扁桃周囲膿瘍・扁桃周囲炎とは?
のどに感染した細菌(多くはレンサ球菌やブドウ球菌)が、扁桃のまわりの組織の深いところまで広がることがあります。この状態を扁桃周囲炎といいます。さらに細菌が増えて膿がたまると、扁桃周囲膿瘍になります。
扁桃炎をこじらせた結果として起こり、青年や若い成人で最もよくみられます。
普通の扁桃炎との違い
急性扁桃炎では、扁桃が赤く腫れて白い膿がつき、のどの強い痛みや発熱が起こります。扁桃周囲膿瘍では、扁桃だけでなく、扁桃のまわりも赤く大きく腫れます。
のどの痛みが強いときに、すべてが急性扁桃炎とは限りません。扁桃周囲膿瘍のようなより重い病気のこともあります。また、ウイルスが原因の伝染性単核球症のように、一部の抗菌薬を使うと発疹などの副作用が出る病気もあるため、自己判断で薬を使わず、痛みを我慢しないで受診することが大切です。膿がたまる場所によっては、口の中を見ただけではわかりにくいこともあります。
扁桃周囲膿瘍の症状
- 飲み込むときの激しい痛み(耳まで痛みが広がることが多い)
- のどの激しい痛み、全身のだるさ、発熱
- 口が開けにくい(そしゃくの筋肉がけいれんするため)
- 熱いじゃがいもを口に入れているような、くぐもった声
- よだれ、ひどい口臭、首のリンパ節の腫れ
- 痛みをやわらげるために、膿瘍のある側に頭を傾ける
扁桃周囲炎の段階では、扁桃の上と軟口蓋が全体的に赤く腫れます。扁桃は赤くなり、白い斑点がつくこともあります。
膿瘍ができると、口の中では、扁桃が前に押し出され、のどの奥に垂れ下がった口蓋垂が反対側に押されていることがあります。痛みが強くて食事がとれないこともあります。
首のほうへ広がる膿瘍に注意
膿瘍は、扁桃の隣(扁桃周囲膿瘍)だけでなく、のどの側面(副咽頭間隙膿瘍)にできることもあります。扁桃周囲膿瘍がのどの内側へふくらむのに対し、副咽頭間隙膿瘍は首のほうへ突き出ます。
副咽頭間隙膿瘍は扁桃周囲膿瘍より範囲が広く、より危険です。このタイプでは、通常は手術で膿を出します。
扁桃周囲膿瘍の診断
のどの激しい痛みに加えて、次のいずれかがあると扁桃周囲膿瘍が疑われます。
- 口が開けにくい
- くぐもった声
- 口蓋垂が片側に寄っている
膿瘍の位置を確かめるために、超音波検査を行うことがあります。医師がその部分に針を刺して、膿があるかを確かめ、取り出すこともあります。取り出した膿は培養検査に出し、原因の細菌を調べます。のどの側面の膿瘍が疑われるときは、CT検査や超音波検査で確認します。
抗菌薬と膿を出す治療
- 抗菌薬:点滴または飲み薬で使い、培養検査の結果に応じて変更することがあります。合計で10日間続けます。
- 水分の補給:食事や水分がとれないときは点滴を行います。
- 膿を出す:膿瘍がある場合は、スプレーや注射で麻酔をしてから、針を刺すか小さく切開して膿を出します。超音波検査は、針を刺す位置を決めるのに役立ちます。
膿瘍がない扁桃周囲炎であれば、抗菌薬で48時間以内に感染が治まり始めます。多くは外来で治療できますが、点滴や呼吸の見守りのために入院が必要になることもしばしばあります。
再発をくり返す場合の扁桃摘出術
扁桃周囲膿瘍は再発しやすい病気です。くり返す場合は、扁桃を手術で取る(扁桃摘出術)ことで再発を防げます。
手術は、通常は感染が治まってから4〜6週間後に行います。抗菌薬で感染が抑えられない場合はもっと早く行い、まれに、若くて扁桃炎をくり返していた人や閉塞性睡眠時無呼吸がある人などでは、すぐに手術を行うこともあります。
こんなときは早めに受診を
- のどの痛みがとても強く、耳まで痛む
- 唾を飲み込むのもつらい、食事がとれない
- 口が開けにくい、声がくぐもる
のどの強い痛みがあるときは、我慢せず耳鼻咽喉科で相談しましょう。息が苦しいなど呼吸にかかわる症状があれば、緊急の対応が必要です。
出典によって異なる点:針で吸うか、切開するか
MSDマニュアル家庭版は、膿は針を刺すか小さく切開して出すとし、どちらを選ぶかの基準は示していません。また、大半は外来で治療できるとしています。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、腫れたところを切開して膿を出し、抗菌薬を点滴や飲み薬で使うとし、しばしば入院が必要になると説明しています。
コクランのシステマティックレビュー(Changら、2016年)は、11件の研究(674人)をまとめ、針で吸い出す方法と切開して膿を出す方法を比べました。針の方法のほうが再発が多い可能性がある一方、処置のときの痛みは少ない傾向でした。通常の食事に戻るまでの期間には、はっきりした差はみられませんでした。ただし、根拠の質は非常に低く、どちらが優れているかははっきりしないと結論しています。
実際の治療法は、膿瘍の大きさや位置、全身の状態をみて医師が選びます。
扁桃周囲膿瘍のポイント
- 扁桃周囲膿瘍は、扁桃炎をこじらせて扁桃のまわりに膿がたまる病気です。
- 飲み込むときの激しい痛み、口の開けにくさ、くぐもった声が特徴です。
- 首のほうへ広がる副咽頭間隙膿瘍は、より危険です。
- 治療は抗菌薬と、針または切開による排膿です。
- 再発しやすく、くり返す場合は扁桃摘出術で予防できます。
- 針と切開のどちらが優れているかは、研究でもはっきりしていません。
扁桃周囲膿瘍についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
扁桃炎と扁桃周囲膿瘍はどう違いますか?
扁桃炎は扁桃そのものの炎症です。扁桃周囲膿瘍は、感染が扁桃のまわりの組織まで広がり、膿がたまった状態で、扁桃のまわりも大きく腫れます。
どんな症状が出たら疑われますか?
のどの激しい痛みに加えて、口が開けにくい、くぐもった声になる、口蓋垂が片側に寄っているといった症状があると疑われます。
抗菌薬だけで治りますか?
膿がたまっていない扁桃周囲炎なら抗菌薬で治まり始めます。膿瘍がある場合は、針を刺すか切開して膿を出す必要があります。
入院が必要ですか?
多くは外来で治療できますが、点滴や呼吸の見守りのために入院が必要になることもあります。
再発しますか?
再発しやすい病気です。くり返す場合は、扁桃を取る手術で再発を防げます。
扁桃を取る手術はいつ行いますか?
通常は感染が治まってから4〜6週間後です。抗菌薬で感染が抑えられない場合などは、もっと早く行うこともあります。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 扁桃周囲炎と扁桃周囲膿瘍
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 · 口腔・咽頭の病気
- Chang BA, et al. Needle aspiration versus incision and drainage for the treatment of peritonsillar abscess. Cochrane Database Syst Rev. 2016
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

