があります。少量の出血が続くと貧血になることもあります。
- 穿孔:潰瘍が胃や十二指腸の壁を突き抜けて穴があくもので、急に強い痛みが起こって続きます。緊急手術が必要です。
- 穿通:潰瘍が壁を突き抜けて肝臓や膵臓などに及ぶもので、刺すような強い痛みが続きます。
- 閉塞:潰瘍の周りの腫れや傷あとで胃の出口が狭くなり、嘔吐をくり返すことがあります。
また、ピロリ菌による潰瘍がある人は、のちに胃がんになる可能性が3〜6倍高くなります。
胃潰瘍の検査
- 上部消化管内視鏡検査:胃カメラで潰瘍を確認し、原因を調べます。胃潰瘍ががんでないかを確かめたり、ピロリ菌の有無を調べたりするために、組織を少し採って調べること(生検)もあります。
- ピロリ菌の検査:潰瘍の原因を確かめるために行います。
- 血液検査:胃酸を過剰に出させる病気が疑われる場合に、ホルモンの量を測ります。
特徴的な胃の痛みがあれば潰瘍が疑われ、まず治療して症状が消えるかを見ることもあります。ただし、数週間治療しても症状が消えない場合や、60歳以上で初めて症状が出た場合、体重減少などほかの症状がある場合は、胃がんでも似た症状が出ることがあるため、検査が行われます。

胃潰瘍の治療:胃酸を抑える薬とピロリ菌の除菌
- 胃酸を抑える薬:プロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬などで胃酸の分泌を抑えると、原因にかかわらず潰瘍の治りが早まります。多くの人は4〜8週間治療を続けます。
- 制酸薬:胃酸の分泌を止めるのではなく、中和する薬です。
- ピロリ菌の除菌:ピロリ菌の感染がわかったら、2種類の抗菌薬と胃酸を抑える薬などを組み合わせて治療します。
- 手術:薬で効果的に治療でき、出血も内視鏡で止められるようになったため、現在はまれです。治らない閉塞、くり返す大出血、がんが疑われる場合などに行われます。
ピロリ菌を除菌した場合、潰瘍が再発する人は約10%ですが、除菌しない場合は約50%で再発します。
食事と生活で気をつけたいこと
- 刺激の少ない食事:胃酸の分泌を抑えるのに役立つことがありますが、それで潰瘍が早く治ったり、再発を防げたりするという証拠はありません。
- 症状を悪化させる食べもの:痛みやおなかの張りを悪化させると感じる食べものを避けるのは妥当です。
- 胃を刺激するもの:一部の痛み止め(NSAID)、アルコール、ニコチンなど、胃を刺激する可能性のあるものを避けることが大切です。
- 禁煙:喫煙は潰瘍の治りを遅らせ、再発しやすくします。
痛み止めを長く使う必要がある場合は、自己判断で続けたりやめたりせず、医師や薬剤師に胃への影響について相談しましょう。
受診のタイミング
みぞおちの痛みが続く、くり返す場合は、消化器内科などを受診して原因を調べてもらいましょう。とくに次のような場合は、早めの受診が必要です。
- 数週間、胃の薬を飲んでも症状が良くならない
- 60歳以上で、初めてこうした症状が出た
- 体重が減っている
- 吐き気や嘔吐をくり返す
血を吐いた、黒い便が出た、急に激しい腹痛が起きて続く、といった場合は緊急の対応が必要です。
出典によって異なる点:除菌は潰瘍の治りを早めるか
MSDマニュアル家庭版は、ピロリ菌の感染がわかったら除菌治療を行い、除菌すると再発が約10%、除菌しないと約50%としています。
コクランのシステマティックレビュー(Fordら、2016年)は、ピロリ菌が陽性の消化性潰瘍の人を対象とした55件の試験をまとめました。十二指腸潰瘍では、除菌治療を加えると胃酸を抑える薬だけより潰瘍が治りやすくなりました。一方、胃潰瘍の治りやすさについては、除菌を加えた場合とそうでない場合の差ははっきりしませんでした。再発の予防では、胃潰瘍でも十二指腸潰瘍でも、除菌は治療しない場合より再発を大きく減らしましたが、根拠の質は低いか、とても低いと評価されています。
胃潰瘍を治すこと自体は主に胃酸を抑える薬の役割で、除菌は再発を防ぐために大切だと考えるとよいでしょう。
胃潰瘍のポイント
- 胃潰瘍は、胃の粘膜が胃酸などで深く傷ついた状態で、十二指腸潰瘍とあわせて消化性潰瘍と呼ばれます。
- 主な原因は、ピロリ菌の感染と、一部の痛み止め(NSAID)です。喫煙も治りを遅らせます。
- みぞおちの痛みが代表的な症状ですが、症状がはっきりしないこともあります。
- 出血や穿孔などの合併症は命に関わることがあり、吐血や黒い便には注意が必要です。
- 胃酸を抑える薬で4〜8週間治療し、ピロリ菌がいれば除菌します。
- 除菌すると再発は約10%に減ります。胃を刺激するものを避けることも大切です。
胃潰瘍についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
胃潰瘍の原因は何ですか?
主な原因は、ピロリ菌の感染と、アスピリンやイブプロフェンなどの痛み止め(NSAID)です。喫煙も潰瘍をできやすくし、治りを遅らせます。
胃潰瘍の症状は?
みぞおちの差し込むような、焼けつくような痛みが代表的です。ただし、典型的な症状が出るのは約半数で、高齢者などでははっきりしないこともあります。
胃潰瘍はどのくらいで治りますか?
多くの人は、胃酸を抑える薬で4〜8週間治療すると治ります。ピロリ菌がいる場合は、除菌治療もあわせて行います。
ピロリ菌を除菌すると再発しにくくなりますか?
はい。除菌した場合に再発する人は約10%ですが、除菌しない場合は約50%で再発します。
胃潰瘍のときに食事で気をつけることは?
痛みやおなかの張りを悪化させる食べもの、アルコールなど胃を刺激するものを避けることが大切です。刺激の少ない食事で治りが早くなるという証拠はありません。
すぐに病院に行くべき症状は?
血やコーヒーかすのようなものを吐いた、黒いタール状の便が出た、急に激しい腹痛が起きて続く場合は、出血や穿孔のおそれがあり、すぐに受診が必要です。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 消化性潰瘍
- Ford AC, et al. Eradication therapy for peptic ulcer disease in Helicobacter pylori-positive people. Cochrane Database Syst Rev. 2016
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

