ジストニアとは?
ジストニアは、筋肉が意図せずに収縮することで、体の一部がゆがんだり、ねじれたりする運動障害です。筋肉は数分間から数時間にわたって縮んだままのこともあれば、予期せずに縮んだりゆるんだりをくり返すこともあります。
ジストニアは、筋肉の動きを調整している脳のいくつかの部分の活動が過剰になることで起こると考えられています。たとえば、筋肉の動きを始めて滑らかにし、意図しない動きを抑える大脳基底核や、全身の動きを調整する小脳、運動の情報をやりとりする視床、大脳皮質などです。
ジストニアの種類:体のどこに現れるか
- 局所性ジストニア:体の1つの部位に起こります。典型的には20〜30代で始まりますが、もっと早く起こることもあります。
- 分節性ジストニア:隣り合う2つ以上の部位に起こります。
- 多巣性ジストニア:隣り合っていない2つ以上の部位に起こります。
- 全身性ジストニア:体幹に加えて、さらに2つの部位に起こります。
局所性や分節性のジストニアでは、初めは特定の動作をしているときだけけいれんが起こり、安静にしていると治まります。数日、数週間、あるいは数年かけてけいれんの頻度が少しずつ増え、安静時にも起こるようになることがあります。
局所性ジストニアの代表的な例
- 眼瞼けいれん:まぶたが意図せずにくり返し閉じます。初めは片方の目だけのこともありますが、最終的には両目に起こります。まばたきが増える、目の刺激感、まぶしさなどから始まることが多くあります。
- 痙性斜頸(頸部ジストニア):首の筋肉が侵され、首が傾いたりねじれたりします。
- けいれん性発声障害:声帯の筋肉が意図せずに縮み、声がふるえる、かすれる、途切れる、ささやき声になるなどして、聞き取りにくくなります。
- 職業性ジストニア:体の一部の使いすぎが関係するもので、特定の動作のときだけ起こります。ゴルファーの手や手首に起こるもの(イップス)などがあります。
- メージュ症候群:意図しないまばたきに、歯ぎしりやしかめ面を伴います。
全身性ジストニアと、遺伝するタイプ
全身性ジストニアは、遺伝子の変化によるものが多く、親のどちらかから異常な遺伝子を1つ受け継ぐだけで発症することがあります。
- 原発性全身性ジストニア:まれなタイプで、進行性で、しばしば遺伝します。多くの場合、原因となる具体的な遺伝子の変化がわかっています。
- ドパ反応性ジストニア:まれな遺伝性のタイプで、通常は子どものころに始まります。典型的には片脚から始まり、つま先歩きがみられるようになり、症状は夜に悪化します。
ドパ反応性ジストニアのある子どもなどでは、パーキンソン病にも使われる薬(レボドパとカルビドパの組み合わせ)で劇的に改善することがあります。
ジストニアの原因
- 遺伝子の変化:一次性ジストニアと呼ばれます。
- ほかの病気:多発性硬化症、出生時やその後の脳の重い酸素不足、ウィルソン病(銅が体にたまる病気)などで起こることがあります。二次性ジストニアと呼ばれます。
- 薬:精神の病気の治療に使う抗精神病薬や、吐き気止めの一部で起こることがあります。
薬によるジストニアでは、まぶたが閉じる、首がねじれる、背中がそる、しかめ面になる、唇をすぼめる、舌が突き出るといった症状が現れることがあります。
ジストニアの診断
ジストニアは通常、症状と診察の結果に基づいて診断します。どの部位の筋肉がどのように縮んでいるか、どんな動作で起こるか、安静時にもあるかなどを確認します。
- 原因を調べる検査:ほかの病気が原因として疑われる場合は、CT検査やMRI検査などを行います。
- 薬の確認:抗精神病薬や吐き気止めなど、ジストニアを起こしうる薬を使っていないかを確認します。
眼瞼けいれんは、まばたきが増える、目の刺激感、まぶしさなどから始まることが多いため、こうした症状が続く場合も相談するとよいでしょう。
ジストニアの治療
- 原因の治療:原因がわかれば、それを是正したり取り除いたりすると、けいれんが軽くなります。抗精神病薬が原因の場合は、ある種の抗ヒスタミン薬を速やかに注射するか飲むことで、通常はけいれんをすぐに止められます。
- ボツリヌス毒素の注射:局所性や分節性のジストニア、主に1つの部位を侵している全身性ジストニアに対して、第一に選ぶべき治療です。過剰に働いている筋肉に注射して、筋肉の縮みを弱めます。
- 飲み薬:全身性ジストニアでは、けいれんの原因となる神経の信号を遮る薬(抗コリン薬)などが使われます。
- 脳深部刺激療法:重い全身性ジストニアや、薬が効かない場合に、大脳基底核に小さな電極を埋め込んで刺激する治療です。
- 理学療法:一部の人に役立ち、とくにボツリヌス毒素の治療を受けた人に有用です。
ジストニアとの付き合い方
局所性ジストニアでは、特定の動作で症状が出るため、仕事や趣味、運転などの日常生活に影響することがあります。
- 注射が特に役立つタイプ:ボツリヌス毒素の注射は、眼瞼けいれんと痙性斜頸にとくに有用です。
- 神経には影響しない:ボツリヌス毒素は筋肉の縮みを弱めますが、神経そのものには影響しません。
- リハビリテーション:注射とあわせて理学療法を行うことで、効果を生かしやすくなります。
ボツリヌス毒素の効果は時間とともに弱まるため、通常は一定の間隔で注射をくり返します。治療の計画は、症状に合わせて医師と相談しましょう。
出典によって異なる点:ボツリヌス毒素注射の効果と副作用
MSDマニュアル家庭版は、局所性・分節性のジストニアに対して、ボツリヌス毒素の注射を第一に選ぶべき治療としています。
コクランのシステマティックレビュー(Castelãoら、2017年)は、首のジストニア(痙性斜頸)の1,010人を対象とした8件のランダム化試験をまとめました。1回のボツリヌス毒素A型の注射で、4週間後の症状の評価は偽薬と比べて平均で約19%改善し、痛みも軽くなりました。一方で、副作用が出る人は偽薬よりやや多く、飲み込みにくさ(約9%)や全身の脱力・だるさ(約10%)が最も多い副作用でした。
ボツリヌス毒素の注射は効果が確かめられた治療ですが、飲み込みにくさなどの副作用が出ることもあります。注射の後に気になる症状があれば、担当の医師に伝えましょう。
ジストニアのポイント
- ジストニアは、筋肉が意図せずに縮み続け、体の一部がねじれたりゆがんだりする病気です。
- 体の1か所に起こる局所性から、全身に及ぶ全身性まで、いくつかの種類があります。
- 眼瞼けいれん、痙性斜頸、けいれん性発声障害、職業性ジストニアなどが代表的です。
- 遺伝子の変化、ほかの病気、抗精神病薬や吐き気止めなどの薬が原因になります。
- 局所性ジストニアには、ボツリヌス毒素の注射が第一の選択肢です。
- 重い全身性ジストニアには、飲み薬や脳深部刺激療法が検討されます。
ジストニアについてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
ジストニアとはどんな病気ですか?
筋肉が自分の意思とは関係なく縮み続け、体の一部がねじれたりゆがんだりする病気です。まぶた、首、声帯、手など、体の1か所に起こることも、全身に起こることもあります。
ジストニアの原因は何ですか?
遺伝子の変化によるもの、多発性硬化症やウィルソン病などほかの病気によるもの、抗精神病薬や吐き気止めなどの薬によるものがあります。
イップスもジストニアですか?
ゴルファーの手や手首に起こるイップスは、体の一部の使いすぎに関係する職業性ジストニア(動作特異性ジストニア)の一つとされています。
ジストニアはどうやって診断しますか?
通常は、症状と診察の結果に基づいて診断します。ほかの病気が原因として疑われる場合は、CT検査やMRI検査などを行います。
ボツリヌス毒素の注射はどんな治療ですか?
過剰に働いている筋肉に注射して、筋肉の縮みを弱める治療です。局所性や分節性のジストニアに対する第一の選択肢で、飲み込みにくさなどの副作用が出ることがあります。
薬でジストニアが起こることはありますか?
あります。精神の病気の治療に使う抗精神病薬や、一部の吐き気止めで起こることがあります。抗精神病薬によるものは、通常、治療で速やかに止めることができます。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · ジストニア
- Castelão M, et al. Botulinum toxin type A therapy for cervical dystonia. Cochrane Database Syst Rev. 2017
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
