咽頭炎とは?急性と慢性
咽頭は、鼻の奥から口の奥を通って食道の入り口までをつなぐ、いわゆる「のど」の部分です。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、咽頭に炎症が起こったものの総称を咽頭炎とし、急性咽頭炎と慢性咽頭炎に分けています。
- 急性咽頭炎:ウイルスや細菌などの感染による急な炎症で、発熱やのどの痛みを伴うことが多いものです。
- 慢性咽頭炎:のどの痛み、違和感、飲み込みにくさなどが長く続くものです。
のどの痛みは、ものを飲み込むときに強くなるのが特徴です。のどの奥に向かう神経は耳に通じる神経のすぐ近くを通っているため、耳に痛みを感じることもあります。扁桃(のどの奥のリンパ組織のかたまり)にも炎症が強い場合は扁桃炎と呼ばれ、扁桃とのどの両方の感染は扁桃咽頭炎とも呼ばれます。
急性咽頭炎の原因
- ウイルス:最も多い原因で、典型的にはかぜを起こすのと同じウイルスです。大半のかぜは、軽いのどの痛みから始まります。
- レンサ球菌:成人ののどの痛みの約10%(子どもではやや多い)は、レンサ球菌という細菌によるものです(レンサ球菌咽頭炎)。2歳未満の子どもにはあまりみられません。
- 伝染性単核球症:エプスタイン・バーウイルスによる感染で、主に子どもや若い成人に起こります。
- まれな細菌:淋菌、ジフテリア(予防接種率の低い国)などがあります。
のどの刺激感や軽い痛みは、感染以外にも、空気の乾燥、刺激物、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎による後鼻漏(鼻水がのどに流れること)、胃食道逆流症、大声を出すなどの声の使いすぎでも起こります。
原因による症状の違い
- ウイルス性:軽度から中等度ののどの痛みで、熱はほとんどないか、まったくありません。鼻水やせきを伴うことが多いのが特徴です。
- レンサ球菌咽頭炎:強いのどの痛みと発熱がよくみられ、せきは通常なく、鼻水もまれです。のどと扁桃が真っ赤になって白い膿で覆われ、首のリンパ節が腫れて押すと痛みます。
- 伝染性単核球症:中等度から重度ののどの痛み、高熱、続く強い疲れがありますが、かぜの症状は伴いません。首の両側で多くのリンパ節が腫れます。
ただし、ウイルスによるのどの痛みでも、レンサ球菌と同じように赤く腫れて白い斑点が見えることがあり、見た目だけでは区別できないこともあります。そのため、ただのかぜであることが明らかでなければ、レンサ球菌の検査を行うのが一般的です。
慢性咽頭炎:長引くのどの違和感
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会によると、慢性咽頭炎では、のどの痛み、違和感、飲み込みにくさなどが生じることがあります。原因はさまざまです。
- ウイルスや細菌などの感染
- 胃酸の逆流
- 自己免疫の病気
- 性感染症
長く続くのどの症状は、まれに悪性腫瘍のこともあります。また、神経痛、狭心症や心筋梗塞による関連痛、精神的なストレスでも似た症状になることがあります。のどの違和感や痛みが長引く場合は、耳鼻咽喉科で相談しましょう。
すぐに受診すべき危険なサイン
のどの痛みの重い原因として、頻度は低いものの、扁桃のまわりなどにできる膿のかたまり(膿瘍)、気管の入り口のふたにあたる喉頭蓋の感染(喉頭蓋炎)、腫瘍があります。これらは気道をふさぐことがあるため、とくに注意が必要です。
- 息を吸うときのヒューヒューという音
- 呼吸が苦しい様子(とくに子どもが、背筋を伸ばして前かがみに座り、頭を後ろに傾けてあごを前に突き出しているとき)
- よだれが垂れる(唾液が飲み込めない)
- 口の中に熱いものが入っているようなこもった声
- のどの奥に膨らみが見える
これらのサインがある場合は、すぐに医療機関を受診してください。喉頭蓋炎が疑われる子どもでは、のどを無理に見ようとすると気道が完全にふさがるおそれがあるため、家庭で口の中を器具などで押さえて見ようとしないでください。
咽頭炎で受診するタイミング
- すぐに受診:危険なサインがある場合
- 相談・受診:激しい痛み、発熱、強い疲れ、たんを伴うせきがある場合
- 自宅で様子を見てよいことが多い場合:典型的なかぜの症状で、不快感が軽度から中等度の場合は、市販薬で対処するよう助言されることがあります
急性咽頭炎で症状が強く、食事をとることもできない場合には、入院が必要になることもあります。とくに子どもで水分がとれない場合は、脱水に注意して早めに受診しましょう。
咽頭炎の診察と検査
医師は、鼻水やせきの有無、飲み込む・話す・呼吸することに支障がないか、のどの痛みの前に強い疲れがあったかなどを尋ねます。
- のどの診察:のどや扁桃の赤みや腫れ、白い斑点、膿瘍を疑わせる膨らみがないかを確認します。
- 首の診察:リンパ節の腫れや押したときの痛みを確認します。
- レンサ球菌の検査:のどを綿棒でこすって採取したサンプルで調べます。
- 血液検査:伝染性単核球症が疑われる場合に、ウイルスに対する抗体を調べます。
伝染性単核球症では、脾臓が腫れることがあるため、おなかを触って確認することもあります。

咽頭炎の治し方:薬とセルフケア
- 原因の治療:レンサ球菌咽頭炎などの細菌感染には抗菌薬が使われます。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、必要に応じて抗菌薬などを内服して治療するとしています。
- 痛みと熱を和らげる:食べたり飲んだりできるように、のどの痛みを和らげることが重要です。イブプロフェンやアセトアミノフェンが痛みと熱の軽減に役立ちます。
- うがい:温かい塩水でのうがいは、一時的に痛みを和らげるのに役立つことがあります。
- のど用トローチやスプレー:一時的な痛みの緩和に役立つことがありますが、決められた量を超えて使わないようにします。
- 食事の工夫:飲み込むと痛いときは、スープなどの液体や半固形の食べもので水分と栄養を補います。とくに子どもで役立ちます。
気道をふさぐほど腫れが強い場合には、炎症を抑えるステロイドの薬が使われることもあります。
出典によって異なる点:のどの痛みに抗菌薬は必要か
MSDマニュアル家庭版は、レンサ球菌咽頭炎などの細菌感染には抗菌薬が投与されるとし、のどの痛みの多くはウイルスによるものだと説明しています。
コクランのシステマティックレビュー(Spinksら、2021年)は、のどの痛みに対する抗菌薬と偽薬などを比べた29件の試験(のどの痛み15,337件)をまとめました。抗菌薬は3日目ののどの痛みと頭痛を減らし、3日目に1人ののどの痛みを防ぐには6人未満に使う計算でした。しかし、偽薬や治療なしの人でも82%が1週間までに症状が消えていて、1週間の時点では1人の痛みを防ぐのに18人に使う必要がありました。3日目の発熱は、抗菌薬で明らかには減りませんでした。
ただし、多くの試験は1950年代に行われたもので、当時は重い合併症が今よりずっと多かったとされています。症状を減らす効果は小さいことがあり、薬剤耐性のリスクとのバランスを考えて、細菌が原因の可能性が高い場合に使うかどうかを医師が判断する、というのがレビューの結論です。
咽頭炎のポイント
- 咽頭炎は、のど(咽頭)の炎症の総称で、急性咽頭炎と慢性咽頭炎があります。
- 急性咽頭炎の多くはかぜと同じウイルスによるもので、成人の約10%はレンサ球菌が原因です。
- 鼻水やせきを伴えばウイルス性、強い痛みと発熱があってせきがなければレンサ球菌の可能性が考えられ、検査で確かめます。
- 息苦しさ、よだれが飲み込めない、こもった声、のどの奥の膨らみは、すぐに受診が必要です。
- 痛み止め、温かい塩水でのうがい、のど用トローチ、飲み込みやすい食事で痛みを和らげます。
- 抗菌薬の効果は小さいこともあり、細菌が原因の可能性が高い場合に使われます。
咽頭炎についてよくある質問
回答は一般的な情報であり、診察や医師による個別の判断に代わるものではありません。
咽頭炎の原因は何ですか?
多くはかぜを起こすのと同じウイルスによるものです。成人ののどの痛みの約10%はレンサ球菌という細菌によるもので、伝染性単核球症などが原因のこともあります。乾燥、後鼻漏、胃酸の逆流、声の使いすぎでも、のどの刺激感や軽い痛みが起こります。
咽頭炎は何日くらいで治りますか?
研究では、治療を受けなかった人でも82%が1週間までに症状が消えていました。痛みが強い、熱が続く、食事や水分がとれないといった場合は受診してください。
咽頭炎と扁桃炎はどう違いますか?
咽頭炎はのど(咽頭)の炎症の総称で、扁桃にも炎症が強い場合は扁桃炎と呼ばれます。扁桃とのどの両方の感染は扁桃咽頭炎とも呼ばれ、原因や治療の考え方は共通する部分が多くあります。
咽頭炎に抗菌薬は必要ですか?
ウイルスによるのどの痛みには抗菌薬は効きません。レンサ球菌などの細菌が原因の場合に使われます。研究では、抗菌薬は3日目ののどの痛みを減らすものの、その効果は小さいこともあるとされています。
のどの痛みを和らげる方法は?
イブプロフェンやアセトアミノフェンなどの痛み止め、温かい塩水でのうがい、のど用トローチやスプレーが役立ちます。飲み込むと痛いときは、スープなどの液体や半固形の食べもので水分と栄養を補いましょう。
のどの違和感が長く続くのはなぜですか?
慢性咽頭炎では、感染のほか、胃酸の逆流、自己免疫の病気、性感染症などが原因になります。まれに悪性腫瘍のこともあり、ストレスや狭心症の関連痛でも似た症状が出るため、長引く場合は耳鼻咽喉科で相談してください。
出典
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 · 口腔・咽頭の病気(咽頭炎)
- MSDマニュアル家庭版 · のどの痛み
- Spinks A, Glasziou PP, Del Mar CB. Antibiotics for treatment of sore throat in children and adults. Cochrane Database Syst Rev. 2021
このガイドは一般的な情報であり、医師の判断に代わるものではありません。診断と治療は、診察と病歴によって決まります。緊急の場合は119番(スペインでは112番)に電話してください。

