離人症(離人感・現実感消失症)とは?
離人感・現実感消失症では、体や心から自分が切り離されたような感覚が続いたり、くり返したりします。
- 離人感:自分の生活を外から観察しているように感じます。
- 現実感消失:自分が周りの世界から切り離されているように感じます。
片方だけが起こることも、両方が起こることもあります。
一時的な離人感との違い
一時的な離人感や現実感消失は、よくみられる症状です。約半数の人が、生涯に少なくとも一度は経験します。命にかかわる危険を経験したあと、一部の薬物の使用、強い疲れ、睡眠不足や感覚刺激がない状態などのあとによくみられます。
この感覚が薬物やほかの心の病気によらずに起こり、長く続くかくり返し、強い苦痛や家庭・職場での支障がある場合に、心の病気とみなされます。こうした状態になるのは一般の人の1〜2%で、男女で差はありません。幼児期や小児期に始まることがあり、40歳を過ぎてからの発症はまれです。
離人症の原因
多くの場合、強いストレスを経験した人に起こります。
- 子どものころの心理的虐待やネグレクト
- 身体的虐待
- 家庭内暴力の経験や目撃
- 心身に重い障害のある親がいること
- 愛する人の予期しない死
人間関係、お金、仕事などの強いストレス、うつ病、不安、違法薬物の使用が、症状のきっかけになることもあります。ただし、ストレスが比較的軽い場合や、はっきりしない場合もあります。
離人感の症状
- 自分の体、心、感情、感覚から切り離されているように感じる
- 現実感がない、自分がロボットのように感じる
- 自分の言動を自分でコントロールできないように感じる
- 感情や体がまひしているように感じる
自分の生活を外から見ている、あるいは自分のことを「生ける屍」のようだと表現する人もいます。
現実感消失の症状
- 人や物など周りのすべてから切り離され、現実ではないように感じる
- 夢や霧の中にいる、ガラスの壁や幕で隔てられているように感じる
- 世界が生気や色を失った、作り物のように感じる
- 物がぼやけて、または異常にはっきり、平らに、実際と違う大きさに見える
- 音の大きさや時間の進み方が違って感じられる
これらの症状はほぼ常に強い苦痛になり、不安や抑うつもよくみられます。ストレス、新しい環境や刺激の多い環境、睡眠不足などで悪化することがあります。
「正気を失った」わけではありません
症状をうまく説明できず、正気を失いかけているのではないか、脳に回復できない異常が起きたのではないかと心配する人がよくいます。
しかし、離人感・現実感消失症の人は、切り離されているような体験が現実ではなく、自分がそう感じているだけであることを常に認識しています。この点で、現実と一致しない考えをもちながらそれに気づいていない統合失調症などの精神症とは区別されます。
離人症の診断
- 離人感、現実感消失、またはその両方が長く続くかくり返す
- 自分の体験が現実ではないことを自覚している
- 症状のために強い苦痛があるか、社会生活や仕事で役割を果たせない
これらにもとづいて診断します。同じような症状を起こすほかの心の病気、けいれん性の病気、薬物の使用などではないことを確かめるため、MRI、CT、脳波検査、血液・尿検査が行われることがあります。心理検査や質問票も診断に役立ちます。
離人症の治療と経過
離人感・現実感消失症は、治療しなくても自然によくなることがあるため、症状が続く、くり返す、苦痛を伴う場合に治療します。不安やうつ病がある場合は、その治療も必要です。
- 認知療法:現実感がないことについてのとらわれた考えを止めるのに役立つ可能性があります。
- 行動療法:課題に没頭することで、離人感から気をそらすのに役立つ可能性があります。
- グラウンディング:大きな音で音楽をかける、手のひらに氷をのせるなど、五感を使って自分と現実とのつながりを感じやすくします。
- 薬:有効性が証明された薬はありません。抗不安薬や抗うつ薬が不安や抑うつを和らげることがありますが、症状を悪化させることもあるため、医師が注意深く見守ります。
症状の原因になっているストレスに対処できれば、完全な回復が期待できる人も多くいます。
出典によって異なる点:認知行動療法の根拠
MSDマニュアル家庭版は、精神療法、特に認知行動療法がしばしば役立つとしていますが、その根拠となる研究の規模には触れていません。
21人の患者に個別の認知行動療法を行った研究(Hunterら、2005年)では、症状を脅威ではないものとしてとらえ直すこと、避ける行動や安全確認の行動、症状の監視を減らすことに取り組みました。治療後と6カ月後に、離人感の強さ、抑うつ、不安、生活機能が改善し、29%の人は治療終了時に診断基準に当てはまらなくなりました。ただし、対照群のない小規模な研究であり、より大規模で厳密な試験が必要としています。
つまり、認知行動療法は有望ですが、治療の根拠はまだ限られており、専門家と相談しながら進めることが大切です。
離人症のポイント
- 離人症は、自分や周りの世界から切り離されたような感覚が続く、またはくり返す病気です。
- 一時的な離人感は約半数の人が経験しますが、病気といえるのは1〜2%です。
- 子どものころの虐待など、強いストレスがきっかけになることが多くあります。
- 本人は体験が現実ではないと自覚しており、精神症とは区別されます。
- 認知行動療法やグラウンディングなどの精神療法が治療の中心です。
- ストレスに対処できれば、完全な回復が期待できる人も多くいます。
離人症についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
離人感はだれにでも起こりますか?
約半数の人が、生涯に一度は経験します。強い疲れや睡眠不足、危険な体験のあとなどによくみられます。
どんなときに病気と考えますか?
薬物やほかの病気によらずに離人感が長く続くかくり返し、強い苦痛や家庭・職場での支障がある場合です。
離人症は統合失調症と関係がありますか?
離人症の人は、自分の体験が現実ではないと自覚しています。この点で、統合失調症などの精神症とは区別されます。
原因は何ですか?
子どものころの虐待やネグレクト、家庭内暴力、愛する人の死など、強いストレスを経験した人に多く起こります。
自分でできることはありますか?
五感を使うグラウンディング(音楽を聴く、手に氷をのせるなど)や、ほかの考えや活動に集中することが助けになることがあります。
離人症は治りますか?
自然によくなることもあり、原因のストレスに対処できれば完全な回復が期待できる人も多くいます。慢性化する場合もあります。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 離人感・現実感消失症
- Hunter ECM, et al. Cognitive-behaviour therapy for depersonalisation disorder: an open study. Behav Res Ther. 2005
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
