てんかんとは?けいれん発作との違い
脳が正常に働くためには、神経細胞の電気信号が正しい順序で、整然と発生する必要があります。けいれん発作は、この電気信号の流れが乱れ、脳の神経細胞が異常に放電することで起こります。
- てんかん性の発作:明らかなきっかけがないのに、2回以上起こる発作です。1回だけの発作は、てんかんとはみなされません。
- てんかん性でない発作:感染症、頭のけが、薬への反応、子どもの発熱など、一時的な状態がきっかけで起こる発作です。
成人の約2%が生涯に1回はけいれん発作を経験しますが、そのうち3分の2は1回しか発作を経験しません。てんかんは、幼児期か、高齢になってから始まることが多い病気です。
てんかんの主な原因
主な原因は、発作が始まった年齢によって異なります。
- 2歳未満:高熱や、血液中の糖・カルシウム・マグネシウムなどの一時的な異常
- 2〜14歳:多くの場合、原因を特定できません
- 成人:頭のけが、脳卒中、脳腫瘍による脳の損傷、急な断酒によるアルコール離脱
- 高齢者:脳腫瘍や脳卒中
原因がわからない発作は、特発性と呼ばれます。てんかんのある人は、強い体や心のストレス、睡眠不足、酔っている状態、飲酒や鎮静薬を急にやめたときに、発作を起こしやすくなります。こうした状況を避けることが、発作の予防に役立ちます。まれに、点滅する光や音のくり返しで発作が起こる人もいます。
発作の種類:焦点発作と全般発作
発作の症状は、脳のどこで異常な放電が起こるかによって変わります。
- 焦点起始発作:脳の片側で始まる発作です。意識が保たれるもの(焦点意識保持発作)と、意識が損なわれるもの(焦点意識減損発作)があります。意識が損なわれるタイプでは、無意識に唇をかんだり鳴らしたり、手足をやみくもに動かしたりすることがあります。
- 全般起始発作:脳の両側で始まる発作で、多くは意識が損なわれます。全身の筋肉がこわばってからガタガタと動く強直間代発作(以前の「大発作」)や、筋肉の収縮を伴わない欠神発作などがあります。
焦点発作から始まって、全身に広がる発作もあります。また、発作の直前に「前兆」と呼ばれる異常な感覚(初めて見るのに見たことがあるような感覚など)がみられることもあります。ほとんどの発作は数秒から数分、多くは1〜2分で終わります。
発作の後に起こること
発作が終わった後には、頭痛、筋肉痛、いつもと違う感覚、混乱、深い疲れなどがみられることがあります。これを発作後もうろう状態といいます。多くの人は、発作中に起こったことを覚えていません。
- けが:急で強い筋肉の収縮による骨折や、突然の意識消失による転倒・事故でけがをすることがあります。
- 生活への影響:発作をうまく管理できないと、運転、仕事、保険の加入などが難しくなり、不当な差別を受けることもあります。
- 突然死:まれですが、主に夜間や睡眠中に、予期しない突然死が起こることがあります。
発作を完全に管理できない場合は、発作のない人と比べて死亡する可能性が2〜3倍になるとされています。発作をできるだけ抑えることが大切です。
てんかんの診断
発作の診断は、症状と、発作を目撃した人の話に基づいて行います。発作を起こした本人は何が起きたかを説明できないことが多いため、目撃者の情報がとても役立ちます。
- 目撃者が伝えたいこと:どのくらい急に始まったか、筋肉の動き、舌をかんだか、失禁したか、何分続いたか(可能なら時計で測る)、回復までどのくらいかかったか
- 脳の画像検査:出血や脳卒中、脳腫瘍などがないかをCT検査やMRI検査で調べます。
- 脳波検査:脳の電気的な活動を記録する、痛みのない安全な検査で、診断の確定に役立ちます。くり返し行うこともあります。
- 血液検査・心電図:血糖などの異常や、不整脈がないかを調べます。
短時間の意識消失の多くは、発作ではなく失神によるものです。すぐに回復する場合は失神が、意識が戻った後に数分から数時間混乱が続く場合は発作が疑われます。
抗てんかん薬による治療
- 原因の治療:低血糖などの原因を見つけて取り除ければ、それ以上の治療は必要ありません。
- 抗てんかん薬:通常、発作が2回以上起こり、治療できる原因が否定された場合に使います。大半の人は、最初か2番目に試した1種類の薬で発作を管理できます。
- 決められたとおりに飲む:最も少ない副作用で発作を止められる量を医師が調整します。自己判断で量を変えたりやめたりしないことが大切です。
- やめるとき:発作のない期間が少なくとも2年続いたら、薬を少しずつ減らしてやめることを検討します。再発は、起こるとすれば2年以内が通常です。
抗てんかん薬には眠気などの副作用があり、ほかの薬と影響し合うこともあります。妊娠の可能性がある女性は、薬による赤ちゃんへの影響を減らすため、葉酸のサプリメントをとるべきとされています。
薬が効かない場合:手術や刺激療法
- 手術:複数の薬を使っても発作が続く場合は、てんかんの専門施設で検査を行い、手術を検討します。発作の原因となる部分が狭い範囲に限られている場合、その部分を切除することで、最大60%の人で発作がなくなります。
- 迷走神経刺激療法:胸に埋め込んだ装置で首の迷走神経を周期的に刺激する治療で、焦点起始発作のある人の約40%で発作の回数が半分以下になります。
- 脳への刺激:頭蓋骨の中に装置を埋め込み、発作の起こる部分を刺激する治療もあります。
てんかんは、10年間発作がなく、そのうち後半の5年間に抗てんかん薬を飲んでいなかった場合に、治ったとみなされます。
発作が起きたときの対応と日常生活
家族や友人、同僚は、発作が起きたときの対応を知っておくとよいでしょう。
- 転ばないように支える
- 首の周りの衣服をゆるめる
- 頭の下に枕などを置く(なければ衣服などでもよい)
- 横向きに寝かせて、吐いたものや唾液が肺に入らないようにする
- 口の中にスプーンなどを入れない(歯が折れるなど、害の方が大きい)
- 意識が完全に戻り、混乱がなくなるまでそばを離れない
日常生活では、運動や社会的な活動は勧められますが、飲酒を控え、発作がコントロールできるまでは浴槽につかる、水泳、登山など、突然意識を失うと大けがにつながる活動を控えます。水泳は、監視員のいる場所でのみ行うべきとされています。
出典によって異なる点:ケトン食療法は効くか
MSDマニュアル家庭版は、てんかんの治療として抗てんかん薬、手術、迷走神経刺激療法、脳への刺激を挙げていますが、食事療法については取り上げていません。
コクランのシステマティックレビュー(Martin-McGillら、2020年)は、薬が効きにくいてんかんに対するケトン食療法(脂肪が多く炭水化物の少ない特別な食事)の13件の研究(932人、うち子ども711人)をまとめました。子どもでは、通常のケアと比べて発作がなくなる人や発作が減る人が多くなりましたが、根拠の確実性は低いかとても低いと評価されました。大人での効果ははっきりしていません。
ケトン食療法は、薬が効きにくい子どもや手術が適さない人にとって選択肢の一つになりえますが、医師や管理栄養士の管理のもとで行う必要があります。自己判断で始めないでください。
てんかんのポイント
- てんかんは、明らかなきっかけがないのに、けいれん発作を2回以上くり返す病気です。
- 発作には、全身のけいれんだけでなく、動きが止まる、ぼーっとするなど、さまざまな形があります。
- 診断には、発作を目撃した人の話、脳の画像検査、脳波検査が役立ちます。
- 抗てんかん薬で3分の1の人は発作がなくなり、別の3分の1は発作が大きく減ります。
- 薬が効かない場合は、手術や迷走神経刺激療法などが検討されます。
- 発作が5分以上続く場合はすぐに救急車を呼び、口に物を入れず、横向きに寝かせましょう。
てんかんについてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
てんかんとけいれん発作は同じですか?
同じではありません。けいれん発作は脳の異常な放電で起こる症状で、てんかんは明らかなきっかけがないのに発作を2回以上くり返す病気です。1回だけの発作は、てんかんとはみなされません。
てんかんの発作を起こしやすくするものは?
強い体や心のストレス、睡眠不足、酔っている状態、飲酒や鎮静薬を急にやめたときに起こりやすくなります。まれに、点滅する光や音で発作が起こる人もいます。
発作を見たらどうすればよいですか?
転ばないように支え、首回りをゆるめ、頭の下に枕などを置き、横向きに寝かせます。口にスプーンなどを入れてはいけません。発作が5分以上続く場合は、すぐに救急車を呼んでください。
てんかんは治りますか?
抗てんかん薬で多くの人が発作をコントロールでき、薬が効いた人の3分の2近くは最終的に薬をやめても再発しません。10年間発作がなく、後半の5年間に薬を飲んでいなければ、治ったとみなされます。
抗てんかん薬はいつまで飲みますか?
発作のない期間が少なくとも2年続くまで飲み、その後、医師の判断で少しずつ減らしてやめることを検討します。自己判断でやめると発作が再発することがあります。
てんかんがあっても運動はできますか?
運動や社会的な活動は勧められます。ただし、発作がコントロールできるまでは、水泳や登山、浴槽につかるなど、突然意識を失うと大けがにつながる活動は控えます。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · けいれん性疾患
- Martin-McGill KJ, et al. Ketogenic diets for drug-resistant epilepsy. Cochrane Database Syst Rev. 2020
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
