脳震盪(脳しんとう)とはどんな状態?
脳しんとうは、頭のけがによって、意識の状態や頭の働きに一時的な変化が起こるものです。意識を失うこともありますが、CTやMRIなどの画像検査では、脳の構造に明らかな損傷はみられません。
画像には映らなくても、脳の細胞は一時的に傷つき、うまく働かなくなっています。意識を失った場合も多くは短時間で戻り、15分以上続くことはまれです。脳しんとうが起きたことに本人が気づかないこともあります。
脳しんとうの症状
次のうち、少なくとも1つの症状が一時的に現れます。
- 錯乱:ぼんやりして、返事が遅くなる。スポーツでは、敵と味方の区別やスコアがわからなくなる
- 記憶障害:けがの直前や直後の出来事を思い出せない
- 物が二重に見える、光をまぶしく感じる
- めまい、動きのぎこちなさ、バランスの乱れ
- 頭痛、吐き気や嘔吐
- 耳鳴り、においや味がわからない
脳しんとう後症候群:数日から数週間続く症状
脳しんとうのあと、次のような症状が続くことがあります。
- 頭痛、疲れやすさ、眠りの問題
- 短期間の記憶の問題、集中力の低下
- 光や音への過敏さ
- いらいらする、気分が変わりやすいなどの性格の変化
これらは脳しんとうから1週間以内によくみられ、多くは2週目には消えます。ただし、数カ月、まれに数年続くこともあります。10代では、いらいらや疲れ、集中力の低下が、思春期によくある問題と誤解されることがあるため注意が必要です。
くり返す脳しんとうとセカンドインパクト症候群
一度脳しんとうを起こした人は、再び起こしやすくなります。回復してから競技に戻っても、脳しんとうを起こしたことのない選手に比べて、再び起こすリスクは2〜4倍とされます。2回目以降は、1回目より弱い衝撃でも起こります。
- セカンドインパクト症候群:前の脳しんとうから完全に回復しないうちに2回目を起こすと、脳が急速に腫れることがあります。まれですが、この症候群になった選手のほぼ半数が亡くなる、深刻な合併症です。
- 慢性外傷性脳症:脳しんとうを数回起こした人の約3%に長期的な脳の損傷が残り、記憶障害、判断力の低下、性格の変化、うつ病、パーキンソン病に似た症状などが現れます。
脳しんとうをくり返すと、後年に認知症、パーキンソン病、うつ病のリスクが高まることがあります。
スポーツと脳しんとう
サッカー、ラグビー、アイスホッケー、ラクロスなど、高速でぶつかり合うスポーツでは脳しんとうのリスクが特に高くなりますが、チアリーディングを含め、どのスポーツにもある程度のリスクがあります。人とぶつかるスポーツの選手の約20%が、1シーズンに1回は脳しんとうを経験しています。
選手は競技を続けたいために、症状を否定したり控えめに伝えたりすることがあります。指導者や周りの大人は、このことを知っておく必要があります。評価用のツールも公開されており、コーチやトレーナーが選手の状態を確認するのに役立ちます。
脳しんとうの検査
脳しんとうの症状があるときは、このようなけがの評価に慣れた医師の診察を受けるべきです。診断には、脳の構造が傷ついていないことを確かめる必要があり、CT検査やMRI検査、またはその両方が行われることがあります。
特に、脳の中や脳と頭蓋骨の間に血液がたまる(頭蓋内血腫)、脳の打撲(脳挫傷)などの深刻な損傷が疑われる場合には、画像検査が行われます。脳の構造に損傷がないことが確認されれば、症状に応じた治療だけを行います。
脳しんとうの治療:頭と体を休める
- 頭と体の安静:学校や仕事での活動、運転、飲酒、パソコンやテレビ、ゲームなど脳への強い刺激は避けます。
- 痛みにはアセトアミノフェン:アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬は、傷ついた血管から出血を起こすおそれがあるため使いません。
- 経過の観察:症状が悪化した場合は、診療所や病院で評価を受けます。
- こころのケア:気持ちの面に問題が出た場合は、精神療法が必要になることもあります。
段階的に競技へ戻る
症状が消えたら、次のように少しずつ負荷を上げていきます。ある段階を症状なしでやり遂げられるまで、次の段階には進みません。
- 軽い有酸素運動
- その競技に特有のトレーニング
- 接触のないトレーニング
- フルコンタクトのトレーニング
- 試合への復帰
どれだけ早く良くなっても、症状のない状態が1週間続くまでは完全な競技に戻るべきではありません。5分以上意識を失った、けがの前後24時間以上の記憶がないなど、重い脳しんとうの場合は、少なくとも1カ月待つべきとされています。
出典によって異なる点:どのくらい安静にするべきか
MSDマニュアル家庭版は、脳しんとうの最も効果的な治療は頭と体の両方の安静だとし、学校や仕事、画面を見ることなどを避けるようすすめています。ただし、安静の具体的な日数は示していません。
小児救急外来で行われたランダム化比較試験(Thomasら、2015年)は、受傷から24時間以内に受診した11〜22歳の脳しんとうの患者(88人を解析)を対象に、5日間の厳格な安静と、1〜2日の安静のあと段階的に活動に戻る通常の対応とを比べました。厳格な安静には利点がなく、厳格な安静のグループのほうが報告した症状が多く、症状の改善も遅い結果でした。
つまり、休むことは大切ですが、長く厳しく休むほど良いとは限りません。1〜2日の安静のあと、症状をみながら段階的に活動を戻していく方法が、研究の結果とも合っています。
脳しんとうのポイント
- 脳しんとうは、画像では異常がなくても、頭の働きが一時的に乱れる状態です。
- 錯乱、記憶障害、頭痛、めまい、吐き気などが現れ、数週間続くこともあります。
- 完全に回復する前に再び頭を打つと、セカンドインパクト症候群などの重い合併症の危険があります。
- 治療の基本は頭と体の安静で、痛みにはアセトアミノフェンを使います。
- 競技への復帰は段階的に行い、症状のない状態が1週間続くまで完全には戻りません。
- 研究では、5日間の厳格な安静に利点はなく、症状がかえって多くなりました。
脳しんとうについてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
CTで異常がなければ脳しんとうではないのですか?
いいえ。脳しんとうでは、画像検査で異常がみられなくても、脳の細胞が一時的にうまく働かなくなり、症状が現れます。
意識を失わなければ大丈夫ですか?
脳しんとうは、意識を失わなくても起こります。錯乱や記憶障害、頭痛、めまいなどがあれば、医師の評価を受けてください。
症状はどのくらい続きますか?
多くは1週間以内にみられ、2週目には消えます。ただし、数カ月、まれに数年続くこともあります。
頭痛には何を飲めばよいですか?
アセトアミノフェンが使われます。アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬は出血を起こすおそれがあるため避けます。
いつスポーツに戻れますか?
症状がすべて消え、医師の評価が終わってから、段階的に戻ります。症状のない状態が1週間続くまで、完全な競技には戻らないでください。
長く安静にしているほど早く治りますか?
研究では、5日間の厳格な安静には利点がなく、症状がかえって多く報告されました。1〜2日休んだあと、段階的に活動を戻すのが一般的です。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 脳しんとう
- MSDマニュアル家庭版 · スポーツ関連脳しんとう
- Thomas DG, et al. Benefits of strict rest after acute concussion: a randomized controlled trial. Pediatrics. 2015
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
