膵炎とは?急性と慢性の違い
膵臓は上腹部にある臓器で、食べものの消化を助ける消化酵素を含む膵液をつくって十二指腸に送り出すとともに、インスリンというホルモンをつくっています。
- 急性膵炎:炎症が急に起こり、数日から数週間で治まります。軽いものから命にかかわるものまであります。
- 慢性膵炎:炎症が長く続き、膵臓に回復しない損傷と瘢痕(線維化)が生じます。進むにつれて、消化酵素をつくる細胞が少しずつ壊れていきます。
急性膵炎の主な原因
- 胆石:急性膵炎の40〜70%を占めます。胆石が膵液の出口をふさぐと、酵素が膵臓の中にたまり、膵臓自体を傷つけて炎症を起こします。
- 飲酒:25〜35%を占めます。飲酒量が多いほどリスクは高まりますが、よく飲む人でも急性膵炎になるのは10%未満で、ほかの要因も関係すると考えられています。
- その他:遺伝、一部の薬、血液中の中性脂肪やカルシウムの上昇、ウイルス感染、腹部のけが、喫煙、内視鏡検査(ERCP)後など。
胆石と飲酒をあわせると、全体の70%以上になります。
急性膵炎の症状
- ほぼ全員に上腹部の激しい痛みが起こり、約50%では痛みが背中まで突き抜けます。
- 胆石が原因の場合、痛みは突然始まり、数分で最も強くなります。飲酒が原因の場合は、数日かけて痛みが出てくるのが一般的です。
- せき、体を動かす、深呼吸で痛みが強まり、背筋を伸ばして座り前かがみになると少し楽になることがあります。
- ほとんどの人が吐き気や嘔吐を起こします。
- 重い場合は、汗をかく、脈が速い、呼吸が浅く速い、血圧が下がって立ちくらみがする、発熱するなどがみられ、白目が黄色くなることもあります。
急性膵炎の検査と治療
血液中の膵臓の酵素(アミラーゼやリパーゼ)の値を調べ、超音波検査やCT検査などの画像検査を行います。初めて急性膵炎になった人には、再発の原因になる胆石がないかを超音波検査で確認します。
- 軽症:短期間入院し、点滴、痛み止め、膵臓を休ませるための絶食を行います。吐き気や強い痛みがなければ、早めに脂肪の少ないやわらかい食事を始めます。
- 中等症:入院が長くなり、食べられない場合はチューブで栄養をとります。
- 重症:集中治療室で全身の状態を管理します。
- 胆石が原因の場合:80%以上は胆石が自然に出ていきますが、出ない場合は内視鏡で取り除きます。入院中に胆のうを摘出するのが一般的です。
急性膵炎の合併症
- 膵仮性嚢胞:膵臓の中や周りに消化酵素を含む液体がたまるもので、自然に消えることもあれば、感染することもあります。
- 壊死性膵炎:膵臓の一部が壊死し、血圧が大きく下がってショックや臓器不全を起こすことがあります。
- 膵臓の感染:症状がいったん落ち着いてから悪化したり、熱が出たりした場合に疑われます。
- 臓器不全:腎臓、肺、心臓などの働きが損なわれることがあります。
CT検査で膵臓が軽く腫れているだけなら見通しは非常によい一方、膵臓の広い範囲が壊れている場合は見通しが悪くなります。
慢性膵炎の原因と症状
慢性膵炎の2大原因は、大量の飲酒と喫煙です。ほかに、遺伝性の病気、自己免疫性膵炎、膵管の詰まりなどが原因になることがあり、原因がはっきりしない場合もあります。
- 腹痛:上腹部の痛みが続いたり、強まったり弱まったりします。食後に悪化しやすく、背筋を伸ばして座るか前かがみになると和らぐことがあります。
- 消化不良(膵機能不全):消化酵素が減ると、においの強い脂っぽい便が大量に出たり、栄養不良、ビタミン不足、体重減少が起こったりします。
- 糖尿病:インスリンをつくる細胞が壊れ、少しずつ糖尿病になることがあります。
- 膵臓がん:慢性膵炎の人では膵臓がんのリスクが高くなります。
慢性膵炎の治療
- 痛みのコントロール:治療の中で最も難しい部分で、薬で十分な効果が得られないこともあります。内視鏡で膵管の詰まりを解消したり、衝撃波で結石を砕いたり、手術を行ったりすることもあります。
- 膵酵素の補充:膵酵素の錠剤やカプセルを食事と一緒に飲むと、脂っぽい便が減り、栄養の吸収がよくなります。
- 糖尿病の管理:インスリンが必要になることが多いですが、低血糖を起こしやすいため注意が必要です。
膵炎の食事と生活のポイント
- 禁酒と禁煙:慢性膵炎の人は、たとえ原因が飲酒でなくても、飲酒と喫煙を控える必要があります。
- 脂肪の少ない食事を分けてとる:脂肪の少ない食事を1日4〜5回に分けてとると、膵酵素の分泌が減り、痛みが和らぐ可能性があります。
- 膵酵素は食事と一緒に:処方された膵酵素は、食事とともに飲む必要があります。
- ビタミンの補給:脂肪に溶けるビタミン(A、D、E、K)の補給が必要になることがあります。
- 急性膵炎の回復期:医師の指示に従い、脂肪の少ないやわらかい食事から始めます。
出典によって異なる点:禁酒で再発はどのくらい防げるか
MSDマニュアル家庭版は、飲酒量が多いほど急性膵炎のリスクが高まるとし、慢性膵炎の人には飲酒と喫煙を控えるよう求めています。ただし、禁酒によって再発がどのくらい減るかの数字は示していません。
フィンランドの研究(Nikkolaら、2013年)は、初めて飲酒による急性膵炎を起こした118人を追跡しました。その後、禁酒を続けた18人(全員男性)では、平均約5年の追跡期間中に急性膵炎の再発は1回もなく、膵臓の機能低下もまれでした。一方、飲酒を続けた100人では、34%が少なくとも1回再発しました。
禁酒できた人は少数で、規模の小さい研究ではありますが、最初の発作のあとに禁酒することが再発を防ぐうえで大きな意味をもつことがうかがえます。
膵炎のポイント
- 膵炎は膵臓の炎症で、急に起こる急性膵炎と、長く続く慢性膵炎があります。
- 急性膵炎の主な原因は胆石と飲酒で、上腹部の激しい痛みが特徴です。
- 急性膵炎は通常、入院して点滴、痛み止め、絶食などで治療します。
- 慢性膵炎の2大原因は大量の飲酒と喫煙で、消化不良や糖尿病につながります。
- 禁酒と禁煙、脂肪の少ない食事を分けてとることが大切です。
- 激しい腹痛が続くときは、すぐに受診するか119番(スペインでは112番)に連絡しましょう。
膵炎についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
膵炎の痛みはどこが痛みますか?
急性膵炎では上腹部に激しい痛みが起こり、約半数では背中まで突き抜けます。前かがみになると少し楽になることがあります。
膵炎の原因で多いものは何ですか?
急性膵炎では胆石(40〜70%)と飲酒(25〜35%)が主な原因です。慢性膵炎の2大原因は大量の飲酒と喫煙です。
急性膵炎は入院が必要ですか?
軽症でも中等症でも重症でも、急性膵炎では通常、入院が必要です。点滴、痛み止め、膵臓を休ませるための絶食などを行います。
膵炎のときはどんな食事がよいですか?
慢性膵炎では、脂肪の少ない食事を1日4〜5回に分けてとると痛みが和らぐ可能性があります。急性膵炎の回復期は、医師の指示で脂肪の少ないやわらかい食事から始めます。
膵炎になったらお酒はやめるべきですか?
はい。慢性膵炎では原因にかかわらず禁酒と禁煙が必要です。飲酒による急性膵炎のあと禁酒を続けた人では、再発がみられなかったという研究もあります。
慢性膵炎は糖尿病につながりますか?
はい。インスリンをつくる細胞が壊れると、少しずつ糖尿病になることがあります。
出典
- MSDマニュアル家庭版 · 急性膵炎
- MSDマニュアル家庭版 · 慢性膵炎
- Nikkola J, et al. Abstinence after first acute alcohol-associated pancreatitis protects against recurrent pancreatitis and minimizes the risk of pancreatic dysfunction. Alcohol Alcohol. 2013
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。
