振戦(ふるえ)とは?
振戦は、手や頭、声、体幹、脚などに起こる、自分の意思とは関係のないリズミカルなふるえです。筋肉が縮んだりゆるんだりをくり返すことで起こります。
- 安静時振戦:筋肉を休めているときに起こるふるえ。多くはパーキンソン病によるものです。
- 姿勢時振戦:腕をまっすぐ伸ばすなど、一定の姿勢を保っているときに起こるふるえ。
- 運動時振戦:体を動かしているときに起こるふるえ。
本態性振戦の特徴
本態性振戦は、神経の異常によって起こるふるえですが、ふるえ以外の神経の症状はほとんど伴いません。原因はわかっていませんが、しばしば家族内でみられます。
- 主に成人期の早い時期に始まりますが、どの年齢でも起こります。
- 年齢とともに徐々に目立つようになるため、「老人性振戦」と誤って呼ばれることがあります。
- 通常は腕や手に起こり、ときに頭にも起こって、うなずいたり首を横に振ったりしているように見えます。
- 腕や脚を動かしたり、まっすぐ伸ばしたりすると悪化します。
生活への影響
本態性振戦は通常は軽く、ひどくなることはありませんが、わずらわしさや、人前で恥ずかしい思いを感じることがあります。字が書きにくい、食器がうまく使えないといった不便も生じます。
一部の人では、時間とともにふるえが徐々に悪化し、生活に支障が出るようになります。高齢者では、ほかの体や心の不調と重なると、生活の質を大きく下げることがあります。
生理的振戦・パーキンソン病との違い
- 生理的振戦:誰にでもある正常なふるえです。手を広げたままにすると、多くの人でかすかに手がふるえます。ストレスや不安、睡眠不足、カフェイン、一部の薬、甲状腺機能亢進症などで目立つことがあります。
- パーキンソン病:主に安静時にふるえが起こります。本態性振戦は症状が似ていることがあり、ときにパーキンソン病と誤って診断されます。また、両方を併せもつ人もいます。
ふるえが徐々に始まった場合は、通常、生理的振戦か本態性振戦が考えられます。突然始まった場合は、心理的な要因、薬や飲酒の中止、甲状腺の病気などが考えられます。
すぐに受診すべきふるえ
- 突然始まったふるえ
- 50歳未満で、家族に本態性振戦の人がいない場合のふるえ
- 精神状態の変化、筋力低下、歩き方の変化、話しにくさなど、ほかの神経の症状を伴う
- 心拍数の上昇や興奮を伴う
これらのサインがあれば、すぐに受診してください。サインがなくても、できるだけ早く受診しましょう。高齢者の多くは、ふるえを年のせいと考えて受診しませんが、原因を確かめることで対策や治療をすすめてもらえます。
本態性振戦の診察
医師は、ふるえがいつ、どのように始まったか、体のどこに起こるか、何で軽くなったり悪くなったりするか(飲酒、カフェイン、ストレスなど)、家族にふるえのある人がいるか、使っている薬などを尋ねます。
診察では、手を膝に置いて休めているとき、腕を伸ばしているとき、歩いたり作業をしたりしているときのふるえを観察します。多くは病歴と診察で原因がわかり、必要に応じて甲状腺や血糖などの血液検査を行います。
日常でできる対処法と補助具
軽いふるえであれば、治療の必要はありません。ふるえがわずらわしい場合は、次のような簡単な工夫が役立ちます。
- 物をしっかりつかみ、落とさないよう体の近くで持つ
- 無理な姿勢をとらない
- カフェイン、睡眠不足、疲れなど、ふるえのきっかけを避ける
- 作業療法士の指導を受けて、持ち手の大きい食器、ボタンをかける補助具、面ファスナー、ストローなどの補助具を使う
少量の飲酒でふるえが軽くなる人もいますが、医師がすすめる方法ではありません。大量に飲んだあとに急にやめると、ふるえは悪化します。
薬と脳深部刺激療法
- 薬:ふるえのコントロールに必要な場合は、ベータ遮断薬や抗てんかん薬が使われます。ほかの薬が効かない場合に鎮静作用のある薬が使われることもありますが、使用は短期間に限ります。
- 脳深部刺激療法:脳の深い部分に小さな電極を入れ、弱い電気を送ってふるえをやわらげます。ふるえが重く、日常生活に支障があり、薬でコントロールできない場合にだけ、専門の施設で行われます。
高齢者は薬の副作用に敏感なため、効果が得られる最小限の量で処方されることがあります。
出典によって異なる点:どの治療の根拠が確かか
MSDマニュアル家庭版は、日常の工夫や補助具を中心に、必要に応じて薬を、薬が効かない重い場合に脳深部刺激療法を使うとしています。
国際パーキンソン病・運動障害学会のエビデンスレビュー(Ferreiraら、2019年)は、64件の研究を検討し、手足のふるえに対しては、ベータ遮断薬の一種と抗てんかん薬の2種類(うち1種類は高用量の場合)を「臨床的に有用」としました。ボツリヌス毒素の注射、脳深部刺激療法、高周波や集束超音波による脳の一部の凝固術は「おそらく有用」とされました。一方、声や頭のふるえについては、根拠が不十分でした。
このように、手のふるえには根拠のある治療がありますが、頭や声のふるえへの治療はまだ確立していません。
本態性振戦のポイント
- 本態性振戦は、動作や姿勢を保つときに手や腕、ときに頭がふるえる病気です。
- 原因は不明ですが、しばしば家族内でみられ、年齢とともに目立ちます。
- 主に安静時にふるえるパーキンソン病とは異なりますが、誤診されることがあります。
- 突然のふるえや、ほかの神経の症状を伴う場合は、すぐに受診してください。
- 軽ければ治療は不要で、日常の工夫や補助具が役立ちます。
- 生活に支障がある場合は、薬や脳深部刺激療法などが検討されます。
本態性振戦についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
本態性振戦は遺伝しますか?
原因はわかっていませんが、しばしば家族内でみられます。
パーキンソン病とどう違いますか?
パーキンソン病では主に安静時にふるえが起こります。本態性振戦は、腕を伸ばしたり動かしたりするときにふるえが悪化し、ほかの神経の症状はほとんど伴いません。
年をとると誰でも手がふるえますか?
誰にでも正常なかすかなふるえ(生理的振戦)はあります。ただし、ふるえを年のせいと決めつけず、一度は医師に原因を確かめてもらいましょう。
お酒を飲むとふるえが止まるのですが?
少量の飲酒でふるえが軽くなる人もいますが、医師がすすめる方法ではありません。大量に飲んだあとに急にやめると、ふるえは悪化します。
治療は必要ですか?
軽いふるえなら治療は必要ありません。生活に支障がある場合は、日常の工夫や補助具、薬などで対処します。
手術で治せますか?
薬でコントロールできない重いふるえには、脳深部刺激療法などが検討されます。専門の施設で行われます。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 振戦
- Ferreira JJ, et al. MDS evidence-based review of treatments for essential tremor. Mov Disord. 2019
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
