パーキンソン病とは?
パーキンソン病は、脳の奥にある「大脳基底核」という部分の神経細胞が、ゆっくりと進行性に変性していく病気です。大脳基底核は、体を思いどおりに動かし、動きを滑らかにし、余計な動きを抑え、姿勢の変化を調整する働きをしています。
この部分の神経細胞は、ドパミンという神経伝達物質を使って情報をやりとりしています。パーキンソン病では、黒質という部位の神経細胞が変性してドパミンが減り、動きの調節がうまくいかなくなります。
パーキンソン病は、脳や脊髄の変性の病気としてはアルツハイマー病に次いで多く、一般に50〜79歳のあいだに始まります。パーキンソン病と同じような症状が、ほかの病気や薬によって起こる場合は「パーキンソニズム」と呼ばれます。
パーキンソン病の原因
多くの場合、具体的な原因はわかりません。パーキンソン病では、神経細胞の中にシヌクレインというタンパク質がたまり、「レビー小体」と呼ばれるかたまりをつくります。シヌクレインは脳だけでなく、心臓、食道、腸などの神経にもたまることがあり、そのためふらつき、便秘、飲み込みにくさなど、さまざまな症状が起こると考えられています。
- パーキンソン病の人の約10〜25%には、パーキンソン病の近親者がいます
- いくつかの遺伝子の変異が見つかっています
- 頭のけがや殺虫剤にさらされることは、発症のリスクを高める可能性があります
- カフェインの摂取や体を動かすことは、リスクの低下につながる可能性があります
パーキンソン病の初期症状と運動症状
パーキンソン病はかすかな症状から始まり、少しずつ進みます。最初に気づかれるのは、ふるえや動きの変化、においのわかりにくさであることが多いとされます。
- ふるえ(振戦):多くは片方の手が休んでいるときに起こり、指で小さな丸薬を転がすような動きになります。手を動かしているときには目立たず、眠っているあいだは止まります。ストレスや疲れで強まり、やがて反対側の手や足にも広がります。ふるえが起こらない人もいます。
- こわばり(筋強剛):筋肉が硬くなり、動きにくくなります。
- 動作の遅さ:動きが遅く小さくなり、動き始めるのが難しくなります。
- バランスと歩行:姿勢が前かがみになり、転びやすくなります。最初の一歩が出にくく、歩き出すと小刻みにすり足で歩くようになります。
寝返り、車の乗り降り、深い椅子から立ち上がることや、シャツのボタンをかける、靴ひもを結ぶといった細かい動作も、だんだん難しくなります。字を書くと小さくなっていく(小字症)のも特徴です。
話し方と飲み込みの変化
パーキンソン病では、口やのど、顔の筋肉の動きも影響を受けます。
- 話し方:声が小さく、抑揚の少ない単調な話し方になることがよくあります。
- 表情:顔の筋肉が動きにくくなり、表情が乏しくなります(仮面様顔貌)。そのため、うつ病と間違われたり、逆にうつ病が見過ごされたりすることがあります。
- 飲み込み:顔とのどの筋肉が硬くなると飲み込みにくくなり、よだれが出る、食べものをのどに詰まらせるといったことが起こります。食道の動きもゆっくりになります。
飲み込みにくさから、唾液や食べもの、飲みものが気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」が起こると、肺炎の原因になります。飲み込みが難しくなるにつれ、誤嚥性肺炎で命を落とすリスクも高まるため、早めに評価を受け、食事の形態や姿勢を工夫することが大切です。飲み込みにくさで食べられる量が減る場合は、栄養の豊富な食事を心がけます。
そのほかの症状:睡眠・自律神経・こころ
- 睡眠:不眠などの睡眠障害がよくみられ、夢の内容に合わせて体が動いてしまう「レム睡眠行動障害」もよく起こります。
- 排尿:尿が出にくい、急に我慢できない尿意がある、尿もれがある。
- 便秘:腸の動きがゆっくりになり、運動不足や薬で悪化することがあります。
- 立ちくらみ:立ち上がったときに血圧が大きく下がることがあります(起立性低血圧)。
- においがわからない:よくみられますが、気づかれないこともあります。
- こころの症状:うつ症状は、運動の症状より何年も前から現れることもあります。約3分の1の人では、通常は病気の後期に認知症が現れます。幻覚や妄想がみられることもあります。
パーキンソン病の薬が、ギャンブルや買い物がやめられないなどの衝動を抑えにくい行動の原因になることもあります。このような変化に気づいたら、主治医に相談してください。
パーキンソン病の診断
パーキンソン病を直接確定できる検査や画像診断はなく、症状と診察から診断します。動きが少なく遅い、特徴的なふるえ、筋肉のこわばりがあり、レボドパという薬で症状がはっきりと長く改善する場合は、パーキンソン病の可能性が高くなります。
初期の症状はかすかなため、早い段階での診断は難しいことがあります。また、年齢を重ねるとバランスの低下や動作の遅れ、前かがみの姿勢などが起こるため、高齢者では見分けにくい場合があります。
ほかの原因を除くため、医師はこれまでの病気、有害な物質にさらされたことがないか、パーキンソニズムを起こす薬を使っていないかを尋ねます。脳の構造の異常がないかを確かめるためにCTやMRIを行うこともあります。
パーキンソン病の治療:薬と手術
病気そのものを止める治療はまだありませんが、運動の働きを改善し、何年ものあいだ日常生活を保てるようにする薬が数多くあります。
- レボドパ(カルビドパとの合剤):治療の中心となる飲み薬で、体の中でドパミンに変わり、こわばりや動きにくさ、ふるえを大きく改善します。副作用として、口や顔、手足が勝手に動く不随意運動(ジスキネジア)、幻覚、血圧の変化、衝動を抑えにくい行動などがあります。
- ほかの薬:ドパミン作動薬などは一般にレボドパより効果は弱いものの、レボドパの副作用が強い場合などに役立ちます。複数の薬を組み合わせることもあります。
レボドパを5年以上使い続けると、半数以上の人で、薬がよく効く時間と効かない時間が急に入れ替わる「オン・オフ現象」が起こります。1回の量を減らして回数を増やすなどの調整が行われます。不随意運動やオン・オフ現象が強い場合は、脳の一部に電極を埋め込む「脳深部刺激療法」が検討されることがあります。
薬の副作用と思われる変化があれば主治医に伝え、指示なく自己判断で薬をやめないでください。
日常生活の工夫とリハビリテーション
移動する力と自立を保つために、次のような工夫が役立ちます。
- できるだけ多くの日常の活動を続け、定期的な運動を習慣にする
- 服のボタンを面ファスナーに替える、面ファスナーの靴を選ぶなど、着替えを簡単にする
- 転倒を防ぐため、小さな敷物を片づけ、浴室や廊下に手すりをつける
- 便秘には、食物繊維の多い食事と十分な水分をとる
理学療法士や作業療法士は、こうした工夫を生活に取り入れる方法や、筋肉の緊張をほぐして関節の動きを保つ体操、歩行器などの補助具について助言します。
病気が進むと、食事、入浴、着替え、トイレなどに介護が必要になります。介護する家族が病気について学び、自分の負担にも目を向けることが大切です。意思決定が難しくなる前に、どのような医療やケアを望むかを家族や医療者と話し合っておくこともすすめられています。
出典によって異なる点:言語療法は話し方に効くか
MSDマニュアル家庭版は、パーキンソン病で話し方が単調で小声になること、飲み込みにくさが誤嚥性肺炎の危険を高めることを説明していますが、生活を支えるリハビリとしては主に理学療法と作業療法を挙げ、話し方の訓練(言語療法)については詳しく触れていません。
Muñoz-Viguerasらの系統的レビューとメタアナリシス(2021年)は、パーキンソン病による話しにくさ(運動低下性構音障害)に対する言語療法の研究15件(619人)をまとめました。治療を受けなかった人などと比べた7件の研究を合わせて解析したところ、言語療法を受けた人では、声の大きさ、声の高さの変化(抑揚)、聞き取りやすさが改善していました。
パーキンソン病の声の小ささや単調さには、言語聴覚士による話し方の訓練が役立つ可能性が示されています。話しにくさや飲み込みにくさを感じたら、主治医に相談してみましょう。

パーキンソン病のポイント
- パーキンソン病は、ドパミンをつくる神経細胞が変性し、体の動きの調節がうまくいかなくなる病気です。
- 休んでいるときの手のふるえ、こわばり、動作の遅さ、前かがみの姿勢や小刻みな歩き方などが特徴です。
- 声が小さく単調になる、表情が乏しくなる、飲み込みにくくなるといった変化も起こり、誤嚥性肺炎に注意が必要です。
- 睡眠、排尿、便秘、立ちくらみ、においの低下、うつ、認知症など、運動以外の症状もよくみられます。
- レボドパを中心とする薬で多くの人が何年も生活を保てますが、長く使うとオン・オフ現象などが起こります。
- 運動の習慣、生活動作の工夫、理学療法・作業療法に加え、言語療法も話し方の改善に役立つ可能性があります。
パーキンソン病についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
パーキンソン病の初期症状にはどんなものがありますか?
片方の手が休んでいるときのふるえ、動きが遅く小さくなる、筋肉のこわばり、においがわかりにくくなるといった変化から始まることが多いとされます。字が小さくなる、声が小さくなる、表情が乏しくなることもあります。
パーキンソン病は遺伝しますか?
パーキンソン病の人の約10〜25%には、パーキンソン病の近親者がいて、いくつかの遺伝子の変異も見つかっています。ただし、多くの場合、具体的な原因はわかりません。
パーキンソン病で声が小さくなるのはなぜですか?
口やのど、顔の筋肉の動きも影響を受けるため、声が小さく、抑揚の少ない単調な話し方になることがよくあります。研究では、言語療法によって声の大きさや聞き取りやすさが改善することが示されています。
飲み込みにくいときはどうすればよいですか?
飲み込みにくさは、食べものが気管に入る誤嚥や肺炎の原因になります。むせることが増えたら早めに主治医に相談し、評価を受けて食事の形態や姿勢を工夫しましょう。食べられる量が減る場合は、栄養の豊富な食事を心がけます。
パーキンソン病の薬にはどんな副作用がありますか?
中心となるレボドパでは、勝手に体が動く不随意運動、幻覚、血圧の変化、ギャンブルや買い物がやめられないなどの衝動の問題が起こることがあります。気になる変化は主治医に伝え、自己判断で薬をやめないでください。
日常生活で気をつけることはありますか?
できるだけ日常の活動と運動を続け、着替えを簡単にする工夫や、敷物を片づけて手すりをつけるなどの転倒予防をしましょう。便秘には食物繊維と水分を十分にとります。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · パーキンソン病
- Muñoz-Vigueras N, et al. Speech and language therapy treatment on hypokinetic dysarthria in Parkinson disease: systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2021
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

